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ハリウッドと映画業界の未来が見えてきた…大手映画スタジオはストリーミングに進出し、ネットフリックスは独自の人気シリーズを作る

『マンダロリアン』

『マンダロリアン』

Disney Plus

  • ハリウッドの映画会社は、自社の人気シリーズ作品をストリーミング配信による公開に移行している。
  • ネットフリックスも自社製作のシリーズ作品を見直しており、その取り組みを推進する新部門を最近になって立ち上げた。
  • この動きは映画館および映画産業に大きな影響を与えると、アナリストは指摘している。

メディア大手各社は、自社作品の配給についてのアプローチの見直しを図っている。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックは、レガシーメディアのストリーミング進出を加速させている。映画館が苦戦する中で、ディズニー(Disney)やワーナーメディア(Warner Media)などは、自社の知的財産を活用して独自にD2C(Direct to Consumer:消費者との直接取引)プラットフォームを構築しようとしているのだ。大作映画の配信がクロスプラットフォーム化することは、パンデミックが終わった後も、エンターテインメント業界全体に影響を与えるだろう。

Box Office Proのチーフアナリストであるショーン・ロビンス(Shawn Robbins)は、「世界規模の知的財産を作り上げ、それをクロスプラットフォームで展開していく傾向がみられる」と指摘する。

「これは、(劇場公開とストリーミング配信の)両方にとって、大きなアドバンテージになるだろう」

「現在はストリーミングが絶好調だが、景気が回復して(映画館)市場が完全に稼働し始めれば、情勢は再び変化するかもしれない」とロビンスは付け加えた。

しかし、映画館が今後も業界の成長の牽引力になると誰もが思っているわけではない。

Exhibitor Relationsのシニア・メディアアナリスト、ジェフ・ボック(Jeff Bock)は、「今後5年から10年のスパンでみると、映画館にとっては不利になるだろう」と述べる。

「映画館はこの先、第一の選択肢にはならない。映画会社はコンテンツを、3部作ではなく、(もっと長い)シリーズに引き延ばせないかを検討するようになる」

一方で、ディズニーのような豊富な資産をもたないネットフリックス(Netflix)も、シリーズ物へのアプローチを見直している。2020年には、シリーズ物の番組に特化したチームを立ち上げた。

ネットフリックスの共同CEOを務めるリード・ヘイスティングス(Reed Hastings)は2020年9月、ハリウッド・リポーター(Hollywood Reporter)誌のインタビューで、「多くの映画会社は、偉大なシリーズ作品を生み出すことができる」と語っている。

「その点に関しては、我々も『ストレンジャー・シングス 未知の世界』などの作品で大きく進歩しているが、『ハリー・ポッター』や『スター・ウォーズ』といったシリーズにはまだまだ遠く及ばない」

『ワンダヴィジョン』

『ワンダヴィジョン』

Disney Plus

一歩先を行くディズニーとワーナーメディア

こうした変化の最も顕著な例は、Disney+(ディズニープラス)が配信する『スター・ウォーズ』のスピンオフTVドラマ『マンダロリアン(The Mandalorian)』だ。同作は新型コロナウイルス感染症の流行拡大前の2019年11月から配信が始まり、その成功は、後に続くDisney+の人気コンテンツの先駆けとなった。

ディズニーは2020年12月に行われた投資家向けイベントで、『スター・ウォーズ』関連で10本、マーベル作品関連で10本のTV番組をDisney+に独占配信する計画を発表した。

マーベル映画の企画が多数動いている中で、『スター・ウォーズ』シリーズの長編映画は1本だけが発表された。この『Rogue Squadron(邦題未定)』は、『ワンダーウーマン』のパティ・ジェンキンス(Patty Jenkins)が監督を務め、2023年に公開される予定だ。

「ディズニーは、批評や興行成績の面で、期待を少しでも裏切る結果になった長編映画シリーズは、少し時間を置く必要があると認識している」と、Box Office Proのロビンスは述べている。

さらにディズニーは、書籍やポッドキャストをベースにしたコンテンツの獲得を目指す、クリエイティブ・アクイジション部門を新設した。自社のTVネットワークやストリーミング・プラットフォーム向けの新たな知的財産を発掘するためだ。

一方、ワーナーメディアのHBOマックス(HBO Max)では、複数のDC映画のスピンオフを計画している。さらに、バラエティ(Variety)ハリウッド・リポーターの両誌は1月、HBOマックスで『ハリー・ポッター』シリーズの新作が制作の初期段階にあると報じた(ただし、ワーナー・ブラザースとHBOマックスはこの報道を否定している)。

HBOマックスは、2020年12月時点で全世界に8700万人近くの加入者を有するDisney+に後れをとっているものの、アクティブユーザー数が同年12月末時点で1700万人超と、同月初めの1200万人から数字を伸ばしており、成長の兆しをみせている。注目度の高い大予算のオリジナル作品HBOマックスの追い風となっており、競争力をもたらす可能性がある。

自社のストリーミング配信チャンネルを構築しているレガシーメディアは、ディズニーとワーナーメディアだけではない。NBCユニバーサル(NBC Universal)は2020年7月に「Peacock(ピーコック)」を開始しており、またバイアコムCBS(Viacom CBS)は2021年3月に「Paramount+(パラマウントプラス)」をスタートさせる。

しかし、ストリーミングによるブランド構築では、やはりディズニーとワーナーメディアが先行しているとExhibitor Relationsのボックは述べている。

「ネットフリックスはコンテンツの重要性に気づき、映画会社を出し抜く方針に転換した。Disney+はそれを察知し、HBOマックスも同じ動きをみせた。今は他の映画会社がその後に続こうとしている」

『ウィッチャー』

『ウィッチャー』

Netflix

ネットフリックスは大型シリーズ作品の構築に注力している

ディズニーやワーナーメディアのような企業は、シリーズ物を作るのに自社の既存作品に手を伸ばすことができるが、ネットフリックスは一から取り組みを始めている

ネットフリックスは最近、独自のシリーズ作品を構築するため、2つの新チームを立ち上げた。同社インターナショナル・オリジナル担当バイスプレジデントのケリー・ルーゲンビール(Kelly Luegenbiehl)が率いるフランチャイズTV部門と、オリジナルシリーズ担当バイスプレジデントのピーター・フリードランダー(Peter Friedlander)が率いるイベント/スペクタクルTV部門だ。

ネットフリックスの戦略に詳しい人物によると、フランチャイズ部門は、『ウィッチャー』のようなスピンオフ作品を生む可能性のある作品に注力するという。一方のイベント部門では、『クイーンズ・ギャンビット』や、中国のSF小説『三体』のドラマ化である『Three-Body Problem(邦題未定)』など、より重厚な内容の作品を扱う。後者については、『ゲーム・オブ・スローンズ』の制作総指揮を務めたデヴィッド・ベニオフ(David Benioff)とD・B・ワイス(D.B. Weiss)が手がける予定だ。

ネットフリックスは、ビデオゲームにも目を向けている。『バイオハザード』『トゥームレイダー』『アサシン クリード』などの人気ゲームシリーズをベースにした番組を企画しているという。

調査会社アンペア・アナリシス(Ampere Analysis)によると、ビデオゲームは書籍、コミックに次いで、ネットフリックスが今後TV番組化する3番目に大きなカテゴリーとなっている。しかし、ネットフリックスは知的財産を発掘し続けているので、ビデオゲームの存在は今後さらに大きくなる可能性があるという。

アンペア・アナリシスのゲーム市場調査担当ディレクター、ピアース・ハーディング・ロールズ(Piers Harding-Rolls)は、「新しい知的財産を探す中で、ターゲットとなる視聴者層が膨大な時間を費やしているゲームに目を向けるのは賢明だ」と話す。

「そのブランド認知度を利用して新たな視聴者を獲得したり、既存の加入者を惹きつけたりすることで、ゲームはますます発展可能であるという認識が強まってきている」

一方、開拓の範囲を広げているストリーミング大手はネットフリックスだけではない。

アマゾン(Amazon)は、『ザ・ボーイズ』や『エクスパンス』といったSFの作品群を構築している。そして、まもなくリリース予定の『ロード・オブ・ザ・リング』のTVシリーズによって、ハリウッドの伝統的スタジオであるワーナー・ブラザースがすでに大画面で取り組んできた「世界」に足を踏み入れることになる。ハリウッド・リポーターによると、アマゾンは権利獲得のために2億5000万ドル(約264億円)を支払ったという。

ストリーミング配信されるコンテンツが増えると、視聴者が人気シリース作品を家庭で楽しむことができるようになるので、ハリウッドや映画市場に大きな影響を与える可能性がある。

Box Office Proのロビンスは、このことが映画館とストリーミング・サービスの両方にメリットをもたらすと考えているのに対し、Exhibitor Relationsのボックは、消費者が家にいながら視聴するという選択をするようになるため、映画館にとっては懸念材料だと見ている。いずれにせよ、パンデミックはこの流れを加速させている。

「ストリーミング・コンテンツへの需要は、これまでにないほど高まっている」とボックは述べた。

[原文:The cross-platform future of Hollywood franchises is starting to take shape, as movie studios jump into streaming and Netflix builds content based on comics, games, and more

(翻訳:高橋朋子/ガリレオ、編集:Toshihiko Inoue)

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