米オーロラ・イノベーション(Aurora Innovation)は、トヨタ自動車・デンソーとの戦略提携を発表した。オーロラは自動運転トラックの開発に強みを持つ。
Aurora Innovation
昨年12月にウーバーの自動運転開発部門アドバンスト・テクノロジーズ・グループ(ATG)を吸収合併したばかりのオーロラ・イノベーション(Aurora Innovation)は2月9日(現地時間)、トヨタ自動車およびデンソーとの「長期グローバル戦略的パートナーシップ」を結ぶことで合意したと発表した。
オーロラの発表によると、提携の目的は以下の通り。
- トヨタの大型ミニバン「シエナ(Sienna)」に、オーロラが開発する自動運転システム「オーロラドライバー(Aurora Driver)」を組み込み、試験走行を実施する。2021年末までに車体設計と組み立てを終えて試験を開始する計画。
- ウーバーを含む配車サービスネットワークにロボットタクシー版「シエナ」を投入するため、今後数年かけて量産やサービス開始、サポート体制の構築を進める。
- とくにデンソーとは主な自動運転コンポーネントの量産について、トヨタとは包括的なサービスソリューションの提供について、それぞれ協力する。
オーロラのクリス・アームソン最高経営責任者(CEO)は今回の提携発表にあたって、
「当社は高速道路の利用を想定して自動運転トラックの開発を進めてきた。配車サービス予約の大部分で時速50マイル(80キロ)以上での走行が必要とされている現状を考えると、我々のこの高速道路経由で安全に旅客を輸送するノウハウは決定的な役割を果たすだろう」
と自社の強みを語っている。
トヨタはなぜオーロラと提携したのか、その背景
今回の提携のポイントは、次のようにまとめられる。
トヨタとデンソーはこれまで、オーロラが吸収合併したウーバーATG(ウーバーからの自動運転部門の分社前含む)にそれぞれ9億ドル(約940億円)、2億6700万ドル(約280億円)を出資している。
2018年にトヨタ自動車が初めてウーバーに出資した際に公開された、自動運転技術コラボのイメージ。
トヨタ自動車
トヨタはまず、2018年8月に5億ドル(約520億円)を出資し、「トヨタ自動車とUber社、自動運転車に関する技術での協業を拡大」と題した発表のなかで、次のように説明した。
「トヨタのミニバン『シエナ』が、最初の自動運転モビリティサービス『Autono-MaaS(オートノマース)』専用車両となる。
この車両は、コネクテッドカーの基本的な情報基盤として機能する『モビリティサービス・プラットフォーム(MSPF)』に常時接続するとともに、ウーバーの自動運転キットとトヨタのガーディアン(高度安全運転支援)システムを搭載する。両社はこの車両を2021年にウーバーのライドシェアネットワークに導入する予定」
したがって、今回のトヨタ・デンソー・オーロラの合意は、契約主体こそ変化したものの、ここ数年の開発計画通りの進捗を示していると言っていい。
さらに、トヨタとデンソーは2019年4月、ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)と共同で合計10億ドルを(自動運転分社後の)ウーバーATGに出資すると発表(出資実行は同年7〜9月期)。
そこでは、上記の「2021年にウーバーのネットワークに導入予定」開発プロジェクトの進捗が順調であることが示された上で、ウーバー側から以下のような発表があった。
「自動運転ライドシェア車両の開発を継続するとともに、次世代自動運転キットの設計と開発を共同で行い、本格的な自動運転ライドシェアサービス車両の量産化とサービス実用化に目処をつけることを狙っている。またトヨタは、本共同開発の推進のため、出資に加えて、今後3年間で最大3億ドルの開発費負担を行う」
2022年までにトヨタが3億ドル(約310億円)を負担して共同プロジェクトが進むことも合意済みであり、やはりここでもウーバーATGと合併したオーロラとの協業は、従来合意の延長上にあることがわかる。
「オーロラ・イノベーション」とは何者か
オーロラ共同創業者の3人。左から、アームソンCEO、アンダーソンCPO、バグネルCTO。
Aurora Innovation/Business Insider Japan
なお、今回トヨタおよびデンソーと戦略的パートナーシップを結んだオーロラは、2017年に設立。共同創業者の3人はいずれも自動運転分野のエキスパート。
CEOのクリス・アームソンはグーグルの自動運転部門で最高技術責任者(CTO)を務めた人物。最高製品責任者(CPO)のスターリング・アンダーソンは、テスラの「オートパイロット」開発計画に関与。CTOのドリュー・バグネルはのちにオーロラが吸収合併するウーバーATGで技術開発部隊を率いた、まさに当事者だった。
自動運転に必要なソフトウェア、ハードウェア、ロボットタクシー搭載時に必要なデータサービスをパッケージにしたプラットフォーム「オーロラドライバー」(前出)を開発し、サンフランシスコ・ベイエリアとピッツバーグ、ダラスで試験運転を実施中。
現在までにアマゾンやセコイア・キャピタルから出資を受けている。
(文:川村力)