お花見シーズンの飲食店に「悪夢再来」か。緊急事態延長“後”に迫る「自粛疲れモード」の影

1月、緊急事態宣言中の新橋の様子。

1月、緊急事態宣言下の新橋の飲食店街の様子。

撮影:西山里緒

緊急事態宣言は3月7日までの延期が発表され、引き続き飲食店の時短営業も継続されることになった。「一律1日6万円の協力金」をめぐってはその公平性への議論が過熱した一方で、すでに飲食店の危機感は、春の歓送迎会シーズンという「次の打撃」にシフトしている。

追い出しコンパや謝恩会もなしで

「4月の緊急事態宣言と比較しても、数字はガタ落ちしました。給付金には助けられていますが、全く安心はできません。自粛明けの歓送迎会シーズンがどうなるか分かりませんから……

1月下旬、そう語ってくれたのは、観光名所・鎌倉の北部にあるJR大船駅ほど近くに位置する和食ダイニング「ひととき」1〜3号店を運営する、リングベスト社長の青木慎五さん(48)だ。

青木さんが戦々恐々としている理由は、緊急事態宣言が明ける予定の3月から4月にかけて、歓送迎会やお花見などのイベントシーズンが始まるからだ。

和食ダイニング「ひととき」

和食ダイニング「ひととき」店内の様子。ソーシャルディスタンスを取れるよう、席の配置を工夫している。

通常ならば多くの人が宴会を楽しむこの時期は、飲食店にとっては大切な書き入れどき。しかし、12月の忘年会シーズンを感染拡大が直撃した後とあって、青木さんの口調は重かった。

「(忘年会シーズンに)外食禁止令が出ていた企業が多かったんです。そうしたら企業勤めの方は来られませんよね。年末に予約が真っ白だなんて、12年やってきて初めてでした

「ひととき」の売上推移データを見てみると、2020年2月を100%として、もっとも落ち込んだ月は同年11月の約7割減だった。その後、12月にも客足は戻らなかった。

飲食店データ

和食ダイニング「ひととき」のコロナ禍での売上推移。繁忙期に緊急事態宣言が重なったことが痛手だったという。

提供:リングベスト

二度目の緊急事態宣言後に、飲食店の状況はどうなるのか —— 。

春先の歓送迎会での新規感染を防ごうと、政府や自治体はすでに対策を進めている。小池百合子・東京都知事は2月3日の定例会見で、卒業シーズンであることを踏まえ、学生に「追い出しコンパや謝恩会はなしで」と呼びかけた。

「春は春野菜に桜鯛など、季節の食材がいっぱいあるのに……。こちらには春の訪れはまだまだ先ですね」(青木さん)

「自粛疲れ」はまた起こるのか?

繁忙期と感染拡大期が重なり、肩を落とす飲食店経営者がいる一方で、2021年1月に発令された緊急事態宣言下での飲食店来店者数の推移を見てみると、やや異なる側面も見えてくる。

飲食店データ

出典:TableCheck

飲食店予約ポータルサイト「テーブルチェック」が発表する、飲食店1店舗当たりの平均来客人数のデータによると、2020年4月から5月にかけては前年比約93%減だったのに対して、2021年1月から2月にかけては、約7割減にとどまる結果となっている。

客足が下がりきっていない理由として、消費者側の「コロナ慣れ」と、飲食を提供する側の「自粛要請拒否」の両面があったのではないか、と同社広報担当は説明する。

同じく花見や歓送迎会シーズンを迎えていた昨年の3月、Business Insider Japanは、若者を中心に「自粛疲れ」が起きていたことを報じている。あれから1年が過ぎた今も、コロナ以前の日常生活を回復できるメドは立たず、再び自粛を忌避する雰囲気が生まれてきているようだ。

また、緊急事態宣言以降、政府の対応に一貫性がみられないことも、自粛疲れの再発に拍車をかけている面がありそうだ。

飲食店利用に対してポイントが付与される「Go To Eatキャンペーン」は、ぐるなび、トレタなど一部の予約サイトがポイント有効期限を延長したものの、食べログなど9事業者は3月31日までが有効期限となっている。

この後キャンペーンの後押しを受けて経済や日常生活は回復へと向かうのか、それとも政府の施策はこのまま放置され、結局は自助努力だけが頼りといった展開になるのか。消費者側も飲食店側も、二転三転する政府の判断を目の当たりにして、もはや期待することに疲れきったのではないか。

年末の売り上げの落ち込みを受けて青木さんは「完全個室の天井に、知り合いの植木屋さんから桜を借りて飾りました。限られた春のイベントに対応できるように体制を整えていくつもりです」と控えめに語った。

生き残り戦略は「専門店化」

和食ダイニング「ひととき」も位置する大船仲通商店街。 「湘南のアメ横」との異名を持つにぎわい。

和食ダイニング「ひととき」も位置する大船仲通商店街。 「湘南のアメ横」との異名を持つにぎわい。

撮影:西山里緒

長引くコロナ禍に悲鳴を上げる飲食店。生き残りのため、次なる一手も打っておかなければならない、と青木さんはいう。

クラウドファンディング、デリバリー、テイクアウト……。一通りの施策は試したが、中でも手応えを感じたのは、居酒屋の人気メニューだった卵焼きをテイクアウト用メニューとして切り出し、商店街で販売したことだった。

今後は新規事業として「卵焼き専門店」を新たに打ち出していくことも考慮に入れ、「なんでもやっていかなければ」と青木さんは前を向く。

なお、「専門店化」する飲食店の中でも特に伸びているのは「からあげ」分野。富士経済が発表している「外食産業国内市場調査」によると、唐揚げ専門店(=唐揚げがメニューの7割を占める店)の市場規模は2019年の853億円から、2020年には1035億円へと拡大している。

居酒屋大手ワタミ(から揚げの天才)や外食大手すかいらーく(から好し)なども参入し、専門店が乱立している状況だ。

テイクアウト需要の追い風を受け、飲食店の「専門化」が今後は加速していくのかもしれない。

(文・写真、西山里緒)

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