2019年3月末、米NASDAQに上場を果たしたリフト(Lyft)。コロナ禍で配車サービスの苦境が続くなか、ライバルのウーバー(Uber)同様、デリバリーサービスに進出する模様だ。
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- リフト(Lyft)はアメリカで法人向けオンデマンド配送の試験導入を行っている。
- 配送サービスの追加は同社の長期成長戦略の一環だ。
- リフトによれば、レストランなどの事業者は顧客との関係を維持しながら配送部分を委託できるパートナーを探しているという。
統合合併でプレーヤーが集約されてまばらになってきたデリバリー市場。ドアダッシュ(DoorDash)、グラブハブ(Grubhub)、ウーバーイーツ(Uber Eats)のような有力企業が厳しい競争をくり広げるこの分野に新たなプレーヤーが参入しようとしている。
配車サービス大手リフトは2月9日、四半期決算発表の投資家向けカンファレンスコールで、長期成長戦略の一環と位置づける「法人向け(BtoB)」デリバリーサービスの展開状況をアップデートした。
「新型コロナウイルスの感染拡大によって、世界中でeコマースとローカルデリバリーの拡大に拍車がかかっている」(ジョン・ジマー共同創業者兼社長)
同社は詳細を明らかにせず、投資家向けのパイロットプログラム(試験導入)が順調に進んでいることだけを明らかにした。
ジマー社長によれば、この試験導入は「法人向けのビジネスチャンス」を模索する取り組みで、「既存のテクノロジーとドライバーコミュニティを最も良い形、すなわち即日配達サービスに活用」するのが狙いという。
リフトの本業である配車サービスはコロナ禍でまだ回復の兆しが見えない。同社はドライバーという人的資源の活かしどころを検討している。
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Insiderはカンファレンスコールの終了後、どんなプロダクトの配送を考えているのか、リフトの広報担当に質問したが、発表以上のコメントには応じられないとの返答があった。
リフトのデリバリー市場への参入は、一義的にはデジタル技術を活用して顧客をつなぎとめたいと考える事業者の配送需要に応えるためのもの、とジマー社長はカンファレンスコールで語った。配達代行サービスを利用するレストランなどの事業者からは、消費者データが手もとに入ってこないとの不満がよく聞かれるという。
「そうした事業者からよく聞くのは、オーガニックトラフィックやカスタマーロイヤリティにフォーカスしたいという意見だ。また、D2C(=消費者との直接取引)の関係を構築して、他社と競合しない広範な物流能力を獲得したいとの意見も聞く」(ジマー共同創業者兼社長)
デリバリー業界の再編、ドアダッシュとの競合
2020年12月、ドアダッシュ(DoorDash)は新規株式公開(IPO)にこぎ着けた。リフト(Lyft)がラストワンマイルのデリバリーに進出すれば、直接的な競合関係となる。
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レストラン業界ではいま、デリバリー需要が急拡大している。
米市場調査会社NPDグループによれば、デリバリーの発注数は過去2年間と比較して3倍増にふくれ上がった。米金融サービス大手コーウェン(Cowen)は、デリバリーサービスの売上高が2023年に630億ドル(約6兆6000億円)規模に達すると予測する。
こうした急成長の背景には、デリバリー市場で企業統合が進み、ドアダッシュやウーバーイーツのような大手がオンデマンドサービスを拡大したことがある。
オランダに本拠を置くジャスト・イート・テイクアウェイ(Just Eat Takeaway.com)はグラブハブの買収を発表、2021年下半期に合併予定。ウーバーは2020年にポストメイト(Postmates)を買収し、さらにアルコール飲料宅配のドリズリー(Drizly)を株式交換および現金11億ドル(約1150億円)で買収する計画を発表している。
また、ドアダッシュは2年以上にわたって配達エリアの拡大を続けてきた。もしリフトがラストワンマイルのローカルデリバリーに進出すれば、同社と直接的に競合することになる。
ドアダッシュは食品分野のデリバリーサービスでトップシェアを誇り、コンビニエンスや同社アプリおよびウェブサイト経由の食料品注文などに対応範囲を拡大してきた。ウォルマートやチポトレ・メキシカン・グリルのようなチェーン店には、ラストワンマイルの配送サービスを提供している。
「ドアダッシュドライブ」と呼ばれるホワイトラベル(=提供先の企業名で展開する)サービスでは、レストランや小売事業者が自社ブランドを維持したまま、購入者へのデリバリーを実現できる。梱包や発送、配達の実務を担うのはもちろんドアダッシュだ。
この「ドライブ」サービスでは、事業者側が消費者データを保有できるようになっている。前述の事業者側が抱える不満へのソリューションと言えるだろう。
新規参入を目指すリフトも、小売事業者を含むパートナーシップの詳細を今年下半期にも発表するとみられる。
「小売事業者には自前のシステムを組んだり、デリバリー事業者のようなパートナーシップを締結したりする余力がない。だから第三者が提供するマーケットプレイスを利用せざるを得ない。しかし、一度立ち止まってテクノロジープラットフォームへの投資を決めれば、一緒にすべてを実現できる。そんな日が来ると思うとワクワクする」(リフトのジマー共同創業者兼社長)
なお、2月9日にリフトが発表した2020年第4四半期(10〜12月)決算は、配車サービス利用者数が前年同期比51%減、売上高も44%減と苦しい内容だった。
[原文:How Lyft plans to compete with DoorDash and Grubhub with its growing food delivery program]
(翻訳・編集:川村力)