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失われた名店の味を残したい。飲食のカリスマが仕掛けるレシピ復活プロジェクト

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コロナの影響もあり飲食店の閉店が相次いでいる。神田の「キッチンビーバー」も2020年10月に閉店した。

提供:まぼろし商店

新型コロナウイルスの影響で、飲食店が次々と閉店を迫られるなか、閉店した名店の味を復活させるプロジェクトが始動した。

プロジェクト名は「まぼろし商店」。閉店した(または閉店が決まっている)お店から、メニューを伝授してもらい、名店の味を再現する。

再現したメニューは、ECでの通信販売やデリバリーで販売するほか、失われた名店のメニューを集めた飲食店も構想している。売り上げの一部は、メニューを伝授した店に支払い、閉店後も店主の収入になる仕組みだ。

仕掛け人は、飲食店運営のミナデイン社長、大久保伸隆氏。30歳で居酒屋「塚田農場」などを展開するエー・ピーカンパニーの副社長を務めた、飲食業のカリスマだ。2018年に同社を退職し、飲食業を営んでいる。

「地元に愛されつつも、失われてしまった名店の味を保存し再現したい。もう食べられない『まぼろしの味』というブランド力を生かして、店舗での提供も含め、事業を拡大していきたい

大久保氏が描く、コロナ禍での飲食店支援の新しい形とは?

60年愛された神田のメンチカツ

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神田の洋食店「キッチンビーバー」のメンチカツ。

提供:まぼろし商店

大久保氏が「まぼろし商店」事業を始めるきっかけとなったのは、2020年10月に神田の洋食店「キッチンビーバー」が閉店したことがある。

キッチンビーバーは昭和35年(1960年)に創業。名物のメンチカツが有名で、親子2代にわたり営業を続けた老舗の洋食店だ。

神田のサラリーマンに親しまれた店だったが、2020年6月に店主が体調を崩して入院。店主とともに店を切り盛りしていた妻が、一人で店を開け続けていたが、力仕事で腰を痛めてしまい、同年10月、60年の歴史に幕を下ろすことを決めたという。

「店の常連だった友人から『キッチンビーバーの味を、もう楽しめなくなるのは本当につらい』と聞き、何とかその味を保存できないかと考えたのが『まぼろし商店』の始まりでした」(大久保氏)

コロナをきっかけに店をたたむ名店

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「まぼろし商店」を手がける大久保氏。撮影は2020年6月のインタビュー時のもの。

撮影:今村拓馬

巨大チェーン「塚田農場」の成長に奔走してきた大久保氏だったが、地元で愛される個人経営の名店が消えてしまう事態に、危機感を強めている。

大久保氏は2020年7月、自身が経営する新橋の飲食店で、後継者不足などで将来的に途絶えてしまう可能性のある名店のメニューを提供する「烏森 絶メシ食堂」の運営を開始。

「絶メシ食堂」では売り上げの一部を、もともとメニューを提供している飲食店に還元していた。

「絶メシ食堂」は営業中の飲食店の支援が目的だったが、今回の「まぼろし商店」は、すでに閉店した店のメニューを復活させて販売する。

「地元に愛されてきた店の中には、店主が高齢化し、店をたたむタイミングを考えている店がもともと多い。それが、今回のコロナをきっかけに辞めてしまう店がさらに、増えていくのではないかと危惧しています。いま助けないと、本当に豊かな街の食文化が失われてしまう」

消えてしまった名店の情報求む

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閉店してしまった店の情報をHPで募集している。

まぼろし商店のHPを編集部キャプチャ

「まぼろし商店」では、閉店してしまった、あるいは閉店が決まっている全国の名店について、情報の提供を呼び掛けている。

大久保氏は「この事業で一番大変なのは、いいお店の閉店情報を集めること。そして次に、その店の店主を紹介してもらうこと」と説明する。

「閉店情報は簡単に見つけられますが、いきなりお店を訪ねて行ったところで、けんもほろろの対応をされることは目に見えています。

そこで、店主を知っているファンたちにお店を紹介してもらいたい。大好きだった店を紹介し合い、みんなでその味を復活させる場にしたいと思っています

情報を受け付けるHPは2月15日に開設した。

「まぼろし商店」の第1弾は、前出の洋食店・キッチンビーバーのメンチカツ。5月中にもサイト内で販売を始める予定で、メンチカツ復活に向けたクラウドファンディングも開始している。

閉店した店をそのまま受け継ぐ仕組みも

「まぼろし商店」のプロジェクトは、通販だけにとどまらない。

全国のレシピを保存することで、将来的には地域ごとに、失われた料理を提供する実店舗の運営も目指す。

「例えばの話ですが、長崎で閉店した店のメニューを一か所で楽しめる『長崎まぼろし商店』。そんなお店を全国に作れたら……と思っています」

また、後継者がいない飲食店について、レシピの保存だけでなく、お店ごと継承する人材や企業を見つける事業継承や、「まぼろし商店」のブランドでデリバリー事業の展開も計画している。

『もう食べられない料理』というのは、相当なブランド力を持っている。これからの飲食では長く愛されてきた歴史こそが価値をもつ。その歴史を有効活用することで、閉店してしまったお店にも、そのお店のファンにも、また地元の食の彩りを守る意味でも役立てると思っています」

(文・横山耕太郎

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