ストーンヘンジのサークル内部からの眺め。
James Davies/English Heritage
- イギリスのストーンヘンジの近くで4500年前の墓が発見された。
- 遺跡の地下に高速道路のトンネルを通す前に、考古学的な調査を始めたところだった。
- 1つの墓には若い女性、もう1つには赤ちゃんの遺骨が納められていた。
イギリスの考古学者がストーンヘンジの近くで2つの古代の墓を発見した。
墓は、遺跡のすぐ南の長さ3kmのエリアを調査しているときに見つかった。それはストーンヘンジの下に高速道路のトンネルを通すための事前調査だった。イギリス政府は2020年、このトンネルの建設を承認したが、その前に考古学的な調査をすることを求めていた。
調査隊は、ストーンヘンジの南西約1.6kmの場所で、若い女性の墓と赤ん坊の骨が納められた別の墓を発見した。どちらも約4500年前のもので、ストーンヘンジの内側のサークルを構成するブルーストーンの年代とほぼ一致する。
この地域の調査に協力している調査会社ウェセックス・アルケオロジー(Wessex Archaeology)の考古学者、マット・リーバーズ(Matt Leivers)によると、女性と赤ん坊はこの遺跡を建てた人々に関係する可能性が高いという。
「これらの人々が生きていた頃にブルーストーンの列が作られたのだろう。彼らが建築したのでなければ、その親戚、おそらく彼らの子どもか孫だったのではないか」と彼はInsiderに語った。
ストーンヘンジの周辺からは墓、陶器、動物の骨が見つかっている
約4500年前に亡くなった20代の女性の墓が見つかった。
Courtesy of Matthew Leivers/Wessex Archaeology
赤ちゃんの墓には小さな耳骨が残されていた。若い女性の骨格は彼女が20代か30代で亡くなったことを示唆している。レイバースによると、二人とも、約4000年から5000年前にヨーロッパに存在したビーカー文化に属していたという。
ビーカー人の名前は、彼らがいつも一緒に埋葬されていた陶器に由来しているとレイバースは言う。その赤ん坊は無地のビーカーの近くに埋葬され、女性は装飾が施されたビーカーとともに埋葬されていた。
女性の墓には、下の写真のようなシェール(shale:頁岩)でできたオブジェもあった。
「埋葬の前に故意に割ったカップかもしれないし、杖や棍棒にかぶせたものだったのかもしれない」とレイバースはプレスリリースで述べている。
約4500年前の墓から見つかったシェールのオブジェ。
Courtesy of Matthew Leivers/Wessex Archaeology
ストーンヘンジの周囲の土地では、2つの墓の他に、火葬された遺骨で満たされた2つの壷、土器の破片や動物の骨、火打石も発見された。
また、遺跡の南東では、約2500年前の鉄器時代の砦の一部であった可能性のある溝と、3500年前の青銅器時代後期の古い溝が発見された。
18カ月におよぶ調査が始まろうとしている
ストーンヘンジは、イングランドのソールズベリー平原にある。遺跡の近くには建物は何もないが、ロンドンからイングランド南西部への主要道路の一つであるA303がすぐそばを通っている。新しいトンネルは、その道路交通の騒音や排気ガスの臭いなどをなくすために作られる。
このプロジェクトの費用は17億ポンド(約2500億円)で、2023年に建設が開始される予定だが、まずは、ウェセックス・アルケオロジーの考古学者が、建設予定地の埋蔵物を調査している。
約3500年前の青銅器時代の壺が見つかった。
Courtesy of Matthew Leivers/Wessex Archaeology
この地域の本格的な調査はまだ始まっていない。2020年の春から100人から150人の考古学者が参加して、18カ月間続く予定だ。ビーカー人の墓はその最初の発見だ。
「遺跡によって道路建設が止まる可能性はほとんどない」とレイバースは言う。「遺跡をできるだけ避ける」道路とトンネルのルートを見つけることが目標だと彼は付け加えた。
「遺跡が影響を受けるのは、トンネルの出入口とそこへ通じる道路、新しい交差点ができる場所だけだ」と彼は説明した。ほとんどの遺物や墓は地表近くで見つかるが、トンネルはずっと深いところを掘るからだ。
ストーンヘンジはワシントンD.C.に宗教を加えたような場所
ストーンヘンジ。
Andre Pattenden/English Heritage
ストーンヘンジは5000年前と4500年前の2度の突貫工事で建設されたと見られる。考古学者たちは、その石のいくつかはウェールズから来たもので、他は近くの森林地帯から来たものだと判断した。しかし、ストーンヘンジが作られたの目的はいまだ謎のままだ。
オックスフォード大学の考古学者デビッド・ナッシュ(David Nash)は以前、ここは埋葬や火葬の場所、あるいは古代のヒーリングの場所だったのではないかとInsiderに語っている。一方、レイバースは、ストーンヘンジはイングランド南部の祭典の中心地で、精神的にも政治的にも力を持つ場所だったと考えている。
「ワシントンD.C.に宗教的な要素を加えた場所だと考えてほしい」と、彼は言った。
「ビーカー文化時代の何世紀にもわたって重要な場所であり、人々がそこを訪れたいと思っていただろう」
(翻訳、編集:Toshihiko Inoue)