退職に備えた貯金、大卒者は40歳以降に始めればいい…アメリカの場合

仕事中の女性

退職に備えて早くから貯蓄することが必ずしも最善とは限らないと、新たな研究が明らかにしている。

FG Trade/Getty Images

  • 若年層は40代になるまで退職に向けての貯蓄を始める必要はない、と全米経済研究所(NBER)の新たな論文が明らかにしている
  • それは、もしあなたが大学を卒業していて、大幅な収入アップが期待でき、お金以外のことを大事にしているのであれば、ということだ。
  • 論文は、貯蓄ではなく「人生のトータルの満足度」に着目している。

若年層が早期退職に向け早くから貯蓄することは、大きな間違いかもしれない。

今はお金が足りなくても、今後大幅な収入アップが見込める人は、退職に向けてキャリアの早い段階から貯蓄する必要はない、と全米経済研究所(NBER:National Bureau of Economic Research)の新たな研究成果報告書(まだ査読を受けていないもの)は述べている。論文は、アメリカで雇用主が提供する確定拠出年金制度「401(k)」の口座開設を、ライフサイクルのどのステージで行っても効果は同じかどうかなどを調査した。

この論文の結論は、複利の力を利用するためにできるだけ早くから貯蓄を始めるべきだという、従来の金融の常識とは正反対を示している。

これまでの常識は間違っているのだろうか。

論文は、お金が必ずしも満足感と等しいとは限らない、という考え方に重点を置いている。代わりに「物質的な消費から人生のトータルの満足度」を見ている、とスタンフォード大学の教授で論文の著者の1人であるジョン・ショーブン(John Shoven)はフォーチュン(Fortune)誌で述べている

ショーブンの説明によると、貯蓄しても将来期待したほどの満足感が得られないかもしれない、なぜなら人はせっかちで、退職時に健康ではないかもしれないし、それどころか生きていないかもしれないからだ。

大卒者は退職に向けた貯蓄を先送りすることができる

著者らは1995年生まれのミレニアル世代の人物が、25歳で就職して、67歳で退職すると仮定してライフスタイル・モデルを作った。連邦および州税が27%、インフレ率2%、標準的な社会保障給付も想定し、雇用主が50%を負担して、従業員は賃金の最大6%を拠出する401(K)の効果を調べた。

高卒労働者の場合、賃金成長が横ばいになる傾向が強く、インフレ調整後にわずかに上がる。金利が高ければ、仕事を始めた25歳で貯蓄を始め、金利が低ければ、30代になるまで貯蓄をしないほうがいい。

だが、大卒労働者の場合、25歳時の収入は通常、ピークとなる45歳ないし50歳の42%程度で、「収入が低いときに、退職に向けた貯蓄をするのは最適とは言えない」と論文には記されている。

では、大卒労働者はいつ、貯蓄を始めるべきなのか。金利が低いのであれば、40代になるまで始めないほうがよく、雇用者負担がある401(k)に加入できれば41歳から、そうでなければ44歳からがいいという。

退職に向けて過剰に貯蓄するのはデメリットがある

利率の低さが退職に向けた貯蓄を遅らせる理由にならないとしても、人生の満足度を最大にするためなら理由になる。

労働者は、現在の支出を、先々の保証のためにやめようとは思わない。だから、雇用者の負担が貯蓄を補うのに役立つ。

退職に向けて過剰に貯蓄することには、リスクもある。それは、短期目標を犠牲にすることになるかもしれないからだ、とファイナンシャル・アドバイザーで、ニューヨークを拠点とするスタッシュ・ウェルス(Stash Wealth)の創業者、プリヤ・マラニ(Priya Malani)は以前、Insiderに語った

マラニによると、退職に向け過剰に貯蓄することは、ミレニアル世代で数十万ドル稼いでいる彼女のクライアントが犯す大きな過ちの1つだという。よくあるのが、最終的な目標も考えずに貯め込むことや、「強気過ぎる」貯蓄をすること、例えば20代から貯蓄を始めたり、401(k)の天引き額を最大にすることなどだと彼女は付け加えた。

「稼ぎが多い時に過剰に貯蓄をするのはとても簡単だ」と彼女は言う。

「過剰貯蓄の隠れた問題は、用途不明の(具体的な目標がない)貯蓄の場合、今から退職までの間に達成したいと思っている目標を貯蓄のために妥協する可能性が高くらなることだ」

人生は短く、予測は不可能

だが、すべてのミレニアルが退職に向けた貯蓄を先延ばしにすべきということではない。

この世代は富を築くことでは後れを取っている。桁外れな学生ローン生活費の上昇、賃金の停滞に繋がった2度の不景気を特徴とした、アフォーダビリティ危機の結果だ。401(k)に入っていないミレニアル世代の55%が、その理由は稼ぎが少ないからだ、と2019年のInsiderとモーニング・コンサルト(Morning Consult)の調査で述べた。また、ミレニアル世代の9%は、「生涯現役」でありたいと述べた。

NBERの論文の著者らは、将来の賃金の不確実性、例えば失業や出産などについては考慮していないが、どちらも若いうちからの貯蓄を正当化する理由になりそうだ。早期にキャッシュアウトする(ペナルティーあり)オプションを与えられる労働者には、早くから貯蓄をすることによるメリットもある、と指摘。また、若いうちに貯蓄する習慣ができると、中年期での貯蓄がやりやすくなるとしている。

著者らがモデルに織り込んだ社会保障が、2031年までになくなるといううわさもある。

結局のところ、退職の計画は状況次第で、お金の専門家と相談して立案するのが最善だ、とマラニは述べた。退職に向けた貯蓄は大切だが、すべては短期的にも長期的にも今思い描くライフスタイルのバランスを取ることだという。

論文によると、大卒の労働者は401(k)の口座を開設するのをキャリアの後半まで待つことで、そのバランスがベストになるという。

[原文:Saving for retirement before age 40 could make you miserable

(翻訳:Ito Yasuko、編集:Toshihiko Inoue)

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