6600万年前に恐竜を絶滅させたのは、小惑星ではなく彗星だったかもしれない

6600万年前に「チクシュルーブ」が現在のメキシコに衝突したときの想像図。

6600万年前に「チクシュルーブ」が現在のメキシコに衝突したときの想像図。

Chase Stone

  • 宇宙から飛来した天体が、6600万年前に現在のメキシコに衝突し、恐竜を絶滅に追い込んだ
  • その天体の起源は謎のままだったが、ハーバード大学の宇宙物理学者が新たな説を発表した。
  • 恐竜を絶滅させたのはこれまで考えられていたような小惑星ではなく、太陽に近づきすぎた彗星の破片だった可能性があるというのだ。

約6600万年前、直径約10キロメートルの天体が地球に衝突した。現在のメキシコにあたる場所だ。

その衝撃は大規模な山火事や巨大な津波を引き起こし、何十億トンもの硫黄を大気中に放出した。そのガス状の霞が太陽光を遮って地球を冷却し、恐竜をはじめとした地球上の全生物の75%を絶滅させた。

しかし、チクシュルーブと名付けられたこの天体の起源は謎のままだった。

多くの説では、巨大な小惑星であるとされてきた。このような小惑星は、火星と木星の軌道の間でリング状に集中して存在している。しかし、2月15日に発表された論文では、ハーバード大学の宇宙物理学者らが、チクシュルーブは小惑星ではなく、木星の重力の影響を受けて太陽のかなり近くまで接近して崩壊した彗星の破片だった可能性があるという説を唱えた。

NASAによると、小惑星と彗星はいずれも「スペース・ロック」に分類されるが、重要な点で違いがある。彗星は太陽系外の氷や塵で形成され、一般的に小さくて動きが速いのに対し、岩石のような小惑星はより大きく、動きが遅く、太陽に近いところで形成される。

「太陽に接近したことで崩壊した物体により、恐竜を絶滅させるほどの衝撃をもたらすイベントが発生する確率が高まると考えている」とハーバード大学の宇宙物理学者であり、論文の共著者であるアヴィ・ローブ(Avi Loeb)は、プレスリリースで述べた。

太陽系が「ピンボールマシン」のように彗星を動かした

地球に接近する小惑星の想像図。

地球に接近する小惑星の想像図。

Vadim Sadovski/Shutterstock

ほとんどの小惑星は、火星と木星の軌道の間にある小惑星帯から飛来する。しかし、地球近くを通過する宇宙からの物体の監視を続けているNASAの科学者たちは、チクシュルーブがどこから来たのか、まだ解明していない。

サイエンティフィック・リポーツ誌に掲載された論文で、著者のローブとアミール・シラジ(Amir Siraj)は、チクシュルーブの起源は小惑星帯ではなく、太陽系の外側の「オールトの雲」と呼ばれる領域である可能性が高いと述べている。

オールトの雲とは、1兆個の氷の破片が球殻状に集まった状態だと考えるといいだろう。それが、太陽系の最外縁で、太陽系を取り囲むように広がっている。太陽からオールトの雲までの距離は、太陽から地球までの距離の少なくとも2000倍となっている。オールトの雲を起源とする彗星は、太陽の周りを一周するのに非常に長い時間がかかるため、長周期彗星と呼ばれる。

しかしこれらの彗星は、木星のような巨大な惑星の重力によって、軌道から外れることがある。このように引っ張られることで、彗星は太陽にきわめて近い軌道を突進する可能性がある。

「太陽系はピンボールマシンのような働きをする」とシラジはプレスリリースで述べた。

太陽に近づく彗星は「サングレーザー」と呼ばれている。今回の論文によると、オールトの雲を起源とする彗星の約20%がサングレーザーになると算出された。太陽に近づいた彗星は、太陽の重力によって崩壊し、その破片が近くの惑星に向かって飛んでいく可能性がある。

これは、恐竜を絶滅させた「チクシュルーブ衝突体の起源を示す十分な説明となった」と両著者は述べた。

小惑星なのか彗星なのか、まだ決着はついていない

現在のメキシコ南東部ユカタン半島近く、熱帯の浅い海に衝突するチクシュルーブの想像図。この衝突により、恐竜をはじめ多数の生物が絶滅したと考えられている。

現在のメキシコ南東部ユカタン半島近く、熱帯の浅い海に衝突するチクシュルーブの想像図。この衝突により、恐竜をはじめ多数の生物が絶滅したと考えられている。

Donald Davis/NASA

恐竜を滅ぼしたのは小惑星ではなく彗星だと考える科学者は、シラジとローブだけではない。2013年にダートマス大学の研究者グループも、高速で移動する彗星がチクシュルーブのクレーターを作った可能性を示唆した。

チクシュルーブは毎秒19km(時速6万9500km)の速度で地球に衝突した。これは超音速ジェット機の約30倍の速さだ。その結果、メキシコ湾に幅160km、深さ20kmのクレーターができた。衝突の威力は、第二次世界大戦で使用された原子爆弾100億個分に相当すると試算した科学者もいる。

しかし、すべての研究者が彗星によってこのような破壊が引き起こされたと確信しているわけではない。

アリゾナ州の惑星科学研究機関のシニア・サイエンティスト、ナタリア・アルテミエワ(Natalia Artemieva)は、サングレーザーから生じた彗星の破片では、チクシュルーブのクレーターを作るには小さすぎるだろうと、ニューヨーク・タイムズに語った。また、コロラド州サウスウエスト研究所の惑星科学者ビル・ボトケ(Bill Bottke)は、この研究はサングレイザーの頻度を過大に見積もっており、その結果、発生する彗星の破片の量も過大に算出されていると指摘する。

これまでのエビデンスによれば、チクシュルーブが小惑星であったという説が有力ではあるが「決定的なものではない」とボトケはニューヨーク・タイムズに語った。「もしどうしても彗星であると言いたいのであれば、まだ検討の余地はある。ただ、それを証明するのはとても難しいだろう」

しかし、シラジとローブは、チクシュルーブのほか、南アフリカやカザフスタンなどのクレーターの奥深くで発見された物質によって、この説は裏付けられると言う。その物質とは炭素質コンドライトであり、これは彗星が由来となっている可能性がある。小惑星帯から飛来した小惑星のわずか10%が炭素質コンドライトで構成されているのに対し、この物質は「彗星に広く分布している可能性がある」と、両著者は論文で述べている。

宇宙空間を漂う彗星から採取された唯一のサンプルは、2006年にヴィルト第2彗星から採取されたもので、これは炭素質コンドライトで構成されていることが明らかになった。

太陽系の端の惑星、海王星のさらに外側に広がる若い彗星の凍った核の想像図。

太陽系の端の惑星、海王星のさらに外側に広がる若い彗星の凍った核の想像図。

ESO/M. Kornmesser

チクシュルーブの起源を明らかにすることは、将来同じような衝突イベントが起こる可能性を把握する際に役立つだろう。ある研究によると、過去5億年の間にオールトの雲から飛来した彗星で地球に衝突したのは、わずか2~3個だけだという。一方、惑星協会によると、チクシュルーブサイズの小惑星が地球に衝突するのは1億年に1回程度だという。

シラジとローブは、どれだけの長周期彗星が、地球の方向に大きな破片を飛ばせるほど太陽に近づけるのか、シミュレーションを行った。その結果、チクシュルーブサイズの物体が地球に衝突したのは、これまで考えられていたよりも10倍以上多い可能性があることが示された。


[原文:The space rock that doomed the dinosaurs was shrapnel from a comet that flew too close to the sun, a Harvard study suggests

(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)

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