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楽天モバイルが「電波密度」に舵を切る理由…“データ消費が他社の2倍”がなぜ厳しいのか

三木谷氏

撮影:伊藤有

楽天モバイルがネットワークの敷設に対して本気になり始めたようだ。

携帯電話の事業参入当初は「6000億円で、2026年に全国の人口カバー率96%を目指す」としていた。あまりに少なすぎる設備投資費に対して、当時のKDDI田中孝司社長が「6000億円で設備投資が賄えるほど通信事業は甘くない」と苦言を呈したほどだった。

しかし、楽天モバイルは2020年、5年間の計画前倒しを発表し、2021年夏には96%を達成するとした。さらに2月12日に開催された決算会見で、当初の2万7397局で人口カバー率96%を目指すが、96%は変えずに基地局数を4万4000局にして、密度を高める計画を明らかにした。このため、当初計画の6000億円よりも3〜4割程度、設備投資費が増加するという。

三木谷氏「4位にとどまるつもりはない」

三木谷氏

楽天モバイル会長兼CEO、三木谷浩史氏。

写真提供:楽天

楽天モバイルとしては、1月29日に新料金プランを発表して以降、契約者が一気に伸びを見せている。1月29日段階では220万の申し込み数だったのが、2月8日時点で250万を突破するまでになった。

300万契約まで1年間、無料で使えるキャンペーンがあるため、駆け込み需要もありそうだが、楽天モバイルとしては1GB未満は0円、使い放題でも2980円という「新料金プラン」に手応えを感じているようだ。

三木谷浩史・楽天モバイル会長兼CEOは目標とする契約者数などは明らかにしなかったが「4位にとどまるつもりはない」として強気の構えを崩していない。

楽天が「電波密度の向上」を決断した理由

三木谷氏

撮影:伊藤有

楽天モバイルが、人口カバー率96%を維持しながら基地局数を増やす戦略を打ち出したのは、「エリア拡大を優先するよりも、電波の密度を上げる」方向に舵を切ったことを示している。

2月5日に総務省で開催された「デジタル変革時代の電波政策懇談会 移動通信システム等制度WG」において、楽天モバイルは「楽天モバイルユーザーの月間利用データ量は15.6GBであり、他社ユーザーの約2倍使っている」というデータが示された。

他キャリアの約2倍という利用データ量を元にして計算すると、「周波数の逼迫度」は、2021年には他キャリアと同程度の逼迫度となり、2023年には逼迫度が他キャリアを超える勢いだ。

新料金プランにより、必ずしもすべてのユーザーが使い放題で使うとは限らない。ただし、いずれにしても、楽天モバイルとしては周波数割り当てが他社に比べて少ないため、基地局を密に打って(設置して)、トラフィックを処理する必要があると思われる。

だからこそ、「人口カバー率96%を維持しつつ、基地局の数を増やす」ことにしたのではないか。

「カバー率99%には兆単位の投資必要」と競合がけん制

宮内氏

競合の1社、ソフトバンク現社長の宮内謙氏。人口カバー率96%から99%へは大きな投資が必要だと指摘する。

撮影:小林優多郎

一方で、96%以上の人口カバー率を目指すには地上の基地局と、衛星から電波を飛ばすことで、人口カバー率100%を達成する計画を持っている。

ただ現在、総務省では、楽天モバイルに電波がつながりやすいとされるプラチナバンドの割り当てをすべく議論が進んでいる。楽天モバイルとしては、この議論が実を結び、無事にプラチナバンドが割り当てられてから、96%以上を目指す方が現実的と判断したのかも知れない。

現在、自社エリアではないところはKDDIのローミング接続となるが、それも、今後は続々と契約が打ち切られる方針だ。

山間部や離島など、96%以上を目指すなら、つながりやすいプラチナバンドを使った方が効率がいいのは間違いない。

ただ、ソフトバンクの宮内謙社長は「96%から99%を目指すなら、兆単位のお金がかかる」と指摘する。楽天モバイルが3社と肩を並べるためには、さらなる大型投資が必要なことが予想される。

3社と互角の戦いには早期の「5Gシフト」が必要な理由

3キャリアのネットワーク戦略を見てみると、すでに投資の中心は5Gであることは明らかだ。

ソフトバンクは2月15日から、すでに5Gサービスを提供している3.7GHz、28GHzに加えて、4Gで利用している700MHz、1.7GHz、3.4GHzを5Gに転用することを発表した。また、KDDIも、すでに4Gで使っていた3.5GHzを2020年12月に5Gに転用済み。さらに今春、700MHzを転用予定だ。

いずれも4Gで利用している周波数帯であるため、「なんちゃって5G」として超高速になるわけではないが、ユーザーの5Gスマホで「5G」と表示されるエリアが一気に広がることになる。

ソフトバンクの宮内社長はiPhone 12の5Gエリアについて「3月末か4月くらいのソフトウェア更新で、いろんなところで(4G転用5Gも含めて)5Gがつながるようになる。こんなことを言ってはいけないかもしれないが」と発言。iPhone 12でも4G周波数転用の恩恵を受けられるようになる。

楽天モバイルの5Gエリアについて、同社では「将来的には5Gでも4Gと同様の水準を目指して基地局整備を進めていく」としているが、具体的な計画は明らかにされていない。

シャープが4万円程度の5Gスマホ「AQUOS sense5G」を発売したり、ソフトバンクがシャオミと組んで、割引を適用させると1円で購入できる「Redmi Note 9T」を投入するなど、2021年は「機種変更すれば、5Gに標準対応」という状況になるのは間違いない。

楽天モバイルが、3社と互角に戦うには、4Gを全国展開するだけでなく、早期に5Gにシフトする必要もありそうだ。

(文・石川温


石川温:スマホジャーナリスト。携帯電話を中心に国内外のモバイル業界を取材し、一般誌や専門誌、女性誌などで幅広く執筆。ラジオNIKKEIで毎週木曜22時からの番組「スマホNo.1メディア」に出演。近著に「未来IT図解 これからの5Gビジネス」(MdN)がある。

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