ソフトバンクは3月17日からオンライン専用プラン「LINEMO」をスタートする。
撮影:小林優多郎
ソフトバンクは2月18日、月20GBのデータ量が使えるオンライン専用プラン「LINEMO(ラインモ)」の詳細を発表した。提供開始日は3月17日となる。
KDDI「povo」と同じ“無料通話なしで月額2480円”
今回明らかになったLINEMOのポイントは以下のとおりだ(太字は今回発表・変更になった点)。
- 月額利用料金は2480円(ただし、無料通話分はなし)。
- 毎月利用できるデータ量は20GB。
- LINEのトーク、音声・ビデオ通話などはデータ量のカウントなし。
- 「LINEスタンププレミアム(ベーシックコース、月額240円相当)」が契約中は無料(2021年夏から)。
- テザリング利用、契約解除料、MNP転出、SIM交換、契約事務手数料は無料。
- eSIMおよびeKYC(本人確認)に対応し、最速1時間で開通可能。
- キャリアメールや留守番・転送電話には非対応。
- サポートは音声・店頭非対応で、オンラインのみ。
- ソフトバンクブランドと同等の4G/5Gのネットワークで利用できる。
LINEMOのオプションや手数料。
撮影:小林優多郎
LINEMOは「SoftBank on LINE」という仮称で2020年12月に発表されたが、当時はNTTドコモの「ahamo(アハモ)」と同じく、音声通話1回あたり5分間の無料通話が付与されて月額基本料を2980円としていた。
一方で、KDDIは1月13日に「povo(ポヴォ)」を発表し、5分間通話無料をオプション(+500円)にすることで、月額2480円と最低利用可能金額を下げてきた。LINEMOも正式発表でpovoに合わせてきたわけだ。
各社のリリースなどから作成。
図版作成:Business Insider Japan
この価格変更についてソフトバンク執行役員の寺尾洋幸氏は18日の発表会で「『LINE(の音声通話もデータ)フリーなら無料通話分いらないじゃん』などのお客様の声に対応した」とコメント。
同社副社長の榛葉淳氏も、povoの模倣ではないのかという取材陣からの質問に対して「お客様ニーズを聞きながら高ければ、採用していくのが(キャリアとしての)使命」と応えている。
海外ローミングはahamoと同じではない
LINEMO公式サイトで掲示されているLINEMOのPRポイント。
出典:ソフトバンク
なお、ソフトバンクはLINEMOの特徴の1つに「国際ローミング無料」と謳っているが、これはahamoの「国際ローミングを月間20GBのデータ量に含む」と同じ意味ではない。
ソフトバンク広報によると、通話料金はソフトバンク・ワイモバイル相当の従量課金制(料金はエリアや現地キャリアによって異なる)、データ通信量金はソフトバンクの「海外パケットし放題」(1日最大2980円)が適用されるという。
ahamoは82の国や地域で追加料金なしでデータローミングが可能。
撮影:小林優多郎
つまり、海外ローミングのサービス体系についてはソフトバンク/ワイモバイル相当ということだ。
ソフトバンクもワイモバイルも音声通話は使った分、データ通信なら1日単位で料金が発生する仕組みで、国際ローミングを使おうとすること自体に月額がかかるわけではない。そのため、LINEMOの「国際ローミング無料」という言葉にとくに意味はない。
また、コロナ禍ですぐに海外に行ける状況でもないが、LINEMO契約後4カ月目末日までは国際ローミングを使えないという謎の縛りもあるので注意したい。
今後ヤフーとの間で揺れ動くLINEとのシナジー
LINEMOの発表会に登壇した(写真左より)ソフトバンク執行役員の寺尾洋幸氏、副社長の榛葉淳氏、LINEの取締役CSMOの舛田淳氏。
撮影:小林優多郎
LINEMOは他のオンライン専用プランとの最大の差別化要素として、LINEとのシナジーをあげている。
LINEとソフトバンクは2018年3月に、それまでLINEが運営していた格安SIMブランド「LINEモバイル」で提携関係に。そして、ソフトバンク子会社で傘下にヤフーを持つZホールディングスとLINEが2021年3月に合併することに伴い、 LINEモバイルもソフトバンクに吸収合併される。
そのため、LINEMOは同会場に登壇したLINE取締役CSMOの舛田淳氏の言葉を借りれば「LINEの(国内月間)8600万人のユーザーおよび次世代のユーザーが、最も経済的にも操作的にも手続き的にも使いやすいもの」になっているとされるが、やや中途半端な点も残されている。
LINE上で契約、手続き、サポートができるのはLINEMOの特徴の1つ。
撮影:小林優多郎
象徴的なのは主に2点。「LINEユーザーに特化していたLINEモバイルならではの特徴が完全には引き継がれていない点」と「LINEMOの先行エントリー特典がPayPayボーナスで付与される点」だ。
前者は、代表的なところで言えばLINEポイントを月々の支払いに充てることができない点だ。LINEモバイルは2019年5月から利用料金に対して1%のポイント付与を取りやめているが、LINEポイントの利用については提供し続けていた。
後者は、LINEユーザーにとって親和性の高い決済サービスなら「LINE Pay」を当然思い浮かべるところだが、3月16日まで申込可能な先行エントリーではソフトバンク・ヤフーの決済サービス「PayPay」のPayPayボーナス3000円分相当が付与される。
この理由を寺尾氏は「仕組みと準備期間の問題」とし、2020年末からのエントリースタートに合わせるために「1番早く特典を準備できるのがPayPayだった」と明かしている。
記者の質問に答えるソフトバンクの寺尾洋幸氏。
撮影:小林優多郎
会場では、ソフトバンクやワイモバイルで用意されている「Yahoo!プレミアム」(月額508円税込)の無料付与がLINEMOにはないことも確認された。現時点では、機能やサポート面でLINEらしさが節々に表れているが、ビジネス的な経済圏という意味ではヤフーとLINEどっちつかずの状態になっている。
発表会でLINE舛田氏は今後「スタンプ以外にもLINEのサービスをかけあわせていく」と発言。一方で、ソフトバンク寺尾氏は「サービス開始時点では(ヤフーとのシナジーのあるものは)用意していない。ユーザーの声を聞きながら、どう取り込んでいくのか日々改善していきたい」と話している。
さらに寺尾氏は「LINEとヤフーの統合が3月に迫っている、それに合わせてどのサービスを整理していく」としていることから、LINEMOとしてだけではなく、ヤフーおよびLINEでのサービスの棲み分けが徐々に進行していくことが伺える。
(文、撮影・小林優多郎)