ウォルマートのカート置き場で消毒する従業員。
Courtesy of Walmart
- 米小売大手のウォルマートは、時給11ドルの最低賃金を維持しつつ、一部の労働者の賃金を引き上げると発表した。
- 同社のダグ・マクミロンCEOは、この昇給は「機会のはしご(ladder of opportunity)」を作るのを助けるだろうと述べた。
- 彼は、最低賃金の15ドルへの引き上げは、アメリカ経済に利益をもたらす方法で行われるべきだと付け加えた。
米小売大手のウォルマート(Walmart)は2月18日(現地時間)、時給11ドルの最低賃金を維持しつつ、一部の労働者の賃金を引き上げることを発表した。
ダグ・マクミロン(Doug McMillon)CEOによると、この賃上げは、アメリカ最大の小売業者であり、最大の雇用主であるウォルマートが、従業員の昇進のための「はしご」を構築することを目的としているという。今回の昇給は、42万5000人の従業員の給与を時給13ドルから19ドルに引き上げるもので、3月13日から有効になる。
同氏は投資家との電話会見で、「昇給する人々は、最低賃金レベルの人よりも長い期間、我々と一緒に働いている」と述べた。
「我々は多くの従業員が段階的にキャリアを築いていくための『機会のはしご』を作ろうとしている」
同社は、最低賃金を時給15ドルに引き上げるよう圧力をかけられているにもかかわらず、11ドルのまま、引き上げないことを選択した。ここ数年、アマゾン(Amazon)、ターゲット(Target)、コストコ(Costco)などの競合他社は、労働団体などが賃上げを要求したことを受け、最低賃金を時給15ドルに引き上げている。ウォルマートによると、アメリカの平均賃金は時給15ドルを上回っている。
マクミロンCEOは、最低賃金が15ドルになったら、従業員が段階的に昇給できるように設計された人事制度を導入することができないだろうと述べた。しかし、過去5年間で最低賃金を9ドルから11ドルに引き上げた同社は、時間をかけて賃金の引き上げを続け、各州の最低賃金を遵守するとマクミロンは述べた。
マクミロンは、今回の投資はウォルマートの新しい組織をサポートするのに役立つだろうと付け加えた。ウォルマートは、コロナウイルスの大流行が始まって以来急増しているオンライン販売を優先している。マクミロンはこれまで、アメリカの連邦最低賃金を7.25ドルから引き上げる努力を支持すると述べてきたが、その実行は2009年以降行き詰まっており、バイデン大統領は1兆9000億ドルの景気刺激策に最低賃金の引き上げを含める計画だ。
民主党の議員の何人かは「生活できる賃金」を提唱し、2025年までに最低賃金を15ドルに引き上げることを訴えている。しかし、アメリカ議会予算局は2021年2月、民主党の賃上げ法案の分析結果を発表し、賃上げによって140万人の雇用が失われる可能性があることを明らかにした。
「15ドルをめぐる議論が全国的に起こっているのをよく知っているし、それは重要な目標だと思うが、アメリカ経済にとってよい方法で進めるべきだとも思う」とマクミロンは語った。
「我々をモデルとして、それがどのように機能するかを理解してもらえるだろう。私は多くの人々の賃金を上げることができて本当にうれしく思っている」
ウォルマートの最高財務責任者(CFO)のブレット・ビッグス(Brett Biggs)によると、2020年度第4四半期のネット販売は、パンデミックによって顧客が自宅で買い物をするようになり、さらに備蓄をするようになって家庭用品の需要が増加したことから、ウォール街の予測を3倍上回ったという。ウォルマートは第4四半期に約1000億ドルの売り上げを記録した。アメリカ国内の売り上げだけでも290億ドル増加している。
オンライン・ショッピングに対する顧客の関心の増加について、マクミロン氏は「2020年は顧客の行動が非常に早く進歩した。その行動の変化は今後も続くと考えている」と述べた。
(翻訳、編集:Toshihiko Inoue)