2020年は電気自動車(EV)スタートアップにとって躍進の年だったが、2021年もこのトレンドは続くのか?(画像はニコラ[Nikola]が開発中のEVセミトレーラー)
Nikola
- 電気自動車(EV)にとって、2020年は素晴らしい年となった。ただし、投資家たちがすぐにそっぽを向いてしまう可能性も否定できない。
- Insiderは専門家2人に依頼、2021年にEVの株価にとって最大の脅威となり得るファクターを挙げてもらった。
世界の自動車市場に占める電気自動車(EV)のシェアはいまだに微々たるものだが、その株価は2020年に大きく跳ね上がった。テスラ(Tesla)の株価は1年かけて700%以上上昇し、中国のニオ(NIO、蔚来汽車)は1000%超の伸びを見せた。
一方、昨年は株式公開するEVスタートアップが相次ぎ(その多くは「特別買収目的会社(SPAC)」を通じた上場で、いまや第2のドットコムバブルの様相を呈している)、上場直後からフォードや日産のようなレガシー自動車メーカーより高値で取り引きされている。
2020年に入っても、ここまでのところ投資家はこの先について楽観的な見通しのままだが、いつどこで態度が一変するかはわからない。
Insiderは、米投資信託評価機関モーニングスターの自動車産業担当アナリスト、デイビッド・ウィストンと、独立系資産運用会社ティー・ロウ・プライスの米国グロース株運用戦略部門ポートフォリオマネージャー、ジョセフ・ファスに依頼し、EV関連企業の株価にとって最大の脅威となるのは何か、具体的にあげてもらった。
【脅威1】低金利時代が終わりを告げる
米連邦準備制度理事会(FRB)の定期会合である連邦公開市場委員会(FOMC)で決定される「フェデラルファンド(FF)金利」は、中央銀行(=連邦準備銀行)に預けるべき準備金の足りない銀行が、他の銀行から無担保でその資金を借りるときに適用される短期金利。
FF金利が上昇すると、基本的にあらゆる貸出金利がつられて上昇するため、投資家にとっては債券の購入や銀行預金のほうが魅力的ということになり、株式投資は劣後することになる。
FRBは過去10年間、低いFF金利を維持し続け、近い将来引き上げる可能性についても示唆していない。ただ、2021年にもしそのスタンスに変化があった場合、EVの株価は下がる可能性があるとウィストンは指摘する。
【脅威2】レガシー自動車メーカーの株価が上昇する
EV関連の株式に資金が流入している現在の状況は、投資家たちが新興テック企業をレガシー自動車メーカーのライバルと見なしていることを示している。
ただ、その代表格とも言える米ゼネラル・モーターズ(GM)の株価は2021年、次の2つの大きな発表のあとに上昇している。
ひとつは、EVを活用した新たな配送・流通ビジネス「ブライトドロップ(BrightDrop)」の展開。もうひとつは、2035年までにガソリン車の販売を終了し、すべてEVに切り替えるという意欲的な目標の設定だ。
ウィストンは、投資家たちはGMがEV技術開発に本気だということを理解し始めているとみる。もし他のレガシー自動車メーカーも同様の動きに出るとなれば、そちらの株価も上昇し、EV専業の新興スタートアップが犠牲になる、という展開も考えられる。
【脅威3】経済再開が本格化し、デイトレーダーが減る
ファスによれば、新型コロナウイルス感染拡大を受けた移動制限により、自宅にいて株取引に使える時間が増えた。2021年にオフィス再開の動きが本格化すれば、EV関連企業の株価上昇を支えてきたデイトレーダーの数が減ることになる。
【脅威4】EVスタートアップの「有言不実行」が続く
ニコラ(Nikola)やローズタウン・モーターズ(Lordstown Motors)、アライバル(Arrival)など上場を果たしたEVスタートアップの一部は、2021年中に新車種の市場投入を計画している。大成功をおさめたテスラも含めて、たいていの新興企業がこの最初の1台を世に送り出すまで悪戦苦闘を重ねている。
2021年もそうした「ジンクス」がくり返されるようだと、EVスタートアップへの信頼が揺らぐおそれもある。
【脅威5】投資家が「バリュー株」志向になる
投資家たちは過去10年間、着実な成長を続けているものの面白みがなく、株価も安い企業より、株価は高くても伸びしろが大きい企業に好んで資金を投じてきた。もちろんEV関連企業には後者が多い。
しかし、何かの拍子に、投資家が成長ポテンシャルより安定性を求めるモードに変化した場合、EV関連の株式には大きな打撃となる可能性がある。
(翻訳・編集:川村力)