パンデミックをきっかけに、多くのミレニアル世代が初めて住宅の所有者となった一方で、住宅取得に対して悲観的になっているミレニアル世代もこれまで以上に増えている。
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- アパートメント・リストのレポートによると、2020年に住宅を購入したのは、ミレニアル世代が他のどの世代よりも多かった。
- 同時に、これまでよりも多くのミレニアル世代が、今後も住宅を所有することはないと考えており、18%が「ずっと賃貸住宅に暮らすつもり」だと回答した。
- これは、「ミレニアル富裕層」と「ミレニアル貧困層」の格差が拡大している証拠だ。
ミレニアル世代(おおよそ1981年から1995年までに生まれた世代)が住む家を比べて見るだけで、この世代で貧富の格差がいかに広がっているかがよくわかる。
アパートメント・リスト(Apartment List)の調査報告書「ホームオーナーシップ・レポート」によると、2020年に住宅を購入したのは、ミレニアル世代が他のどの世代よりも多かった。だが同時に、多くのミレニアル世代が、今後も住宅を買うことができないと考えており、「ずっと賃貸住宅で暮らすつもり」という回答は、前年より9%ポイント上昇して、18%だった。このレポートは、アメリカの国勢調査と、アパートメント・リストが1851人のミレニアル世代を対象に行った賃貸住宅調査のデータに基づいている。
レポートによると、ミレニアル世代の住宅所有率は、3年前の40%から47.9%に上昇している。これは、2020年に25歳から40歳になるミレニアル世代が住宅購入の最盛期を迎えていることを示している。2020年は金利が歴史的な低水準になり、頭金として十分な貯蓄をしていた人にとっては、住宅が購入しやすくなった。
しかし、住宅需要は住宅価格を押し上げ、その結果、ただでさえ家を持てるようになるのが他の世代より遅いと言われているミレニアル世代にとって、住宅はいっそう手の届かないものとなっている。レポートによると、ミレニアル世代の80%が「将来的に住宅購入を計画している」が、そのうち63%は「頭金にするための資金がない」と回答した。調査対象者の18%が「ずっと賃貸住宅で暮らすつもり」であり、そのうち74%が主な理由として「住宅を購入するゆとりがない」と回答した。
10年以上にわたり、ミレニアル世代は経済的な危機に直面してきた。これは、膨大な学生ローンによる債務、高騰する生活費、さらに景気停滞による雇用情勢や賃金の停滞によって引き起こされたものだ。コロナ禍による不況も、この世代が富を築くことを妨げる新たな障壁となった。中には、成人してから2度も歴史的な大不況に見舞われた人もいる。
パンデミックはミレニアル世代の貧富の差を拡大している
このようなミレニアル世代における住宅所有の差は、ミレニアル世代の中にある「ミレニアル富裕層」と「ミレニアル貧困層」の溝が、パンデミックによってより深くなっていることを表している。
「パンデミックで、ミレニアル世代の経済的格差が拡大している。経済的痛手をほとんど受けていない人がいる一方、失業による損失や増大する教育費、経済的機会の損失、自分や家族が直面するであろう健康問題への懸念などによって、財政的にすっかり打ちのめされた人もいる」と、ノースウェスタン大学の人口統計学者で社会学の准教授であるクリスティン・パーチェスキ(Christine Percheski)は、以前Insiderに語っている。
裕福なミレニアル世代の中には、仕事を失うことなく、可処分所得をあまり消費せずに貯蓄に回すことができる人も少数ながらいると彼女は付け加えた。このような人々にとって、住宅は購入しやすくなったが、失業や減給に苦しんでいる人々はそうではない。
だからと言って、今回の調査で「ずっと賃貸住宅で暮らすつもり」と回答した人全員が、住宅を購入する余裕がないというわけではなく、実際には好んで賃貸に住む人もいる。「ずっと賃貸住宅で暮らすつもり」だと回答した人たちにその理由を聞いたところ、34%が「賃貸の柔軟性の高さが気に入っている」、32%が「住宅を所有することで発生するメンテナンスや隠れたコストを負担したくない」、21%が「住宅購入は財政的なリスクが高い」と回答した。
しかし、購入しない理由は「住宅を購入するゆとりがない」が主流で、やはりこれがミレニアル世代の格差の核心だ。
このような不平等の中心にあるのは人種格差だ。レポートによると、ミレニアル世代で住宅所有率が最も高いのは白人のグループで、最も低いのは黒人のグループだ。30歳で住宅を所有している白人は51%で、黒人の20%と比べると2倍以上になっている。
「ミレニアル世代の住宅所有率の低さの原因となっている経済的不平等は、なくなるどころか強くなっている」と、アパートメント・リストのリサーチアソシエイトであるロブ・ワーノック(Rob Warnock)は、レポートで指摘している。
(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)