- レーラー・アーキテクツとロサンゼルス市は、小さな住宅が立ち並ぶ新しい村を設計した。
- 39棟からなる「チャンドラー・ブルバード・ブリッジホーム・ビレッジ」は、住む場所のない人々のための住居として作られた。
- アメリカでは、ホームレス対策としてプレハブ住宅が活用されることが増えている。
カリフォルニア州ノース・ハリウッドにある「忘れ去られていた」一画が、プレハブ式の小さな住宅が立ち並ぶカラフルな「村」に生まれ変わった。その目的は、ロサンゼルスのホームレスに住居を提供することにある。
工場などで作るプレハブ住宅は、通常の住宅よりも経済的で、環境にやさしく、時間もかからない。そのため、住宅を手に入れられない人々や、自然災害や個人的なトラブルに起因する住宅困窮者への有望な解決策として注目度が増している。
現在、複数の企業が、住む場所のない人々に住居を提供するために、プレハブ式の小型住宅を製造している。そのひとつであるワシントン州を拠点とするパレット(Pallet)は、30分で組み立てられる住宅ユニットを提供している。
パレットの小型住宅は現在、全米で利用されるようになっていて、その一例が、ロサンゼルスの「チャンドラー・ブルバード・ブリッジホーム・ビレッジ(Chandler Boulevard Bridge Home Village)」だ。この39棟からなる新たな小型住宅コミュニティは、ロサンゼルスのホームレス対策のために設計された。
以下では、建設会社の「レーラー・アーキテクツ(Lehrer Architects)」とロサンゼルス市エンジニアリング局(Bureau of Engineering)が設計した「村」を紹介しよう。
ロサンゼルス市エンジニアリング局の都市土木技術者でゼネラルマネージャーのゲイリー・リー・ムーア(Gary Lee Moore)は、このカラフルな村は、ロサンゼルスでは最初のものであり、住む場所のない市民に「コミュニティ意識と尊厳」を与えるものだと述べている
13週間で建設されたこの住宅群は現在、ブリッジ(橋渡し)シェルターとも呼ばれる一時的なシェルターとして注目を集める存在となっている
レーラー・アーキテクツのファンディングパートナー、マイケル・レーラー(Michael Lehrer)と、同社パートナーのネリン・カドリベゴビッチ(Nerin Kadribegovic)は、Insiderのメールインタビューで、ロサンゼルスの公的機関や地域住民、そして世間は、この場所を「受け入れつつある」と述べた
完成したばかりのビレッジは、細長い涙形の区画に位置している。このスペースに元々何があったかを想像するのは難しい
この扱いにくい形の区画を埋めるアイデアが生まれたのは、市の当局者が「一時的な退避場所としての住居」の建設場所を探し始めたときのことだ
言うまでもないが、こうした普通ではない形の区画の作業では、設計や工事で問題が生じることがある
だが幸い、このプレハブ式ユニットは、小型で組み合わせも変更できるので、ほかの方法で埋めるのが難しいスペースを活用することができた
レーラー・アーキテクツによれば、仮設されたシェルターはいま、かつて空き地だった区画に「本当の価値をもたらして」いるという
このビレッジにある39棟のパレット社製プレハブ式シェルターは、それぞれ最大2名を収容できる
パレット社の創設者でCEOのエイミー・キング(Amy King)によると、同社が住む場所のない人のためのシェルターを作り始めたのは、コミュニティシェルター以外の「尊厳のある」住居を提供するためだったという
そうした「尊厳」を守るために、このシェルターには、ベッドや、デスクとしても使える棚、携帯電話用の充電エリアなど、どんな住居にもあるような設備が備わっている
ユニットは施錠可能で、エアコンとヒーターも備わっている。これにより、安全性と快適性がいっそう高まっている
カドリベゴビッチとレーラーは、「従来型のシェルターでは、このようなレベルのプライバシーとセキュリティは得られない」と指摘する。「子どもが絵に描く『家』や、モノポリーゲームの家ですら、単なるハウス(建物としての家)でなく、ホーム(暮らしの場としての家)というイメージを強くかきたてるものだ」
ビレッジ内には、小さな家のほかに、トイレやシャワー、ランドリー、共用スペース、ペット用エリアなど、全般的なニーズに対応するアメニティも備わっている
このビレッジでもっとも目を引くのは、カラフルな色使いだろう
このポップな色使いは意図的なものだ。レーラー・アーキテクツによれば、統一感を出しつつ、「気持ちを高揚させる3Dペインティングの効果」を安価に得られるデザインとして、このアイデアが生まれたという
だが、施設全体がポップな色に覆いつくされているわけではない
カドリベゴビッチとレーラーによれば、多くのシェルターは白で、カラフルさはビレッジのコミュニティ感を高めるために、戦略的に追加されているという
レーラー・アーキテクツによるこのプロジェクトの予算は全体で349万ドル(約3億7200万円)だったが、最も費用がかかったのは、カラフルな住宅群ではない
このプロジェクトで費用が最も高くついたのは、下水管の延長や街路の整地などの基礎工事だった
プレハブ式シェルターは今後、同様のビレッジを増やすための鍵を握っているかもしれない
レーラーとカドリベゴビッチによれば、プレハブ式ユニットは設置に時間がかからない。ホームレスの問題が拡大している今、とりわけその点が重要になるという
レーラー・アーキテクツは現在、この近くで、103棟からなる別のビレッジの建設を進めている。また、ロサンゼルスの別の地区でも、第3のビレッジの建設が計画されている
カドリベゴビッチとレーラーは、こう述べている。「設計に敬意と尊厳を取り入れれば、人々が自分の足場を見つけて、この街に暮らすすべての人々とともに自分の人生の新たな章を始めるのを支援することができるだろう」
(翻訳:梅田智世/ガリレオ、編集:Toshihiko Inoue)