「開発途上国のサステナブル製品を楽天市場で」JICAと楽天が包括提携。テクノロジー活用も視野に

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2月25日のオンライン協定締結式・記者会見に参加した国際協力機構(JICA)理事の萱島信子氏 (左)と、楽天常務執行役員CWO(Chief Well-Being Officer)の小林正忠氏。

出所:「JICAと楽天による包括連携協定」に関する共同オンライン記者発表会

楽天と国際協力機構(JICA)は2月25日、「国際協力を通じて途上国の開発課題解決およびSDGs(持続可能な開発目標)の達成に貢献すること」を目的とした包括連携協定を締結した。

連携の具体的な内容は、次の3点に集約される。

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連携の具体的な内容。

出所:「JICAと楽天による包括連携協定」に関する共同オンライン記者発表会

  1. スタートアップ支援……JICAが支援する新興国のスタートアップ企業に対し、楽天の従業員がメンタリング(助言)を実施する
  2. 途上国産品の販路拡大……楽天市場内のショッピングモール&オンラインメディア「EARTH MALL with Rakuten」などを通じて、フェアトレード商品を含む途上国産品の情報を提供する
  3. 人材交流・協働促進……JICAが支援する留学生の楽天でのインターンシップの受け入れや、JICA海外協力隊員と日本国内の企業(および個人)と協働を促進するためのプラットフォームを構築する

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今回の連携が生み出す価値。

出所:「JICAと楽天による包括連携協定」に関する共同オンライン記者発表会

アジア・アフリカのスタートアップ支援

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出所:「JICAと楽天による包括連携協定」に関する共同オンライン記者発表会

JICAはアジア・アフリカでスタートアップを育成・成長支援する起業家支援プラットフォーム「Project NINJA」を展開している。

その拡大発展に向けて、テクノロジーとイノベーションに強みを持ち、世界で15億人以上に利用される70以上のサービスを展開する楽天から助言などの協力を得る。

楽天市場を活用して途上国産品の販路拡大

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「EARTH MALL with Rakuten」の活用法。

出所:「JICAと楽天による包括連携協定」に関する共同オンライン記者発表会

EARTH MALL with Rakuten」の活用は、今後の連携を具体化させていくための柱となる取り組み。JICAが支援する途上国の産品の販路を拡大するため、サステナブルなストーリーのある商品を記事で紹介していく。

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2019年3月のEARTH MALL記事。「日本の買い物プラットフォームで、かつ『サステナブルな買い物をあたりまえにする』という新たな取り組みを始めたEarth Mallさんを見て、ビビッときて」というJICA側の声がけから始まったという。

Screenshot of EARTH MALL with Rakuten

EARTH MALLについては、すでに第1回に相当する協業が実現しており、じつは今回の包括協定締結の原動力にもなったという。

2019年3月25日の記事では、ラオスの契約農場で育てた無農薬バタフライピーの花を加工してつくったハーブティ、キルギスタンでつくられたハンドメイドのフェルト商品などが紹介されている。

大学院留学生らのインターンシップ

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JICA留学生のインターンシップ受け入れ状況。

出所:「JICAと楽天による包括連携協定」に関する共同オンライン記者発表会

楽天などでのインターンシップについては、JICAがアジア・アフリカ・シリア(ヨルダン・レバノンに退避中の難民)から毎年受け入れている大学院留学生・約220名を対象に機会を提供する。

楽天は社内公用語が英語のため、受け入れのハードルも低いという。

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今後の連携可能性について。

出所:「JICAと楽天による包括連携協定」に関する共同オンライン記者発表会

今後の連携拡大・深化の可能性については、JICAが専門の担当部署が置いて力を入れるデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進に楽天が協力したり、プロサッカー・野球チームを抱える楽天の人材や知見を活かし、スポーツを通じた国際協力を行ったり、具体的なタイムラインは現時点では未策定ながら、メニューを増やしていく。

なお、開発途上国でのマイクロクレジット(小口融資)事業を展開する五常・アンド・カンパニーに10億円を出資するなど、JICAはフィンテックを通じた国際協力(投資)に着手しているが、今回の楽天との包括提携では、具体的なフィンテック活用策はまだ検討されていない。

ただし、「技術的ハードルが高いものの、ホットな分野で、JICAとしても途上国での金融アクセス提供には注目している」(JICA経済開発部の山田智之氏)という。

(文:川村力)

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