グーグルのサンダー・ピチャイCEO(左)とフェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEO。
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- オーストラリア政府は、物議を醸している「メディア取引法」に署名し、成立させた。
- この法律は、テック企業にニュースパブリッシャーへの支払いを義務付けるものだが、フェイスブックやグーグルによる抗議を受けて内容が修正された。
- フェイスブックは修正後、オーストラリアのニュースを再びサイトに掲載するという。
オーストラリア政府は、その内容を巡ってフェイスブック(Facebook)やグーグル(Google)との間で数カ月におよぶ激しい論争を巻き起こした法案に署名し、法律として成立させた。
新しい「ニュースメディア取引法(News Media Bargaining Code)」の下では、テック大手はニュースフィードや検索結果にニュースコンテンツを表示する際にニュース・パブリッシャーに料金を支払わなければならない。
この法案を巡って、グーグルが検索エンジンを停止すると脅し、フェイスブックがオーストラリアのニュースを一時的にブロックしたため、当初の内容よりも緩和された条件になっている。
グーグルはルパート・マードック(Rupert Murdoch)のニューズ・コーポレーション(News Corp.)を含む世界中のパブリッシャーと数百万ドル規模の契約を結ぶことでこの法律の条項を回避しようとしたが、フェイスブックはオーストラリアの議員たちが土壇場で譲歩したことで交渉の席に戻った。
当初の提案では、フェイスブックとグーグルは3カ月以内にパブリッシャーと個別にコンテンツの価格交渉を行うか、政府が任命した委員会による調停手続きに入らなければならなかった。
しかし、オーストラリアのジョシュ・フライデンバーグ(Josh Frydenberg)財務大臣とフェイスブックのマーク・ザッカーバーグ(Mark Zuckerberg)CEOの会談の後、政府は、テック大手が合意プロセスをよりコントロールできるようにする修正案に合意した。
法案の最終版では、フェイスブックやグーグルが事前にニュースパブリッシャーとコンテンツに対価を支払う契約を結んでいれば、この法律が適用されない可能性がある。オーストラリア政府はまた、条項を遵守するために1カ月の猶予をプラットフォームに与え、強制的な仲裁は最後の手段となる。また、仲裁の前に2カ月間の調停期間を設けることになっている。
グーグルは2021年に入ってオーストラリアの主要メディア数社と相次いで契約を結んでいるが、今回の修正によって危機を脱したように見える。一方、フェイスブックはセブンウエスト・メディア(Seven West Media)と新たな契約を結び、グーグルと同様に仲裁を回避したい意向を示している。
フェイスブックのオーストラリア担当マネージングディレクターのウィル・イーストン(Will Easton)はブログ投稿で「議論を重ねた結果、オーストラリア政府が、プラットフォームがパブリッシャーに提供する価値とパブリッシャーが我々に提供する価値を比較した上で商取引を行うべきだという我々の主張に対処する修正に同意したことに満足している」と述べた。
フェイスブックは近日中にオーストラリアのニュースを国内外のユーザーに向けて復旧させるという。しかし、25日の朝の時点では、News.com.auのようなオーストラリアのニュースサイトのFacebookページは、イギリスからは利用できないままだ。
批評家は、今回のプラットフォームと政府の取引は小規模なパブリッシャーを排除するリスクがあると述べている。
オーストラリアのファッションサイト「Man of Many」の共同創設者であるスコット・パーセル(Scott Purcell)は、AdNewsに「多くの小規模で独立したパブリッシャーは、政府と大手テック企業の間の取引から取り残されているのが現実であり、利益の大部分は伝統的な大手メディア企業のみに流れ、独立したローカルコンテンツを排除することになる」と述べた。
Insiderはフェイスブックとグーグルにコメントを求めている。
[原文:Australia has passed an amended version of the law that prompted Facebook to ban news]
(翻訳、編集:Toshihiko Inoue)