弁護士はじめ労働・子育て・生活・DV、性暴力被害者支援などの専門知識を持った女性約60人が集まり、コロナ禍で困窮する女性などを対象にした、「女性による女性のための相談会」を開催する。家族や夫、職場の指示に従う“わきまえた”生き方を強いられ、他人に相談することに躊躇しがちな女性たちのニーズを汲み、長期的な支援を行うことが目的だ。
多言語、手話にも対応。キッズスペースも
女性が女性を支援する仕組みが始まった。コロナ禍でもSOSを出せずにいる女性たちのニーズを汲み、長期的なサポートをするのが目標だ(写真はイメージです)。
撮影:今村拓馬
相談会は3月13(土)・14(日)日に東京都・新宿区立大久保公園で午前10時〜午後5時にかけて開催(最終受付は午後4時30分)予定。生活、労働、子育て、DV被害、性被害など幅広い相談を受け付ける。
キッズスペースもあり、子ども連れでも不安なく訪問できる。また無料でマッサージが受けられたり、衣服、食料品(野菜やレトルト食品)、生理用品、シャンプー、基礎化粧品、花などの無料配布もあるという。これらの物資はネスレ、ファーストリテイリング、資生堂などから提供があった。
またセクシュアルマイノリティの女性からの相談も受け付ける他、英語、フランス語、ベトナム語などの言語にも対応。日本語が苦手な外国人の方向けのやさしい日本語や、聴覚障害のある方への手話対応もある。
深まる女性の困窮
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相談会に先駆け、「女性による女性のための相談会」実行委員会は3月1日に厚生労働省で記者会見を開いた。
実行委員会によると、2020年末から2021年の年始にかけて都内各所で相談会が実施されたが、大久保公園で開かれた「年越し支援・コロナ被害相談村」には344 人が相談に訪れ、そのうち女性は約2 割だったという。
リーマンショック後の2008年末に行われた「年越し派遣村」では、相談者505 人のうち女性はわずか5人だったことと比較すると、女性の生活困窮者は増加している可能性がある。
「年越し支援・コロナ被害相談村」で相談員を務めた作家の雨宮処凛さんによると、
・電話の所持率は53%だが、持ってはいても電話代が払えず止まっている人が多い
・アパートはあるが、家賃を滞納している
・所持金「1000円未満」の人が21%
など、女性たちの貧困は逼迫した状況だったそうだ。
「男性には言えない」、パートナーの隣で黙る女性も
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一方で相談村を訪れた女性たちからは、「女性の法律家に相談したい」「セーター1枚を欲しかったが、男性の支援員には言い出せなかった」などの声が上がったという。
「『生理用品が欲しいけど男性相談員には言い出しにくかった』など、女性特有のニーズは多いと思います。こうしたことを受けて、女性のための女性の支援体制を作る必要があるという意識が支援者の女性たちの間に広がったことが、今回の取り組みに繋がりました」(松元千枝さん・ジャーナリスト)
「カップルで相談に来られた場合、男性が話して女性はそれを聞いているだけ、というケースは少なくありません。DVの場合はもちろん、生活まわりの困りごとでも、男性の前だと言い出せないこともあるでしょう。今回はそういう女性たちにも声を聞かせて欲しいと思っています」(雨宮処凛さん)
自分を後回しにしないで、1人で抱え込まないで
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「女性による女性のための相談会」の理念は、「チームで支援する」こと、そして「継続して長く支援する」ことだという。
例えば「年越し支援・コロナ被害相談村」のときは、手持ちのお金が全くない相談者の生活保護申請に同行し、保護の開始までの安否確認や、その後のアパート探し、仕事探し、身の回りの相談に乗るなど、こまめに対応していたという。
また、ひとり親で児童扶養手当が受給できなくなってしまった人の法律相談への同行や、養育費支払いの追求、子どもの健康状態の確認や就労支援などもチームで対応し、今も相手が必要とする場合は1日に何度もやり取りする関係だ。
今回も生活保護の必要がある人には申請に同行し、DVや性暴力の被害者などには支援機関と連携を取ってサポートしていくという。
実行委員の1人である、DV被害者支援を行う一般社団法人エープラス代表理事の吉祥(よしざき)眞佐緒さんは言う。
「年末年始のコロナ相談村では、困窮してどうしようもない女性たちの、叫びのような相談が多かったです。話を聞いていて痛感するのは、女性は幼い頃から“わきまえた”生き方を強いられてきた人が本当に多いということ。
逼迫した状況でなくてもいいんです。『ちょっと不安がある』『誰かに悩みを聞いて欲しい』、そんな女性たちにもたくさん来て欲しいと思っています。どうか自分のことを後回しにしないで。些細(ささい)なことでもいい、1人で抱え込まないでと伝えたいです」(吉祥眞佐緒さん)
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(文・竹下郁子、写真は全てイメージです)