新型コロナウイルスの感染拡大により、ホワイトカラーの人たちの働き方が、寝ること、働くこと、食事すること、休むことをすべて同じ空間の中で行う在宅勤務という形に変わってしまった。
しかし、働く人々はそのような状況にも驚くほどうまく適応してきた。IBMが2万5000人を対象に実施した調査では、パンデミック後、成人の54%が仕事の大半を在宅勤務に切り替えることを選ぶと答えている。
グーグルのエグゼクティブ生産性アドバイザー、ローラ・メイ・マーティン。
その傾向はグーグルでも同様であり、最近の調査ではパンデミック後にフルタイムでのオフィスに戻りたいと考えている社員は10%に満たないことが分かった。
ヨーロッパ、中東、アフリカの各オフィスの1万5000人以上のグーグル社員を対象にした調査では、指定されたオフィスで働きたいのは週1日から4日の間だと、60%の人が回答している。
ホワイトカラーの働き方が2020年以前の様式に戻る可能性はますます低くなっている。Insiderは今回、グーグルのエグゼクティブ生産性アドバイザー、ローラ・メイ・マーティンにインタビューを行い、オフィス勤務と在宅勤務の新たなハイブリッドの世界で生産性を維持し、向上させるためのポイントについて聞いた。
1. 自分が短距離走タイプなのかマラソンタイプなのかを知る
Salomon
「今のような状況の中で働く人は、大きく2つに分けられます」とマーティンは言う。「まず、移動はすべてやめて自宅にこもり『ああ、通勤しなくてよくなった。今までより自由な時間が増える』と考える人たちです。
このようなタイプの人たちを私は『マラソンタイプ』と呼んでいます。朝起きて、仕事をして、ここまでできたら終わると決めたところで仕事を終え、夕食を作って食べ、寝る、というタイプ。このグループの人たちは特に1日を無駄に過ごすということはありません。
一方、1日を通して一定の量の仕事をコンスタントにこなすことが困難だという人たちがいます。
この人たちは例えば『子どもたちがずっと家にいる。こんなに時間がないと感じたことはこれまでになかった。子どもが昼寝をしている間か学校のオンライン授業を受けている間に仕事を詰め込むしかない』という人たちです。このような人たちを私は短距離走タイプと呼んでいます。
もしあなたが短距離走タイプなのであれば、子どもがオンライン授業に出ている間の2時間の間に、自分は何を達成するつもりなのかをあらかじめ決めておく必要があります。ただデスクに向かってメールを読んで、そのメールを理解しようとするだけで終わってしまってはもったいない。時間は無為に過ごせばあっという間です。
マラソンタイプの人たちのように、一日中仕事だけしていられるわけではないのです。何を達成するつもりなのかを考えて行動してください。ただ仕事をするのではなく、使うべきところに集中して時間を使うべきです。仕事をする人の中にはこのような2つのタイプがあるということがだんだん理解されてきたと思います」
2. 息抜きのための時間をつくる
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「新型コロナウイルスの感染が拡大し始めた頃は、こんなに長くこの状況が続くとは誰も思っていませんでした。そしてこんな状況が数カ月も続くと皆、キッチンのテーブルにPCを投げ出して『どうにかして自宅で仕事をこなせる体制を整えないと。息抜きの方法も考えなくちゃ』と考えるようになったわけです」とマーティンは言う。
マーティンは従業員らに「ノーテックチューズデー(電子機器を使わない火曜日)」といった日を設けることを推奨している。例えば火曜日の昼食後にはPCの画面をすべて閉じて、何か小さなことに集中して取り組む時間をつくるといい、とマーティンはアドバイスする。
「皆、PCに対してリソースを割く比重が大きいので、PC作業が重くのしかかっています」とマーティンは指摘する。「これまでに何千人ものグーグル社員がこのチャレンジに参加しています。掃除でも読書でもボードゲームでも、家族と一緒にできることでもいいので、何かPCを使った仕事以外にできることをするというチャレンジです。
一番よく聞かれた感想は、よく眠れるようになった、気分がリフレッシュできた、というものです。就寝前の数時間にこの試みをしただけで効果が感じられたそうです」
3. 嵐のときには自分自身が傘になる
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「家族や仕事のプレッシャーや自分の部署での非効率な仕事のやり方など、私たちはそれぞれいろいろ抱えていますよね。私はそれを傘に見立てています」とマーティンは言う。
「どんなに天候が荒れていても、パンデミックという大嵐がやってきても、どうにかして嵐の影響を少しでも弱めるために小さな傘を差すことはできないだろうかと考えるんです。
私が経営幹部たちと一緒に取り組んでいることのひとつに、チーム内のバランスをとるなど、これらの原則のいくつかを取り入れる試みがあります。週に1度は夜にチームの全員が集まれるようにするにはどうすればいいかとか、金曜日を『ノーミーティングデー』にしてみてはどうか、などと考える試みです。こうした取り組みはすべて、自分自身をよりうまくコントロールするのに役立ちます」
4. ミニサイズの「To-Doリスト」を使ってみる
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「1日の過ごし方の計画を立てることは、健康的な食事についての本を読むようなものです」とマーティンは述べる。
「例えば健康に関するサイエンス書を読む人は、健康になるための具体的なヒントが欲しくて読むわけですよね。これを日々の生活に当てはめてみるとどうでしょう。
そこで私は、こんなワークシートをお勧めしています。次の日に優先的に行うことトップ3と、それを達成するためにかかると予想される時間、そしてミニサイズのTo-Doリストで構成されたワークシートです。
このワークシートを埋めるのにかかる時間は10分以内。こうした小さなTo-Doリストを作っておくと、例えばミーティングが少し早く終わって時間が余ったときに、短い電話を1本かけたりメールを1本書いたりして、To-Doリストを消していくことができます。
To-Doリストを使っている人は多いのですが、サイズが適切でないと、急にスケジュールがいっぱいになったときにそのリストには結局手をつけられずに終わってしまうので要注意です」
5. アイゼンハワーの「緊急度×重要度」マトリックスを思い出す
(出所)Shana Lebowitz and Weng Cheong, "How to use a simple time-management trick invented by President Eisenhower to be more productive and less stressed at work" (Insider, November 11, 2020) をもとに編集部作成
「あるとき急に予定外のことが飛び込んできて、それに対処するだけでその日の残り時間が終わってしまうことがあります」とマーティンは指摘する。「『アイゼンハワーマトリックス』では緊急なものと重要なものを区別し、次のような問いを自分に投げかけて優先順位を決定します。
『これは緊急か?』『これは重要か?』
もし前者なら、その日の残りの時間がすべて吹き飛んでしまっても仕方ありません。
私が以前お会いした経営幹部に、いつも昼食後の午後1時から午後2時までの間を確保して、緊急の案件に対処するための時間に充てている人がいました。緊急の案件が何もなければ、その時間は自由時間として確保していました」
6. 一歩引いて全体像を見る
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「従業員を管理してパフォーマンスを評価しなければならない管理職ほど、マクロの視点でゴールを考え、他の管理職の人たちがこれまでしてこなかったような考え方をする必要があると思います。
部下がEメールをまったく送ってこない日もあれば、100通送ってくる日もあるでしょう。でもこういうとき、一歩下がって全体像を捉えなければ、日々のパフォーマンスを正確に評価することはできませんから」
(翻訳・渡邉ユカリ、編集・常盤亜由子)
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