スペインのフリマアプリ最大手に韓国NAVER(ネイバー)が出資。拡大するEC市場の動きから目が離せない。
Screenshot of Wallapop Appstore page
ソフトバンクとの共同出資でヤフーと旧LINEを傘下に置く韓国NAVER(ネイバー)は2月25日、スペインのフリマアプリ最大手「ワラポップ(Wallapop)」に1億1500万ユーロ(約147億円)を出資した。
フランス・パリを本拠とするVC、コレリアキャピタル(Korelya Capital)が主導する総額1億5700万ユーロ(約165億円)の資金調達ラウンドに最大出資者として参加した形だ。
NAVERは2016年、コレリアキャピタルなどが組成するファンド「K-Fund」1号に1億ユーロ(約128億円)を出資しており、今回のワラポップへの出資はそれを上回る、同社として過去最大規模の拠出となった。
スペインのフリマアプリ最大手
ワラポップの評価額は今回の資金調達を経て6億9000万ユーロ(約883億円)に達し、ユニコーン化が見えてきた。
ワラポップは2013年創業。現在、取扱高でスペインの中古品売買市場シェアの63%を占め、ユーザーは1500万人以上。ショッピングアプリ全体では同国内4位につける。衣服や家電、家具のほか、自動車やバイク、不動産まで取り引きされている。
2020年は春先こそ新型コロナの影響で大きな停滞を経験したものの、その後はむしろ外出自粛や移動制限を背景にユーザーを増やし、50%超の売上増を記録した。
また同社は最近、「Envios(エンビオス)」(=スペイン語で「発送」の意)と呼ばれる集荷・配送サービスをローンチさせた。国内だけでなく海外への発送も可能で、すでに取り扱い商品の2割程度がこのサービス経由で取り引きされているという(TechCrunch、2021年2月25日付)。
NAVERは2020年5月、欧州で首位、世界2位のラグジュアリーブランド専門フリマアプリ「ヴェスティエール・コレクティブ(Vestiaire Collective)」にも、コレリアキャピタルを通じて出資している。
NAVERの狙いは「欧州」、メルカリは「中国進出」
メルカリは3月1日、中国への「越境EC」進出を発表した。
Screenshot of Mercari website
ワラポップの国外向け配送サービス開始はグローバルトレンドに沿うもの。そこに積極的な出資を進めるNAVERの戦略も同様だ。新品・リセールを問わず、「越境EC」はコロナ禍で市場規模の拡大が加速している。
例えば、日本のフリマアプリ最大手メルカリは3月1日、中国EC最大手アリババグループの通販サイト「淘宝(タオバオ)」およびフリマアプリ「閑魚(シェンユー)」と連携し、メルカリに出品された日本の商品を中国のユーザーが購入できるようにすると発表した。
メルカリは2019年11月から代理購入サービス「バイイー(Buyee)」(※)と連携し、越境ECに進出。2020年8月には東南アジア最大の越境ECプラットフォーム「ショッピー(Shopee)」とも連携し、国外での販売インフラ強化を進めている。中国で始める越境ECも、バイイーとの連携の仕組みを活用する。
※代理購入サービス……海外のユーザーからメルカリ上の出品商品に注文が入ると、バイイーの公式アカウントがユーザーに代わって商品を購入。出品者はバイイーの日本拠点に商品を発送する。バイイーは商品の受け取り・検品、代金支払い、海外ユーザーへの配送までを一括して引き受ける。
日本のEC最大手・楽天はすでに2015年から、中国EC大手「京東商城(JD.com)」と連携して中国向けの越境EC拡大に取り組んでおり、これに続くメルカリは、セカンドハンド(中古品)にフォーカスして中国市場を狙う考えだ。
楽天が中国ECサイト大手「京東商城(JD.com)」に出店した旗艦店のページ。
Screenshot of JD.com website
経済産業省「令和元年度 内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(電子商取引に関する市場調査)」によれば、2019年の世界の越境EC市場規模は9123億ドル(約95兆8000万円)で、2027年にかけての年平均成長率は約27%とハイペースの成長が予測されている。
そうした世界の流れを踏まえると、NAVERのヴェスティエール、ワラポップへの出資は、伸びゆく越境EC市場のうち、「欧州をターゲットに」「セカンドハンド市場にフォーカス」した戦略上にあると考えていい。資源の再利用という意味では、昨今のサステナビリティ重視の流れにも合致している。
NAVERとLINEの両ブランドを柱に、韓国・日本・東南アジアという基盤市場で売上高を伸ばし、順調に影響力を拡大しつつあるなか、アメリカ・中国という苛烈な競争市場は避け、欧州やアフリカに勝機を見出そうというのがNAVERのグローバル戦略とみられる。
なお、NAVERは2020年、ヴェスティエールのほかにも同じくパリを拠点とする音響機器メーカーの「デビアレ(Devialet)」、採用ソリューションの「ジョブティーザー(JobTeaser)」など欧州企業に集中的な出資を行っている。
(文:川村力)