「製品のファンはいても、会社のファンがいない」。成功企業は「共感」をどう生み出している?【音声付・入山章栄】

今週も、早稲田大学ビジネススクールの入山章栄先生が経営理論を思考の軸にしてイシューを語ります。参考にするのは先生の著書『世界標準の経営理論』。ただし、本連載はこの本がなくても、平易に読み通せます。

いま多くのBtoC企業が「自社製品のファンはいても、会社そのもののファンがいない」という点に頭を悩ませています。ユーザーがファン化する企業とそうでない企業にはどんな違いがあるのでしょうか? 今週も入山先生が独自視点で考察します。

【音声版の試聴はこちら】(再生時間:6分32秒)※クリックすると音声が流れます


「製品のファンはいても、会社そのもののファンがいない」

こんにちは、入山章栄です。

今回はいつもこの連載をまとめてくれている、ライターの長山清子さんからの質問について考えてみましょう。


ライター・長山

ライター・長山

もう20年以上、某男性アイドルグループを応援している知人がいます。彼女はいわゆる「推し」のためなら、どんな出費も惜しまないし、たぶん彼らが引退するまでファンであることをやめないでしょう。

もしも一般企業が、こんなファンをつかめたら最強ですよね。「こうすれば顧客をファンにできる」という経営理論はありませんか?


そういう「ファンづくり」に特化した経営理論はありませんが、強いて言えば、この連載にもよく出てくる「センスメイキング理論」や、野中郁次郎先生の「SECIモデル」などが近いと思います。

「顧客をファンにする」のは、経営の重要なポイントだと僕も思います。そして、その際のキーワードは、「共感」と「エンゲージメント」です。この2つの視点は、いま多くの民間企業の課題となっています。

実際、僕はいろいろなBtoC企業のマーケティングや広報の方とお話しする機会がありますが、彼らがいま一番悩んでいることの一つは、「自社製品のファンはいても、会社そのもののファンがいない」ということです。

例えば思いついた社名を挙げると(この会社がそうだということではありません)、花王やP&Gのような消費財メーカーには、ロングセラー商品がたくさんありますよね。P&Gなら消臭剤のファブリーズ、花王なら洗剤のアタックなど。アタックは汚れがよく落ちるというユーザーの声もよく耳にしますから、「我が家では洗剤はいつもアタック」と決めている人も多いと思います。アタックという商品のファンになっているわけです。

ではアタックの発売元である、花王についてはどうでしょう。花王の方にはたいへん申し訳ありませんが、「私は花王が好きで好きで仕方がない」という「花王ファン」は、僕の周りにはいません。「アタック」という商品のファンに比べると多くないのではないでしょうか。

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