Edward Berthelot/Getty Images
- ウォーキングシューズがミレニアル世代やZ世代の若者の間で人気となっていると、ウォール・ストリート・ジャーナルが報じた。
- ミレニアル世代は見た目より機能を重視することで、フットウェアをステータス・シンボルとして再定義した。
- ウォーキングシューズは在宅勤務時代ならではの「アグリーファッション」の最新の進化系だ。
ウォーキングシューズがミレニアル世代とZ世代の足の裏で新しい生活を手に入れている。
キーン(Keen)の「ユニーク」からメレル(Merrell)の「ジャングル・モック」まで、20代や30代の若者たちは「引退して家にいる世代から拝借できる」あらゆるフットウェアを取り入れようとしていると、ウォール・ストリート・ジャーナルが報じた。
このトレンドは、在宅勤務が広まる中で見た目より心地良さを求める傾向から生まれたと、同紙は指摘している。
インスタグラムで「Obscure Sneakers」のアカウントを運用しているステファノ・ググリオッタさん(29)は「皆、もう少し寛ぎたいんです」と同紙に語った。
「人々が今、引き付けられているのは実用性なのだと思います」
フットウェアは、"在宅勤務経済"が変えた最新の小売部門の1つに過ぎない。"在宅勤務経済"はすでにタイダイの復活やデイガウン人気、ランジェリー部門の復興に貢献している。2020年12月には、UBSとバンク・オブ・アメリカがそれぞれフットウェアを手掛けるナイキ(Nike)の売り上げがコロナ禍で伸びていると指摘した。バンク・オブ・アメリカによると、ナイキのウェブサイトへのアクセス数は第1四半期に36%、第2四半期に40%伸びたという。
12月の決算発表でナイキは、コロナ禍でデジタル、アスレチックウェア、健康/ウェルネスへの永続的な転換を目の当たりにしていると述べた。また、バンク・オブ・アメリカは、こうしたトレンドがコロナ禍で"1人で過ごす余暇"が支配的になるだろうとの見方とも合致すると指摘した。
ただ、スニーカーにあまりのめり込んでいない若者の中には、もっと"主流でないもの"を求める人々もいる。"究極の普通"とも言われる、他のトレンドを受け入れないファッション・トレンド「ノームコア」をルーツとするウォーキングシューズは、スニーカー市場が飽和状態にある中、若い世代の間でも比較的珍しいものとして魅力的に映っているとウォール・ストリート・ジャーナルは伝えた。高価なスニーカーより手に入れやすいことも手伝っている。エアジョーダンが高いもので235ドル(約2万5000円)するのに対し、メレルのジャングル・モックは平均して85ドルほどだ。
ミレニアル世代がフットウェアをステータス・シンボルとして再定義するのは、これが初めてではない。
履き心地の良い「アグリー」シューズの魅力
フットウェアは長きにわたってステータス・シンボルとして使われてきたが、ミレニアル世代とZ世代が見た目よりも機能を重視するようになったことで、その象徴化はさらに進んだ。どちらの世代もより着心地が良く、実用的な服を志向し、皮肉として不細工に装う「アグリーファッション」に貢献してきた。
「クールでないブランドこそが、ミレニアル世代やZ世代にとっては好きになったり、見出したり、身に着けたりするのに理想的なのです。なぜなら、努力しているようには見せずに周りとは違っていたいという、まさに若い世代が強く望むものを意味しているからです」と、Center for Generational Kineticsのミレニアル世代やZ世代の専門家ジェイソン・ドーシー(Jason Dorsey)氏は2015年、Insiderに語っていた。
「"これが最新"と言ってここ1カ月、ソーシャルメディアの至る所で人気になっているものを着るのは簡単ですが、それとは違う方向で、意外性のあるブランドを見つけるのは断然難しいのです」とドーシー氏は付け加えた。
ビルケンシュトックやL.L.Beanのブーツはここ5年ほど、その実用性がクールだとして若者の人気を集めている。2019年までに、同じことがNo. 6のクロッグシューズにも言えた。フラットブッシュ・アベニューをベビーカーを押しながら歩くブルックリンの母親たちに愛されたこの靴は、雑誌『Vogue』などで「アグリー・シックな靴のブーム」と言われた。
見た目よりも心地良さを重視するトレンドはまさに、この年のミレニアル世代やZ世代を中心としたスポーツ・レジャー・フットウェア人気を押し上げた大きな要因だ。NPDグループのファッション・フットウェア/アクセサリーのアナリスト、ベス・ゴールドスタイン(Beth Goldstein)氏は2019年、このトレンドは若い世代がどう働き、どう生活しているかを大きく反映したものだとInsiderに語っている。
「カジュアルで心地良いライフスタイルが当たり前になって、これが消費者のフットウェアやアパレルの選択に反映されるのをわたしたちは目の当たりにしています」
「そして、場合によっては、スニーカーは新たなステータス・アイテムなのです」
こうした需要は次第にスニーカーの価格を上げた。そして高価なスニーカーは、パンデミック前のシリコンバレーの職場やファッション業界で権力、無頓着、創造力の象徴としてスーツといったワードローブに取って代わった。ただ、当時のテック企業のCEOは、バレンシアガの900ドルのスニーカー「Triple S」 —— アグリーファッションのもう1つの定番 —— よりもランバン(Lanvin)の500ドル超のロートップスニーカーを好んでいたかもしれない。
しかし、どんなステータス・シンボルもいつかは人気が下がり、新しいものが台頭してくる。コロナ禍では、それがウォーキングシューズなのだ。
[原文:Your grandpa's walking shoes are the latest millennial and Gen Z status symbol]
(翻訳、編集:山口佳美)