3月1日に採用説明会が解禁になり、民間企業の就活が本格化している。
撮影:横山耕太郎
志望者の減少が続いていた公務員だが、コロナ禍で一転、人気が高まっている。就活生を対象にマイナビが実施したアンケート調査によると、ここ数年は公務員を志望する就活生は減少傾向にあったが、2022年卒(現在の大学3年生)では増加に転じた。
公務員人気にはコロナ禍が影響しており、就活生の約3割が「コロナ前と比べて公務員への志望度が高まった」と回答した。
公務員の中でも地方公務員の志望者が増えており、市区町村の公務員の人気が一気に高まっている。
「公務員離れ」がストップ
公務員志望は減少傾向にあった。2020年卒で増えているのは、調査方法が異なるため。
出典:マイナビ2022年卒公務員イメージ調査
アンケート調査は2021年1月18日から2月8日に実施。就活サイト「マイナビ2022」に登録している就活生が対象で、計3081人の就活生がオンラインで回答した。
「公務員を就職先の選択肢として考えたことがあるか」という質問では、「考えている」と答えた公務員志望の就活生は減少傾向が続いていた。
2018年卒の就活生では、「公務員を考えている」との回答は28.7%だったが、2021年卒では21.2%にまで減少。ここ4年で7ポイント以上減っていた。民間企業が積極的に採用するなかで「公務員離れ」が進んでいたことが分かる。
しかし2022年卒では傾向が変化。「公務員を考えている」就活生は増加に転じ、2021年に比べ2ポイント増の23.3%となった。
公務員志望の5割が「志望度上がった」
公務員を志望していなかった就活生を含めても、コロナ禍で公務員への志望度が高まった。
出典:マイナビ2022年卒公務員イメージ調査
公務員人気の背景には、コロナが強く影響している。
「公務員志望度はコロナ前と比べて変化したか」という質問では、「公務員を考えている」と回答した人の50.2%が「志望度が上がった」と回答。
公務員を志望していない就活生などを含めた全体でみても、「コロナ前と比べて公務員の志望度が高くなった」とした就活生は32.4%で、約3人に1人の割合だった。
67%が「市町村の公務員」志望
同じ公務員でも、国家公務員と地方公務員では傾向が異なる。
出典:マイナビ2022年卒公務員イメージ調査
同じ公務員でも、一気に志望者が増えたのが、市区町村など小さな自治体に勤務する地方公務員。
公務員を考えているとした就活生に「志望している公務員」の種類を複数回答で求めたところ、地方公務員(市区町村)が最多で67.0%。2021年卒の59.9%に比べ大幅に増加した。
同様に地方公務員(都道府県庁)も増加傾向にあり、2022年卒は半数を超え52.1%だった。
一方で、国家公務員(総合職)は低迷している。国家公務員(総合職)を志望していると回答した2022年卒の就活生は17.8%で、2021年卒に比べ2.8ポイント低下した。
「国家公務員はきつそう」6割超え
霞が関の官僚は長時間労働が常態化している。2021年1月12日、夜10時に霞が関で撮影。
撮影:今村拓馬
「国家公務員離れ」については、長時間労働と激務が問題視されていることが背景にある。
アンケートで国家公務員(総合職)へのイメージを聞いたところ、「労働環境がきつそう」と答えた就活生は、前年より6.4ポイントも急増。6割を超えた。
一方で、人気が高まっている地方公務員(市区町村)へのイメージについては、「労働環境がきつそう」と答えたのは33.0%だけだった。
調査を行ったマイナビの担当者は、「国家公務員は労働環境の改善提言が提出されたという報道もあり、イメージを落とす結果となった」としている。
コロナで地元志向強まる?
出典:マイナビ2022年卒公務員イメージ調査
公務員を考える理由も、コロナの影響を受けている。
「公務員を考えている」と回答した就活生に、その理由を複数回答で聞いたところ、最も多かったのは「安定している」で67.2%。「休日や福利厚生が充実している」が40.5%と続いた。
志望理由のうち、2021年卒に比べて2022年卒で最も増えたのは、「地域に密着した仕事ができる」(2.4ポイント増の33.2%)だった。コロナで地元志向が高まっている傾向がうかがえる。
また「公務員志望に影響を与えた人物」については、「父親・母親」が最も多く、前年より1.2ポイント増えて48.1%だった。
マイナビの担当者は、「公務員志望者は身内や友人の影響を多く受けている。緊急事態宣言により外出自粛を余儀なくされるなか、地元とのつながりを意識する就活生が増え、公務員の志望度が高まったと推定される」と分析している。
(文・横山耕太郎)