食品大手ハウスの新参入「キッチンカー」プラットフォームweldiは飲食店を救うか?

「スペインクラブ」キッチンカー

新宿西口エリアに設置された「weldi」のキッチンカー。3月3日の体験会当日はスペイン料理の「スペインクラブ」が出店していた。

撮影:小山安博

ハウス食品グループ本社(以下、ハウス)は3月3日、新規事業としてキッチンカーのプラットフォーム事業への参入を発表した。キッチンカーのレンタル、販売場所の確保、必要であれば仕込みの場所までもをトータルで提供する仕組みだ。

正式名称「街角ステージ weldi」として、すでにサービスを開始している。2022年3月には月間売上高500万円、10年間で年商8億円を目指す考えだ。

どんなビジネスなのか?

コロナ下でキッチンカー需要増か

いま飲食店の多くは、新型コロナの影響の直撃を受けて苦境の中にある。

ハウスの新規事業開発部でweldiを担当する渡邉裕大氏によると、都内近郊の飲食店は、コロナ禍以前の2017年ごろから倒産件数の増加、生産労働人口の減少に伴う働き手不足、東京23区の家賃相場上昇といった厳しい状況にあったという。

加えて、コロナの流行によって、オフィス街からも人が激減した。こうした状況に対して「ハウスは食に関わる総合企業として、飲食業界の活性化に繋がる事業を行うのが使命だと考えた」(渡邉氏)。

ハウスの新規事業部は、これまでも「涙の出ないタマネギ」の販売を事業化するなどの実績がある。

weldiは2019年9月からマーケットの調査検証を開始。平日ランチ時間のみながら都内8カ所にキッチンカーを設置し、46の飲食事業者が3万5000食を販売。これによって事業化のめどが立った。

渡邉氏によると、飲食各店がテイクアウトやデリバリー対応するなどの生き残り策を講じるなかで、キッチンカーへの問い合わせはむしろ増しているという。

実際に、調査検証の声かけした飲食店のなかには、一度は見送りになった飲食店から、コロナ後に問い合わせが来た例もある。「お店のある場所の人通りが減る」ことは、それほど深刻だ。

渡邉裕大氏

ハウス食品グループ本社の新規事業開発部・渡邉裕大氏

撮影:小山安博

weldiの特徴は、

  • キッチンカー、設置場所、仕込み場所を全てハウスが用意
  • 多額の初期費用をかけずにキッチンカーの営業を開始できる

という点にある。

お店側としてかかるコストは、次のようなものになっている。

※以下の数字は体験会場でのヒアリングによるもの

weldiの利用コスト

weldiのサービス開始にあたっては、新型コロナの影響でオフィス街の人流が減ったため、設置エリアの再検討も進めた。従来のオフィス街に加えて、「居住者と就業者が混在する場所」(渡邉氏)もターゲットに加えた。リモートワークなどで自宅にいる人のランチとしての利用も考慮した形だ。

その結果、本サービスとしては新宿、青山一丁目、馬喰横山、大手町の4カ所に出店スペースを確保。当初は10事業者ほどが平日11時30分から14時のランチ時間に出店する。

これまでも、キッチンカーを所有する人に対して、設置場所や開業支援を提供するMellowのようなサービスもあった。渡邉氏によると、weldiはキッチンカーを持たない店舗などでも「最短2週間」でスタートできるのが強みだという。

また専門的な話になるが、キッチンカーに必須の「仕込み場所」(自店舗など営業許可をとった施設)がない場合も、営業許可を取得した仕込み場所をハウスが用意するため、実店舗がない事業者にも広げることができるという。

weldiに参加するスペイン料理店の声

村頭達博社長

スペインクラブの村頭達博社長。

撮影:小山安博

スペイン料理店などを運営するスペインクラブは、検証期間からweldiに参加していて、本サービス後も利用を継続した飲食店だ。スペインクラブの村頭達博社長は、キッチンカーによる「広告宣伝効果」にも期待していると言う。

スペインクラブではこれまでもイベントや催事場への出店などをしてきており、もともと「キッチンカーが欲しかった」(村頭社長)そうだ。ただ、初期費用や維持費が多額になるため二の足を踏んでいたところにweldiの提案を受け、参加を決めた。

メニュー

キッチンカーで提供するメニュー。

撮影:小山安博


キッチンカーで提供するメニューは、これまでのイベントなどで慣れていたことでスムーズに進んだ。毎回場所を変えて販売するため、「同じ場所では連日営業しないことから、毎日メニューを変える必要がない」こともメリットだという。

弁当にはレストランの宣伝チラシも同封することで、本業への誘導も大きな目的だと村頭社長。弁当で料理を気に入った人が少しでも来店してくれることを期待しているそうだ。

弁当

なかなかボリュームもあるスペインクラブの弁当。シーフードパエリア。お店にとっては痛し痒しだが、非常に手頃な価格でお店の味を楽しめるのは、率直に満足感が高い。「お店の味を割安に、すぐ食べられる」のもキッチンカーの魅力の1つかもしれない。

撮影:小山安博

キッチンカー_前面

スペインクラブではキャッシュレス決済もサポートするが、決済手段は店舗側に任されている。ハウスでは、事前オーダーなどのシステムも検討するそうだ。

撮影:小山安博

ハウス側では、出店前や出店後も、メニューや営業の支援は行うが、コンサルティングまではせず、基本的には店舗側の営業努力に任せる方針。また、ハウスの商品を使うなどの制約もない。

キッチンカーは現時点で5台だが、2022年3月までには15台まで拡大予定。今後10年以内に180台まで拡大したいと渡邉氏。基本的には東京23区内がターゲットで、このエリア内でもまだ十分にチャンスがあると見る。それだけ、都内にはキッチンカーが設置できる遊休地が多いという。

(文・小山安博

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