カリフォルニア州ストックトンのベーシックインカム受給者は、デビットカードで毎月の給付金を受け取っていた。
Rich Pedroncelli/AP Photo
- カリフォルニア州ストックトンでは、125人の居住者が2年間、使途自由の月額500ドルを受け取った。
- 初年度の調査の結果、お金の大部分が食品と日用品に向けられたことが分かった。
- アルコールまたはタバコに費やされた金額は1%未満だった。
カリフォルニア州ストックトンの125人の住民は、市から毎月500ドル(約5万4000円)が2年間にわたり、プリペイド式デビットカードへ支給された。彼らはそれを好きなように使うことができた。
ストックトン経済強化デモンストレーション(SEED)として知られるこのプログラムに参加するには、世帯収入の中央値が約4万6000ドル(約500万円)と同じか、それ以下の地域に住んでいることが条件だった。
第三者の研究者のチームによる新たな報告書が公開され、参加者がプログラムの初年度にどのようにお金を使ったかが明らかになった。それによると、SEEDの給付金の37%は食料品に使われ、22%はウォルマートや1ドルショップなどでの商品購入に使われた。その他、11%は公共料金に、10%は自動車関連の費用に充てられた。
この調査結果は、無条件に配られる現金が人々に不必要な買い物をさせたり、薬物やアルコールのような不健康な商品を購入させたりするという、ベーシックインカム・プログラムへのよくある批判を覆すものだ。
給与金のうち、アルコールやタバコに費やされた金額は1%に満たない。
6人の母親であるメッキーさんは、ストックトンのベーシックインカム受給者の1人だ(プライバシー保護のため、このプログラムでは参加者の姓は明かされない)。彼女はお金を、家賃や車の代金、子どもたちに使ったという。
彼女は報告書で「息子がフットボールのキャンプに行きたがっていました。私はそのお金を払うことができました」と語っている。
「彼のために新しい靴を買うこともできた。そして彼が陸上の大会で街を出るときには、お腹が減らないようにお金を渡すことができました」
参加者は友人や家族からの借金をすることがなくなった
このベーシックインカム・プログラムが導入される前、受給対象者の中には、毎月の食費が足りないと訴える人がいた。毎月のフードスタンプ(低所得者に支給される食料を買うための金券)では足りない人や、食費を賄うのに十分な労働時間を確保できない人もいた。そのため、参加者はしばしば家族や友人から食費を借りていたことが、報告書で明らかになっている。
しかし、プログラム開始後、参加者たちは毎月500ドルを得て、家計を賄うことができていると定期的に報告していた。
参加者の中には、家族を金銭的に援助する人もいた。参加者の1人、サラさんは、自分の給付金を使って、義理の娘の自動車保険の支払いをしたり、兄弟が子どものために学校の服を買うのを援助したりしたと話した。
ストックトンのベーシックインカム・プログラムの参加者、スージーさんは、給付金の一部を犬の手術の料金に使った。
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研究者たちは「月500ドルでたった1世帯の食料安全保障を確保するだけで、普段彼らが借りている人たちの食料安全保障にまで影響を与えた」と結論づけた。
ストックトンのベーシックインカム実験は、2019年2月から2021年1月まで行われたが、今回の報告書は、初年度分の支出だけを分析した。プログラムの先頭に立ったストックトンの元市長、マイケル・タブス(Michael Tubbs)は、現金の支給が住民に対し、パンデミックの間に食料品や光熱費を賄う余裕をもたらしたと考えていると述べた。
「私はその調査結果に興奮している」と彼はInsiderに語った。
「しかし、ベーシックインカムが与えられなかった、我々のコミュニティの残り30万人のことを思うと、今もまだ心が痛い」
(翻訳、編集:Toshihiko Inoue)