Irwin Wong
- 労働時間の長さは世界有数。日本の労働環境の過酷さはよく知られる。
- 「シナモンAI」(本社:東京)の共同創業者・CEO平野未来(ひらの・みく)氏。テクノロジー活用で、時間を要する単純作業の削減を目指す。
- テクノロジー界を刷新するレノボのThinkPad X1 Fold。その発売を記念し、業界に変革をもたらす平野氏のような「イノベーションのプロフェッショナルたち」にスポットを当てる。
- ThinkPad X1 Foldに関する詳細は、こちらから
過重労働は決して日本だけの問題ではない。だが、従業員が会社で極度に長い時間を過ごす文化は世界によく知られる。2015年、日本の大手企業で若手社員が自ら命を絶った。この事件が大きく報じられたのも、自死の原因が過労によるストレスだったからだ。
当時妊娠中だった「シナモンAI」代表取締役社長CEOの平野未来氏は、このニュースに強い衝撃を受けた。そして、自身の仕事に新たな意義を見出した。その4年前に自らの会社を設立していたが、「人間がより創造的に働けるような世界を実現するため、AI技術を活用する」ことにテーマを変換したのだった。
「こうした働き方は決してあってはならない。次世代のために今の状況を変えるのは私たちの世代の責務です」と平野氏。
「私が今この仕事をしているのも、自分の子どもたち世代のため。彼らが社会に出たときに、このような働き方をしてほしくありませんから」
「多くの人々は、1日の就労時間の大半を反復作業に費やしている」。ゆえにAIを活用すれば、こうした時間を大幅に短縮できるという。まさしくそれこそが、シナモンAIの目指すゴールだ。
「理想は1日3〜4時間の労働です」とは言うものの、向き合うテーマは複雑で、自身の労働時間はそれよりずっと長い。通常、彼女は午前8時から午後5時半まで働き、晩は家族とともに過ごす。だがその後11時ごろまで、1〜2時間仕事をすることも時にある。
レノボは平野氏のように多忙な日々を過ごすクリエイティブな人々を想定し、新製品「ThinkPad X1 Fold」を開発した。
「手頃な大きさでコンパクトに折りたためるので、出先での仕事に最適。これまでのノートパソコンは大き過ぎてお気に入りの鞄に入らなかったのですが、今はまたその鞄が使えるようになりました。外で持ち歩くのにも、家で仕事をするのにも理想的です」
「特に実用的なのは、キーボードが取り外せること」。顧客と電話で話をするとき、彼女は大概パソコンでメモを取る。しかしキーボードを叩く音が煩わしいといつも感じていた。だがThinkPad X1 Foldならばキーボードを取り外し、少し離したところで打つことができる。「おかげで、タイピングの騒音というストレスから解放されました」。ソファーに座って使うときには、画面を半分折りたたむことも可能。「とても気に入っています」
Irwin Wong
生産性向上を目指して
労働時間の劇的な短縮を実現するには、単調な作業をなくすだけでなく、効率的なナレッジマネジメント(知識管理)も求められる。
「この20年間、(労働時間短縮のための)試行錯誤が繰り返されてきましたが、うまく機能しませんでした」
人間をAIに適応させるのはあまりにも不自然だからだ。そのため「AIが人間に適応できるよう、進化するべきなのです」。そのためにシナモンAIが注力するのが、電子メールやボイスメッセージ、動画、手書き書類といった構造化されていないデータの解析。平野氏の推定では、一般企業が保管するデータの8割はこれに相当するという。それらを有効活用するには「デジタル化」「認知」「理解」という3段階のプロセスを踏む。
「デジタル変革の加速化は、このプロセスが鍵になる」
課題の一つが、日本にAIリサーチャーが足りないことだ。平野氏の試算によると現在国内にいるリサーチャーの総数は400人ほどで、その半分が研究生活を送っているという。日本国内でのリサーチャー不足をを補うため、彼女はベトナムと台湾にAIの研究所を設立した。この両国には、数学やコンピューターサイエンスを学んだ極めてスキルの高い、時には「天才」と言えるような人材が数多く眠っている。
彼女自身もコンピューターサイエンスを専攻していた。AIに初めて興味を持ったのは15年ほど前。オンラインで情報を収集しているときに、その潜在力に気がついた。
「AIは決して完璧なものにはならないでしょうが、サポートを必要とする人々からの需要は今後もなくならない」
すでに多くの企業がAIの導入で大規模なコスト削減を実現。その結果、人々の生活に大きな変化をもたらしている。
一例が、アニメーションの制作現場だ。シナモンAIの開発したテクノロジーで、アニメーターが何千というイメージの色づけ作業から解放され、生産性は10倍になった。また銀行では、弁護士が担う投資契約の精査と論点の要約( 通常は1週間以上かかる)がわずか30分に。今でも弁護士は全体のプロセスを見るが、単調な作業から解放され「より重要な仕事に注力できるようになったのです」。
未来を見据えて
「優先課題は、金融や保険といった古い歴史を持つ業界をアップグレードすること」という平野氏。
「こうした業界の企業は、今も改革に関する意思決定プロセスが遅い。それでも聞く耳を持つ人が増えてきていると感じます」
将来、自身の業界で核となるビジョンは「民主主義的思考」。思い描くのは誰もが迅速に (かつ手頃な料金で)弁護士から法的アドバイスを受けられるような世界だ。つまり、AIが弁護士などの職業の概念を一新することにある。
個人的には、仕事や育児で忙殺されていた4年間に縁遠くなってしまった友人や知人たちとの交流を最近になって再開した。個人として、またビジネスパーソンとして成長するためにこうした時間の使い方は鍵になるという。
「これまで数年間、ほぼインプットがない状態で心がすっかり乾いてしまった。新しいアイデアも十分に出せないと感じていたのです。今はゆとりを持って予定を立て、仕事とはまったく関係のない人たちと会っています。自分の人生にとって欠かせない要素だと気づきました」
1日4時間労働の実現はまだ先だ。だが「インプット」を絶やさず、目標に向けて平野氏が努力を続ける限り、いつか現実のものとなるに違いない。
ThinkPad X1 Foldで、レノボは様々な業界にどのような変革をもたらしているのだろう。詳しくはこちらから
(広告制作:Insider Studios、レノボ)