LINE Fukuokaを含む9社の事業体「Fukuoka Smart City Community」は福岡みんなで防災プロジェクトを発表した。
出典:Fukuoka Smart City Community
LINEの子会社・LINE Fukuokaは、2011年3月11日の東日本大震災や2005年3月20日の福岡県西方沖地震に合わせて、福岡市LINE公式アカウントの防災・減災機能を発表した。
インフラ・鉄道の緊急情報をLINEからアクセスできる
福岡市LINE公式アカウントで「防災情報」をタップすると専用メニューが表示される。
撮影:小林優多郎
追加された機能は、同社とその協力各社が「2タップでできる防災」とうたうもの。福岡市LINE公式アカウントのトップメニューから防災情報をタップ、チャット上に表示される「交通・インフラ情報」を選択すると、知りたい交通やインフラ系の情報を得ることができる。
社名とロゴとともにアクセスしたい情報を選べるため、わかりやすい。以前から類似の機能はあったが、今回のアップデートで2タップ程度でアクセスできるようになった。
撮影:小林優多郎
確認できるのは、九州電力送配電、西部ガス、福岡市水道局、九州旅客鉄道(JR九州)、西日本鉄道、福岡市地下鉄などのデータ。各事業者の停止状況などが分かるページに一発でアクセスできる。
ページの各情報は従来から各事業者が個別に公開しているもの。ポイントはそれらの情報が福岡市LINE公式アカウントをハブとしてアクセスできるようになる点だ。
福岡市LINE公式アカウントは、平常時・災害時・復旧時を含めた機能を提供している。
出典:LINE Fukuoka
福岡市LINE公式アカウントは、粗大ゴミ収集の申込や引っ越し手続きのオンライン予約サービスなどの一部の行政手続き、道路や河川などの不具合通報なども可能な“スマートシティー仕様”になっている。
その人気は175万8990人(3月9日時点)という、約160万人(2020年9月1日時点)という福岡市の人口よりも多いユーザー数(ブロックしている人も含む)からも分かる。
生活のインフラとなっているアカウントに、普段はアクセスしないが非常時には重要となる情報の入口をまとめることで、防災・減災につなげようというわけだ。
防災機能も含めてソースを他の自治体にも無償提供
3月9日のプロジェクト発表時に登壇したFukuoka Smart City Communityに所属する4社とオブザーバーの福岡市担当者。
出典:LINE Fukuoka
とはいえ、こういった取り組みを聞くと福岡市という限られたエリアだけの話に思える。
実際、ここまでのユーザー数がいる自治体のアカウントはほかに類はなく、防災・減災に関する情報がまとめられたのも、LINE Fukuokaが発起人として2020年10月に立ち上がった異業種事業体「Fukuoka Smart City Community」という地盤があったからだ。
では、このような取り組みは福岡市以外では発生しないのか。そのカギとなるのが「LINE SMART CITY GovTech プログラム」だ。
LINE SMART CITY GovTechプログラムにより、ほかの自治体も同様の機能の導入・実装が可能(画像や内容は2020年12月15日時点のもの)。
出典:LINE Fukuoka
同プログラムは、福岡市LINE公式アカウントをモデルにした基本機能を、ソースコードとして自治体に対し無料提供するというもの。この取り組みは2020年10月12日にリリースされたものだが、LINE Fukuokaによると今回の防災・減災機能の一部も反映される方針だという。
何かしらの災害にあったとき、スマートフォンが使えるかどうか、用意していたシステムが正常に動くかどうかは分からない。しかし、生死を分ける重要情報へのアクセス経路を知ること、素早くアクセスできるようにすることは無駄にならない。
こういった取り組みが住民にとって親しみやすい形で広がっていくか、今後も注目したい。
(文・小林優多郎)