アメリカでは多世代住宅の購入が増加している。
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- 2020年、アメリカの住宅購入者の15%が多世代住宅を購入し、過去9年間で最高となった。
- この背景には、高齢化した親と成人した子が同居することで住居費を削減しようという意図がある。
- こうした同居の増加は、グレート・リセッションの際にも見られ、今回の新型コロナウイルスによる不況でも繰り返されている。
アメリカの家庭は、大家族になりつつある。
全米リアルター協会(NAR)の新たな調査報告書によると、2020年の4月から6月にかけて、住宅購入者の15%が多世代住宅を購入した。グレートリセッションの不況時に同居する家族が増えたことを受け、NARは2012年から統計を取り始めた。2020年の多世代住宅購入率は、統計開始以来、最も高い数値となった。
多世代住宅購入率は、2012年には14%だったが、その後減少傾向となり、11%まで低下した。それが15%まで上昇したのはパンデミックの影響だとNARは分析している。
新型コロナウイルスに対する不安や、孤独感、育児の支援が必要とされていることなどによって、高齢の親は子どもと同居するようになっている。収入の減少や給与の減額のため、多世代で同居することで生活費を抑えようとするケースもある。
報告書によると、成人した子どもが実家に戻る「ブーメラン現象」は、同居の増加とはあまり強い関連性はないという。ピュー研究所(Pew Research Center)が国勢調査のデータを分析した結果、18歳から29歳までの若年層の半数以上(52%)が実家に住んでいることがわかったとNARは報告書に記している。彼らの実家には、もともと彼らの部屋があった可能性が高く、新たに広い家を買う必要がないからだ。
グレートリセッションで起こった現象の再来
多世代住宅の購入が増加することで、アメリカの平均世帯人数も増加すると考えられる。
アメリカの国勢調査によると1世帯あたりの人数の平均は、1790年に5.79人、1850年に5.55人、2010年に2.58人と、160年以上にわたって減少してきたが、2018年には2.63人と増加したことが、ピュー研究所の分析によって明らかになった。この傾向は、35歳以上の成人世帯で最も顕著だった。
同研究所のリチャード・フライ(Richard Fry)研究員によると、平均世帯人数の減少は、女性が一生の間に産む子どもの数の減少し、大家族での生活が減ったことと相関していたという。一方で最近の増加は、多世代世帯の増加などの要因によるものだろうとフライは述べている。多世代で暮らすアメリカ人の数は、1980年の12%から2016年には20%に増加した。
また、世界金融危機による不況の影響で、ルームメイトや親世帯と同居するアメリカ人も増えたとフライは付け加えた。このような世帯の割合は、2007年の17%から2019年には20%に増加したという。
この同居の増加という現象は、新型コロナウイルスの不況が原因で、グレートリセッションの際の変化が繰り返されているように見えるが、今回のシフトは恒久的なものかもしれないと、NARは述べている。それは、在宅勤務とK字型回復の組み合わせからくるもので、経済的に厳しい状況にある人がリソースを共有することで助け合うということだ。また、リモート学習をしている子どもの世話を見てくれる人がいれば助かるという事情もあるだろう。
(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)