楽天と日本郵政は資本業務提携を発表。両社が強みとするオフライン・オンラインの資産をかけ合わせる。
画像:楽天・日本郵政会見よりスクリーンショット
楽天と日本郵政、日本郵便は3月12日、資本業務提携を発表した。
日本郵政から楽天への第三者割当増資による出資額は1499億9900万円。払込日は3月29日で、これによる楽天株式内での日本郵政の出資比率は8.32%となる。
また、楽天からは役員クラスのDX(デジタルトランスフォーメーション)人材を1名、日本郵政へ派遣(転籍)する方針。
楽天と日本郵便は2020年12月24日に物流領域における業務提携を発表したが、今回の発表は資本提携および提携領域を拡大するなど、両社の関係がさらに近いものとなる。
両社がもつそれぞれの強み。
画像:楽天・日本郵政会見よりスクリーンショット
3月12日に発表された業務提携の領域と内容は以下の通り。
- 物流:共同の物流拠点、配送システム、受け取りサービスの構築。両社のデータの共有化。物流DXプラットフォームの共同事業化。ゆうパックの利用拡大など
- モバイル:郵便局内スペースを使った楽天モバイルの申込みカウンター設置、マーケティング施策の実施。郵便局屋上を利用した基地局の設置(すでに400局が設置済み)
- DX:楽天から日本郵政へのDX人材の派遣。日本郵政のDX推進への協力
- 金融:キャッシュレス・ペイメント分野、保険分野などでの協業
- Eコマース(EC):物販分野(おもに地方創生関連)での協業
いずれの領域においても、具体的な事業内容やサービスなどは語られなかった。とくに、金融とEC領域について日本郵政の増田寬也社長は「4月に発表できるようにまとめていきたい」と名言を避けている。
日本郵政は金融・DX問題にメス、楽天は投資分野に追い風
詳細はまだ不明だが、フィンテック領域は日本郵政にとっての重要な意味を持つ。
画像:楽天・日本郵政会見よりスクリーンショット
日本郵政はグループ内で、かんぽ生命の不適切販売問題やゆうちょ銀行の不正利用問題など、近年キャッシュレスや保険などの金融分野において大きな汚点を残してきた。
発表された提携内容を見ると、それらを抜本的に解決するための提携というようにも見える。実際、増田社長は提携会見で「(自社の)金融アプリについても使い勝手が遅れている。金融についてのDXを進めていくためにも、より信頼関係を強固にしていきたいと考えている」と述べている。
楽天の三木谷浩史会長。
出典:楽天
また、楽天側から見ても日本郵政は昨今投資を続けている物流分野での強力なパートナーとなりうる。また、同じく投資を続けているモバイル領域でも、販促活動の拠点や基地局設置として連携できることから、旨味は大きいだろう。
会見でソーシャルディスタンスを保ちながら手を合わせる三木谷氏と増田氏。
出典:楽天
楽天の三木谷会長は、今回の資本業務提携について「創業以来の大型の出資を受け入れるのは我々にとって初」「ダイリューション(発行株式の希薄化)が起きるが、それを上回る戦略的なシナジーがある」と語り、日本郵政が持つオフラインのネットワークや資産と、楽天が持つオンラインのサービスや会員基盤が生み出す相乗効果に期待を示した。
(文・小林優多郎)