【NTT接待問題】ドコモ子会社化、携帯料金値下げは「接待と前後して進んだ」と指摘。澤田社長「意見はわかるが別物」と否定

3月15日の参院予算委員会の集中審議に、NTTの澤田純社長が参考人として出席した。野党側は総務省幹部との接待と前後して、携帯料金の値下げとNTTドコモの完全子会社化が進捗したと指摘。これに対し、NTTの澤田社長は「話は出していない」と否定した。

審議には放送関連会社「東北新社」の中島信也社長も参考人として出席。同社に勤める菅首相の長男・菅正剛氏と総務省幹部との接待問題や同社の外資規制違反に関する質疑もあった。

審議の中ではNTT側・東北新社側と総務省側との答弁の食い違いも目立った。

ズレる会食回数の報告。総務省の調査で「2回」、NTT社長の答弁では「3回」

参院予算委員会で答弁するNTTの澤田社長(2021年3月15日)

参院予算委員会で答弁するNTTの澤田社長(2021年3月15日)

参議院インターネット審議中継

自民党の大家敏志氏の質疑でNTTの澤田社長は冒頭、総務省幹部への接待問題について「関係の皆様に大変なご迷惑とご心配をかけた。心よりお詫び申し上げさせていただく」と謝罪した。

総務省幹部への接待について「日頃よりマスコミ、あるいは与野党の国会議員の方々はじめ各界の有識者と懇談し、将来や国際情勢全般について意見交換をさせていただくような場を設けている」と述べた。

国会議員との会食理由については「(議員は)見識、知識が幅広い方。非常に刺激になる、勉強になる場を提供していただいている」「業務上の要請や、便宜を受けるような話はしていない」と述べた。

澤田社長はこの日の答弁で、総務省幹部との会食回数が合計3回(2018年:2回、2020年6月:1回)だったと明らかにした。総務省は、3月8日に公表した総務省幹部と澤田社長の会食に関する調査結果では「2回」としていた

立憲民主党の福山哲郎幹事長は澤田社長に菅首相との会食経験について質疑。澤田氏は個別の会食についての回答は控えた一方、通信行政に関わる官僚や政務三役との会食は「常態化しているわけではない」と述べた。

「NTTは3分の1の株式を政府が保有している特殊会社。同時に上場会社。上場会社の社長が個別にどなたかと会食をしたか否かを公の場で公開することは事業に影響を与える。個別の会食については控えさせて頂きたい」
(NTT澤田社長)

総務省は3月15日、秋本芳徳・前情報流通行政局長(現・大臣官房付)と鈴木茂樹・前事務次官も、国家公務員倫理規程に違反する疑いがある会食をNTT側としていたことを公表した

秋本氏は東北新社から接待を受けたとして事実上更迭。鈴木氏は事務次官だった2019年末にかんぽ生命保険の不正契約問題をめぐろ、行政処分の検討状況を日本郵政側に漏洩したとして更迭されている。

菅氏の料金値下げ提唱、ドコモ子会社化…「節目節目で会食が目立つ」指摘

2020年12月、新料金プラン「ahamo」を発表するNTTドコモの井伊社長。

2020年12月、新料金プラン「ahamo」を発表するNTTドコモの井伊社長。

撮影:小林優多郎

NTTとの総務官僚の接待で焦点となるのは、国家公務員倫理規定への抵触とともに、通信行政に影響を与えたかどうかだ。

立憲民主党の斎藤嘉隆氏は、菅首相肝いりの携帯料金の値下げとNTTドコモの完全子会社化の経緯について質疑した。

斎藤氏によると、2018年8月に菅義偉官房長官(当時)が4割の携帯料金の値下げを講演で明言。直後に総務省の審議会で料金値下げの議論が始まり、この頃には担当局長だった谷脇康彦・元総務審議官とNTT側が相次いで会食した。また、2020年にはNTTドコモ子会社化の議論が始まったが、当時もNTT側と総務省幹部らが立て続けに会食している。

斎藤氏は「節目節目で会食が目立つ」「谷脇元総務審議官は、会食の場で携帯電話料金の値下げに関する話が出るのは自然なことと答弁している」と指摘。会食でのやりとりの詳細を問うた。

NTTの澤田社長は「安い料金はお客様の普遍的なニーズ。料金を自分の戦略として捉え、値下げする。競争に勝つこととセットと考えている。料金値下げは事業者の戦略。私の方から料金の話を出すことはない」と否定した。

その上で「谷脇さんが『そういう話が出たかもしれない』と仰ったとすれば、出たかもしれないが、私はたぶんそこで(話題にするのを)もう止めたと思う」と述べた。

NTTドコモ子会社化については、澤田社長は「TOBの検討は2020年の4月から。2018年秋の段階での会食では、まだ考えていない。話として出ていない。2020年6月に山田さん(山田真貴子・前内閣広報官[当時総務審議官])と会食している。2020年7月にはNTTデータと谷脇さんが会食している」と証言した。

一方で「2020年4月以降は、徹底的に関係者全員が守秘を徹底している。まさしくインサイダー情報そのもの。どなたにもお話をしていない」と強調した。ただし、「事務的に2020年7月に総務省に確認をしている」とした。

斎藤氏は「緊密に接待する時期と前後して携帯料金値下げ、子会社化がセットで進捗している。接待が)NTTと総務省が準備、意志疎通、意思確認をする場であったのではないか」と質問した。

澤田社長は「結果的にそういうふうに見えるというご意見もわかるが、私たちとしては全くそういう話は出していないし別物」と否定した。

「規範」に抵触か。NTTと政務三役の会食問題とは?

NTTをめぐっては、監督官庁である総務省の複数幹部のほか、政務三役(大臣・副大臣・政務官)経験者が在任中にNTT側から接待を受けていたと「週刊文春」が報道

自民党の野田聖子幹事長代行(当時総務相)、高市早苗前総務相、坂井学官房副長官、寺田稔衆院議員(いずれも当時総務副大臣)は、これまでに会食が事実だったと認めている。

政務三役の規範では、「関係業者との接触に当たっては供応接待を受けること、職務に関連して贈物や便宜供与を受けること等であって国民の疑惑を招くような行為をしてはならない」と定められている。

  • 野田氏…2回の会食。「私の信条でもあるんですけれども、仕事についてはほとんど話をしていません。当時の総務省の全く関わらない、プライベートな会合という認識でした」。NTT側が負担した2回目の費用約2万6000円を返済したと主張
  • 坂井氏…2018年にNTTの篠原弘道会長と会食。「飲食代は相手側の支払い。業務に関する要請や要望は全くなかった」とコメント
  • 寺田氏…事務所は時事通信の取材に対し、澤田社長からの接待を認めた上で「費用約2万4000円は返済する」と説明。
  • 高市氏…3月10日、澤田氏と2019年と2020年に会食した事実を認めた。費用は「割り勘」の認識だったとし、差額が生じる不足分があれば支払うと公式サイトで示した。

外資規制違反、東北新社「違法性報告した」総務省「受けた覚えはない」

参院予算委員会で答弁する東北新社の中島社長(2021年3月15日)

参院予算委員会で答弁する東北新社の中島社長(2021年3月15日)。

参議院インターネット審議中継

東北新社をめぐっては、放送法の外資規制に違反していた問題について質疑があった。

放送法93条などでは、外国法人などが議決権の1/5(20%)以上の株式を保有する場合、基幹放送事業者に認定できないと定めている。

2016年10月、東北新社の100%子会社「東北新社メディアサービス」は4K衛星放送「ザ・シネマ4K」の事業認定を申請。2017年1月に認定を受けた。ところが、申請時の外資比率は20.75%だった。総務省は「ザ・シネマ4K」の認定を取り消す方針だ。

東北新社の中島社長の答弁によると、同社が外資規制の違法性を認識したのは2017年8月4日。4K衛星放送の認定取得から約半年後だった。

中島社長は、同社の違法性について「2017年8月9日ごろに総務省の担当部署と面談、報告した」と答弁。相手は総務省の情報流通行政局総務課長だったと証言した。

東北新社はこの直前の2017年7月、他社からCS放送事業を承継すると発表していたが、のちに撤回。その直後の同年9月、新設した100%子会社に衛星放送の認定を承継させた。

中島社長は「子会社への承継で、(外資規制の)違法状態を治癒できると考えた」「当方からこのアイデアを(総務省側に)出した」と述べた。

ただ、総務省側は中島社長の答弁を否定した。

「当時の担当者によると『外資規制に抵触する可能性ある旨の報告を東北新社から受けた覚えはない。そのような重大な話なら覚えているはず。口頭ですむ話ではないのでは』とのことだった」
(総務省の吉田博史・情報流通行政局長)

武田良太総務相は「東北新社のミスが主たる原因とはいえ、総務省の審査も十分ではなかった」として、検察官経験者を含む第三者による検証委員会を今週中に立ち上げるとした。

文・吉川慧

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