大企業パナソニックが語る、これからの人事に必要な「3つの視点」

近年、企業・組織のあり方そのものや社員が組織に求める価値は大きく変化している。

背景には、情報のオープン化による企業・組織と個人の関係性や、個々の仕事に対する価値観が大きく変化していること、そしてコロナ禍によってリモートワークなどの多様な働き方が社会に浸透したことなどがある。

この流れは、日本を代表する大企業の一つであるパナソニックにとっても例外ではない。パナソニックは2022年4月に事業競争力の強化にむけて持株会社制へ移行するが、事業発展のベースとなる「人」の育成、成長についてどう考え向き合っているのだろうか。

執行役員 CHRO(Chief Human Resource Officer、最高人事責任者)の三島茂樹氏に、人・組織にかける思いを聞いた。

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パナソニック 執行役員 CHRO 三島 茂樹(みしま・しげき)氏。1987年に当時の松下電器産業(現・パナソニック)に入社後、本社および事業部門の人事責任者を歴任。2020年4月より現職。

一人ひとりの「体験」に軸をおいた設計を

創業100年を超えるパナソニックは、これまでも同社の理念をもとに多様な人材の活躍機会を提供してきた。

例えば、所属部署に籍を置きつつ社内の別業務を経験し、能力や可能性を試すことができる「社内複業」制度や、企業風土や経営管理手法が異なる社外のベンチャー企業などに出向して経験を積む「社外留職」制度を2018年よりスタート。また、一度パナソニックを退社し社外で経験を積み再びパナソニックへ戻る「カムバック社員」も増えている。

これらは社員の成長や多様な選択肢を提供するための施策だが、いくつかの施策を走らせる中で課題も感じていたという。

「多様な働き方や多くの価値観がある今、人が“企業”に入り卒業するまでのジャーニーはこれまでのように一律ではありません。

その時々で移り変わるライフステージや環境の中で、一人ひとりが自らの人生をどうデザインし、それに対して企業はいかに成長機会や多様な選択肢を提供できるか。挑戦する個人を阻むペイン(不安や不都合、不足)をどう取り除いていくかが問われていると思うのです」(三島氏)

そこでパナソニックの人事では2020年に「エンプロイージャーニーマップ」を設計し、挑戦する個人のエンプロイー・エクスペリエンス(従業員体験、以下EX)起点で、入社してから卒業するまでに抱くペインの洗い出しを行った。

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エンプロイージャーニーマップとは、従業員が企業と出会い、入社してから卒業するまでに得るすべての体験を時系列順に可視化したもので、従業員側の目線でキャリアデザインを組み立てていくことでEXの向上を目指す手法だ。

「これは、これまでのように終身雇用、一社完結で働くことが当たり前ではなくなった今、若手やミレニアル世代の社員の中長期的なキャリアを描くとともに、40~50代の社員が今後も人生を充実させながら活躍し続けることができるかという課題にもフォーカスしています。

年齢や性別などの属性に関わらず、社員一人ひとりの意志や価値観を尊重し能力を把握して、彼らの挑戦する機会を阻むペインを取り除く取り組みをしていくことが、エンプロイージャーニーマップの目的でありこれからの人事の役割だと考えています」(三島氏)

その先を考える「想像力」が必要だ

パナソニックがEX向上に取り組む背景には、「社員の働きがいやエンゲージメントの向上は製品やサービスの質を向上させることにつながり、その結果としてお客様のユーザー・エクスペリエンス(UX)向上につながる」という考えがある。

三島氏には、このサイクルについて身をもって実感するきっかけになった出来事があるという。約20年前、ある事業の人事部門責任者として、パナソニック社員が常駐していたお客様の工場に訪れた際のこと。先方の担当者から「パナソニックにはいつも助けられている。本当にありがとうございます」と感謝の言葉をかけられたのだ。

「このシーンは今でも鮮明に覚えています。というのも、普段から人事は社員とは向き合っていますが、その社員が日々向き合っているお客様や地域社会と紡いできた信頼関係に触れられた瞬間だったからです。現場で働く社員が仕事の価値や喜びを日々どのように感じ働いているのかを目の当たりにできたことで、社員の活躍がお客様のお役立ちに直結することを実感しました。

同時に、人事は常に社員が感じている仕事の喜びや苦労の瞬間に立ち会うことはできないけれど、それを“想像”する努力が必要なんだということにも気がつきました」(三島氏)

自分なりの「リーダーシップの形」を見つけた

街並み

Shutterstock

三島氏はパナソニック(旧松下電器産業)に新卒で入社し、20年以上にわたり人事の仕事に携わっている。

「正直に言うと、20代の頃は人事の仕事なんて物足りないし、面白くないと感じていた時期もある」というが、CHROとなった現在はどんなことにやりがいを感じているのだろうか。

会社を広い視野で捉え全体最適の観点から考えられることは、人事の仕事の魅力だと今は思っています。

特定の事業領域だけでなく全体を見ながら、一人ひとりのモチベーションや働きがい、心理的安全性を確保し、コンプライアンスを守りつつ最大限に力を発揮できる場所や仕組みを作る。それによって経営の持続性を支えることができるのは大きなやりがいです」(三島氏)

この、自分自身のことよりも仲間や周囲の人の活躍がやりがいにつながるというのは、実は学生時代の部活動での経験も影響しているという。

「中学、高校、大学とバスケットボール部に所属して、高校と大学ではキャプテンを任されていました。しかし、試合のスターティングメンバーではありませんでした。学生時代からプレーヤーとしての能力でメンバーを引っ張ることよりも、メンバーの活躍を支えるようなリーダーシップを発揮する機会が多く、それが私の組織への貢献スタイルになりました。

人事の仕事もビジネス(事業)を引っ張るというより、会社の中では黒子であり縁の下の力持ち的な存在です。
私は学生時代からずっとそういう役割が向いていたし、それが自分の強みだと感じています」(三島氏)

「世界中の誰もが働きたい場所」を作りたい

パナソニックは、グローバルで約26万人もの従業員を抱える大企業であり、社会の中で大きな役割を果たしている。一方で、巨大な組織であるがゆえの解決すべき課題も存在している。

「パナソニックの現状の課題としては、多様なお客様に寄り添っていくための権限委譲や心理的安全性の確保、挑戦する個人のペインに寄り添った視点がもっと必要だと感じています。これに対しては、エンパワーメント、オープン&フェアネス、パーソナライゼーションという3つの観点を持つことが重要になると考えています。

そして、パナソニックが世界中の多様な人たちから自分のミッションを実現するためにベストな場所として選ばれるようにしたいです」(三島氏)

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最後に、三島氏本人が働く上で常に持ち続けたい視点について聞いた。

「私はパナソニックという企業の中で、“生かされてきた”実感があります。言いたいことははっきりと言うし仕事に対する強いこだわりや執念もあって、マネージャからしたら扱いにくいメンバーだったと思います。でも、自分が成し遂げたいことに対して意思を尊重し寄り添ってくれるマネージャや仲間がいた。だからここまでやってくることが出来たと思っています。

パナソニックはコングロマリット企業ですが、社員が20万人だろうと30万人だろうと一人ひとりの集合であることには変わりありません。一人ひとりに目を向け寄り添って、それぞれが何を幸せに思うのか、どうすれば充実した人生を送れるのか常に“想像”しながら実行していきます」(三島氏)


パナソニック社員の働き方や仕事の魅力を紹介するサイトはこちら。

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