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キッズライン2690万円補助金返還、それでも再び国は補助金対象にするのか?

キッズラインHP

キッズラインの届出無届問題。内閣府はキッズラインを2021年度に再び、補助金対象とするのだろうか。

出典:キッズライン公式HP

キッズラインで、本来シッターに義務付けられていた自治体への届出が無届だった問題で、不正に内閣府の補助金対象としてマッチングしていたシッターが201人に及ぶことが分かった。同社は補助金2690万円を返還し、近く再発防止策を提出する。

次の注目点は、2021年度に内閣府がキッズラインを補助金対象事業として認定を更新するかどうかだ。

内閣府の担当者は「過去に重要な問題があったとしても、それが改善されているかどうかで更新が判断される」と話す。内閣府はどの程度抜本的な「改善」を求めるのか、それに見合う改善策をキッズラインは打ち出せるのか。

201人、2690万円返還で終わりか

内閣府の補助金事業はもともと、ベビーシッターの利用家庭に割引券のかたちで直接交付するもの。内閣府のベビーシッター利用者支援事業の対象として、認定された企業に勤める従業員らがシッター利用の際に申請すると、企業が拠出した公費から利用一回につき2200円分の補助が出る仕組みだ。

シッターはシッティング費用、キッズラインは手数料を通常通り受け取るが、利用者は通常より支払いが少なくて済む。補助金は2019年10月から1年強の間に2.7億円がつぎ込まれてきた。

今回の無届問題は、キッズラインによると次のような構造だ。

「シッター登録時にシッターが自治体に提出する記入済みの認可外保育施設設置届の写しをデータアップロードして提出することを必須としていた。しかしその後、設置届が自治体に受理されたかどうかを確認していなかった」(キッズライン広報)

その結果、補助金該当金額2690万円を、補助金事業を管轄する全国保育サービス協会に返還することになった。1万回以上の利用分について、本来補助対象にならない無届のシッターを紹介していたことになる。届出を出していなかったシッター個人に請求はせず、キッズラインが支払ったという。

自治体への届出は、補助対象であるかどうかにかかわらず、厚労省のガイドラインでも遵守するよう求められている。内閣府の補助金対象外のシッターでも無届が相当数あると見られるが、最終的な無届の総数を、キッズラインは公表していない。

不明確な「キッズラインが補償」

子どもとシッター_イメージ

うやむやな補償問題はシッターと利用者にしわ寄せがいっている。

撮影:今村拓馬

この問題に伴い、シッターと利用者にも影響が出ている。

ある利用者は、定期で頼んでいたシッターが「キッズライン側に問い合わせたところ、内閣府の補助金対象にはならないが、同額をキッズラインが補償しキックバックをしてもらえると説明を受けた」と言うので、利用者はその前提で利用した。

ところが、いつまでの何回分が補償されるのかが明確でないまま、キッズライン側へ問い合わせたものの返事がなく、結果的に利用後に数回分が「対象にならない」と言われたという。

これについてキッズラインの担当者は「補助券の利用を想定されていたご予約について、補助券の適用ができなくなったこととなり、ご利用者の皆様にはご迷惑をおかけしました」と、筆者の取材に回答した。

キッズラインのシッターは企業側が雇用関係の上に派遣しているわけではなく、シッター自身もマッチングプラットフォームのユーザーでもある。補助金が出るかどうかはシッターサービス利用者の判断に大きく影響する中で、責任の所在が不明確な情報が錯綜し、利用者にもシッターにも不満がたまり始めている

一連の問題を受けて、福利厚生サービスのメニューとして提供していた補助対象からキッズラインを外す動きも出ている。シッターからは「利用者から予約が入らなくなった」「他社に登録することにしました」などの声が筆者のもとにも寄せられている。

厚労省ができることに限界

厚生労働省

マッチングサイトにおける厚労省の介入手段は非常に限定されている。

撮影:今村拓馬

厚生労働省は子どもの預かりサービスのマッチングサイトについてガイドラインの遵守状況を公表している。

キッズライン上で2人の逮捕者が出たわいせつ事件や無届問題を踏まえ、公表の場としている「ガイドライン適合状況調査サイト」上で今後、同様の不祥事のような問題が起こった場合には、サイトから企業名ごと削除する方針だ

しかし、実際には利用者は、厚労省サイトを見てマッチングサイトを選んでいるわけではない。さらに、厚労省の担当者によれば「一般論としてガイドラインをどこまで遡及(さかのぼって効力を発揮する)するのかという話になるが、法令ではないとはいえ不遡及の原則を参考に考える」ため、この削除措置は今回特にキッズラインについて遡及適用もされないとみられる。

通常のシッター派遣事業者は、厚労省の直接管轄下で児童福祉法に従うことが求められる。これに対し、マッチングサイトに対する厚労省の介入手段は非常に限定されている。サイトから削除したとしても何の懲罰にもならず、厚労省の措置はむしろ厚労省ができることの限界を浮き彫りにする。

では、補助金事業の管轄官庁である内閣府はどうか。内閣府はもともと、有識者等も含めた全国保育サービス協会の審査を経て、マッチング型サイトの中ではキッズラインとキズナシッターを認定している。

無届問題が発覚したことで、キッズラインがガイドラインを遵守していなかったにも関わらず、内閣府が認定を出していたことが明るみに出た。しかしその後も認定の取り消しや一時停止には踏み切っていない。

内閣府「補助金の恩恵受けるのはユーザー」

次の注目は2021年度、キッズラインの補助金対象認定が更新されるかだ。

通常の更新では特に審査会のようなものが開かれるわけではなく、書類上の手続きだという。ただしキッズラインについては再発防止策などを含む報告書をもって、内閣府も連携した上で全国保育サービス協会が組織としての判断をすることになる。

内閣府の担当者は、判断の際の考え方をこう説明する。

「補助金事業で恩恵を受けているのは(ベビーシッターサービスの)利用者であり、安心して使ってもらえることが本来の主旨。キッズラインを取り消して使わせない方がいいのか、それともキッズラインがよくなることで使える人が増えて、みなにとって良い方向になるのか」

何を「改善」とみなすのか

内閣府

内閣府は限られた時間の中で何を「改善」と定義づけするのか問われる。

Shutterstock/Osugi

もちろん、キッズラインも何も対策に動いていないわけではない。周辺取材によれば、2021年3月、利用者、保育者、保育園運営経験者、弁護士などを集め、サービスに対して意見を出してもらう外部者会議を定期的に開催することを決めたようだ。

従来、シッターのプロフィール欄への資格記載は実質的に自己申告ベースだったとの証言があるが、資格書類のチェックは今後厳格にすることだろう。

現在公開されているシッターらのレビューを見る限り、中には助産師にしか認められていない母乳マッサージを看護師の資格しか申告していないシッターが提供していたと思われる事例などもある。運営会社が、シッターたちが資格の領域外の仕事をしていないかのチェック体勢をつくれるかなど、サービスの全般的なコンプライアンスも今後問われることになる

シェアリングエコノミー協会上田祐司代表理事(ガイアックス社長)は同協会の会員停止措置について筆者のこれまでの取材に対し、「通りいっぺんの報告書が出て『これまでの問題は解消しました』という一般的な対応」はあくまでも大前提で、「経営体制も含めてパブリック企業としてのガバナンスはあるのか」なども見る必要があるとし、経営陣の刷新など根本的な変化を求めることを示唆している。

キッズラインは全国保育サービス協会に、4月5日までに報告書を提出することを求められている。年度内に更新の有無を決定するためには、実質的にはキッズラインにも内閣府及び全国保育サービス協会にも、残されている時間はわずかだ。

(文・中野円佳

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