巨大なセイウチ(2004年4月13日、ベーリング海)。
Joel Garlich-Miller/U.S. Fish and Wildlife Service via AP
- 本来の生息地から遠く離れたアイルランド沖で先週末、セイウチが見つかった。
- 海洋生物学者たちは、その牙の大きさからこのセイウチがまだとても若いと見ている。
- 専門家の1人は、氷山の上で眠っているうちに流されてしまったのだろうと考えている。
北極圏から数千マイル離れたアイルランドのケリー郡の沖合で3月14日(現地時間)、地元の親子が若いセイウチを発見した。大半のセイウチは北極圏で暮らしている。
アラン・フーリハンさんと5歳の娘ミュアアンさんはこの日、アイルランドのヴァレンティア島を散歩していた。すると、ミュアアンさんが海から岩の上に飛び乗った"巨大生物"を見つけたという。
フーリハンさんはその牙が見えるまで、初めはアシカだと思っていたとIrish Examinerに語った。セイウチはとても大きく、「牛」くらいのサイズだったという。
「岩の上に座って、ポーズを取っているような感じでした。しばらくすると魚を吐き出して、わたしたちを挑発しているようでした」とフーリハンさんは振り返った。
海洋生物学者たちは、その牙の大きさからこのセイウチがまだとても若いと見ている。また、多くの科学者たちが、長距離移動ができるとはいえ、セイウチがこれほど南下してくるのは非常に珍しいと強調している。
「生息地から遠く離れてはいるものの、このセイウチは健康そうな、ふっくらとした若いセイウチなので、ここで暮らすことができるかもしれない」と海洋保護協会(Marine Conservation Society)のオーシャン・リカバリー部門の責任者ピーター・リチャードソン(Peter Richardson)氏はDaily Mailに語った。
水族館ディングル・オーシャンワールド(Dingle Oceanworld)の海洋生物学者ケビン・フラナリー(Kevin Flannery)氏は、セイウチがなぜこれほど本来の生息地から遠く離れた場所で見つかったのか、独自の"説"を持っている。
「セイウチは北極圏から来ました。恐らく氷山の上で眠っているうちに流されて、これほど遠くまでやって来たのでしょう」とフラナリー氏はIndependentに語った。
長旅のせいで、セイウチは「とても疲れて」「とても空腹」だっただろうと、同氏は話している。
ただ、世界自然保護基金(WWF)のシニアアドバイザーであるトム・アーンボム(Tom Arnbom)氏は、異なる見解を持っている。野生生物の専門家であるアーンボム氏は、セイウチが食料を求めて生息地からアイルランド沖へやって来た可能性が高いと、BBC Newsに語った。
繁殖のために新しい土地を見つけようと「長距離移動してくるのは、若い動物が多いのです」
アーンボム氏によると、セイウチは貝を食べるために、浅瀬に来なければならない。1日に数千個食べることもあるという。
「仲間から遠く離れて、迷子になっていますが、死んでしまうことはないでしょう」とアーンボム氏はBBCに語った。
フラナリー氏もアーンボム氏も、この若いセイウチが北大西洋の本来の生息地に戻れることを願っている。
専門家たちは市民に対し、セイウチを怖がらせることがないよう(そして自分たちを危険にさらさないよう)、近付かないで欲しいと呼びかけている。
BBCは15日にセイウチの目撃情報はなかったと報じたが、リチャードソン氏はこの近辺はお腹を空かせたセイウチの食料となる軟体動物が豊富なため、水中にいて見えないかもしれないが、まだこのエリアにいる可能性があるとDaily Mailに語った。
保護団体Irish Whale and Dolphin Groupは、アイルランドでセイウチが目撃されるのは1999年以降、今回が3回目だという。
(翻訳、編集:山口佳美)