保健福祉長官に指名され、連邦議会上院の公聴会で発言するカリフォルニア州のザビエル・ベセラ司法長官(当時)。2021年2月24日。
Michael Reynolds/Pool via AP
- カリフォルニア州は、消費者保護の立場から、解約の手段などをわかりにくくする「ダークパターン」が使われたウェブサイトを禁止する。
- 2019年の調査によると、Eコマースサイトの約10件に1件が「ダークパターン」を使用していたという。
- 連邦議会の議員も、ダークパターンに関する規制強化を求めている。
カリフォルニア州は3月15日、個人情報の保護を求める住民のために、新たな施策を発表した。
カリフォルニア州消費者プライバシー法(CCPA)では3月15日から、企業が「ダークパターン」と呼ばれる、ユーザーを混乱させたり、騙したりして販売を行うようなウェブサイトデザインを使用することを禁止する。この法律では、購入をキャンセルする過程で、分かりにくい言葉を使ったり、複数の画面のクリックを強要したりするようなトリックを禁止している。
カリフォルニア州はダークパターンを禁止する最初の州になった。ワシントン州の上院議員も、2021年初めに同様の法案を提出している。
ダークパターンを使っている企業には、30日間の猶予が与えられ、デザインを変更しない場合は処分を受けることになる。この法律では、従わない企業は「司法長官によって提訴され、不正競争防止法に基づいた民事罰の対象となる」と規定されている。
「カリフォルニア州はオンライン・プライバシー保護の最先端に位置しており、今回の施行は、消費者がCCPAに基づいて権利を行使することのハードルをさらに低くするものだ」と、カリフォルニア州のザビエル・ベセラ(Xavier Becerra)司法長官(当時)はリリースで述べている。
「これらの保護により、消費者がデータプライバシー権を行使しようとする際に、混乱せず、誤解を招かないようになるだろう」
「ダークパターン」って何?
ダークパターンとは、企業がユーザーの行動を操作するために使用するウェブサイトデザインの手法だ。ユーザー・エクスペリエンス(UX)の専門家であるハリー・ブリヌル(Harry Brignull)は2010年にこの言葉を作り出した。
ブリヌルは、ダークパターンをいくつかのタイプに分類している。
- 「ゴキブリ捕獲器」:ユーザーはサービスに簡単にサインアップできるがキャンセルには苦労する
- 「価格比較防止」:Eコマースサイトが2つの商品の価格を比較することを困難にしている
- 「ミスディレクション」:ウェブサイトのデザインによって意図的にユーザーをあるものに注目させ、他のものから目をそらさせる
「CCPAは、カリフォルニア州の消費者のプライバシーにとって非常に大切な一歩であり、他の州もこれに続くことを期待している」と、ブリヌルはInsiderに語った。
「これは、ある種のトリック表現、隠れた小さな文字、ミスディレクション、おとり商法など、プライバシーに関連するさまざまなダークパターンを違法とするものだ」
プリンストン大学とシカゴ大学の研究者による2019年の調査によると、電子商取引サイトの約10件に1件がダークパターンを使用している。お得な商品の販売期限を知らせるカウントダウンタイマーを表示したり、カートに商品を忍ばせたりする、顧客を「辱めて」小売業者に有利な選択をさせる戦術を研究者たちは発見した。
ダークパターンを採用しているのは小売業者だけではない。2018年にTechCrunchが報じたところによると、詐欺師たちはダークパターンを使ってiPhoneユーザーをだまし、高価なアプリ購読のサインアップをさせていたという。ノルウェーの技術監視団体が実施した調査によると、フェイスブック(Facebook)とグーグル(Google)はダークパターンを使ってユーザーにプライバシーを侵害しかねない決定を下させているという。また、UXの専門家によると、ロビンフッド(Robinhood)はダークパターンを使ってユーザーに取引をさせているという。フェイスブック、グーグル、ロビンフッドの広報担当者に対して、過去の調査結果やカリフォルニア州における新たな保護措置についてコメントを求めたが、回答を得られていない。
「これは、ユーザーを操作して、他ではしないような決断をさせ、必要のないものを買わせているのだ」と プリンストン大学情報技術政策センターの元博士研究員であるギュネス・エイカー(Gunes Acar)は、以前Insiderに述べている。
「タイマーを表示して、あと5分しかないと言うのは、怪しげな切迫感をもたらす」
アメリカ連邦議会の議員は、民主党、共和党ともにダークパターンに対する規制強化を求めている。2019年には、民主党のマーク・ワーナー(Mark Warner)上院議員と共和党のデブ・フィッシャー(Deb Fischer)上院議員が、テック企業によるダークパターンの使用を禁止する法案を提出した。トランプ政権とバイデン政権で連邦取引委員会(FTC)の委員を務めているロヒット・チョプラ(Rohit Chopra)は、ダークパターンに反対の立場を表明している。
(翻訳、編集:Toshihiko Inoue)