LINEMOのセットアップを完了した端末。アンテナピクトはソフトバンクではなくLINEMOになる。
撮影:小山安博
ソフトバンクの新ブランド「LINEMO」のサービスが始まった。
データ容量20GBで月額2728円(税込み)という、3000円を切る月額料金設定が魅力の、いわゆる「ahamo対抗」のオンライン専用ブランドだ。同カテゴリーの料金プランを出した3社の中では最速の提供となった。
サービス開始当日の朝、さっそくナンバーポータビリティー(MNP)で、eSIM契約をしてみた。
初日のeSIM契約は混乱模様?
いよいよサービスがスタートした20GB3,000円切りの各社プラン。先陣を切ったのがLINEMOだ。
筆者キャプチャー
LINEMOは、政府の値下げ圧力を受けて作られたオンライン専用の低価格ブランド。急造のためか開始直前まで料金もサービス内容も当初、二転三転していたが、3月17日に一番乗りで正式サービスがスタートした。
サービスイン当日に既存電話番号を移し替えるMNPで契約するため、事前にMNP転出の手続きをして、MNP予約番号を取得しておいた。
3月17日の申し込み開始時間である午前10時から作業を開始。契約はもちろんオンラインで、LINEMOのサイト(https://www.linemo.jp/)から進める。
LINEMOのサイトから「今すぐ申し込む」で契約手続きのスタート。
筆者キャプチャー
申し込みは、通常の携帯電話の契約と同じで、運転免許証などの本人確認書類が必要になる。電子的に本人確認を行うeKYCを活用するため、その場で顔写真をスマホで撮影するなどして、本人確認が完了する。
必要なのは本人確認書類。「所持人記入欄」のあるパスポートも利用できる。
筆者キャプチャー
まずは新規契約かMNPかを選択し、物理的なSIMカードかeSIMを使うかを選ぶ。eSIMを選ぶと、本人確認後すぐに使えるようになるため、今回はeSIMを選んだ。
ただし、eSIMは未成年が利用できないようだ。もちろん、対応端末も必要。人気のiPhone 12なども当然対応するが、今回は手持ちのAndroid端末Pixel 5で契約を進めていく。
eSIM契約は対応端末を持っていて、なおかつ成人のみが選べる。「LINEMOを契約するスマートフォン1台しか持っていなくて、他にインターネット接続している端末がない」場合も、eSIMの設定ができない。別のPCなどが必要だ。
筆者キャプチャー
プラン選択画面では、「スマホプラン(20GB)」の1種類のみなので迷うことはなかった。通話オプションは「通話準定額(月額550円、1年間は0円)」「通話定額(月額1650円、同1100円)」「なし(30秒22円)」が選べた。
料金プランは1種類なので簡単。音声通話だけは検討が必要だ。
筆者キャプチャー
プランが決まったら、「写真の撮影に進む」をタップして、本人確認「eKYC」の手続きに進む。本人確認書類の撮影は表面、裏面に加え、斜めから撮影する。
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本人確認終了後、今回はMNPなので、元の電話番号とMNP予約番号、予約番号期限を入力。さらに契約者の氏名などの情報も入力する。ネットワーク暗証番号やクレジットカードの登録をすれば、これで入力は完了だ。
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手順としては長いが、慣れていれば手間取ることもない。所用時間は10分というところだろうか。MNPや新規契約の手数料もかからないため、低コストで契約が完了する。
最終的に重要事項説明書を一読して同意、これで申し込みが完了する。申し込み後には「受注番号」が表示されるが、筆者は200番以内で、おそらく申し込み人数だろう。この時点で10時11分だった。
eSIMの認証コード通知でトラブル、電話音声しかつながらない
あとはeSIMの案内を記載したメールを待つのだが、サービス開始したばかりのせいか、結局、案内メールが届いたのは、約1時間後の11時10分だった。
この間、eKYCの本人確認もしているため、即時のメール送信というのは難しいのかもしれない。
筆者の時間だとこれでもスムーズだったが、初日は申し込みが殺到して申し込みづらい状況にもなっていたという報告もあり、一定の時間がかかるケースもありそうだ。
メール到着後のeSIM利用開始手続きは次のような流れになる。
メールからeSIM利用開始の手続きにアクセス。なお、ここへのアクセスは、PCなど「eSIMを使うスマホ以外の端末」を使うように案内される。
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メールに記載されたURLにアクセスすると「eSIM利用開始のお手続き」が始まる。申し込み時に設定した電話番号(これはMNPする番号ではなく、それ以外の自宅電話などの番号でなければならない)を入力して、SMS、自動音声通話のいずれかで認証コードの送信を手続きする。
時間のかかった「認証コードの受け取り」。結局、自動音声通話のみが通じた。
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今回、SMSでの認証コード通知はまったく届かず、自動音声通話に切り替えて、ようやく着信があったのが12時2分のこと。告げられた6ケタの認証コードを入力すると、先に進める。
ここでeSIMの通信設定である「プロファイル」をダウンロードするが、iPhoneとAndroidで手順が異なる。今回はAndroid 11を搭載したPixel 5で処理を進めている。
Pixel 5の設定から「ネットワークとインターネット」を選び、「モバイルネットワーク」の横にある「+」ボタンをタッチして、画面の指示に従いeSIMのダウンロードを選ぶと、QRコードをスキャンするためにカメラが立ち上がる。
eSIMの設定は、iPhoneとAndroidで異なる。今回はAndroidを選択。
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Pixel 5の設定画面からモバイルネットワークの「+」をタッチ。「代わりにSIMをダウンロードしますか?」を選ぶ。
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さて、最初のメール経由でアクセスすると「読み込むためのQRコード」が表示されるのだが、これをPixel 5で表示してしまうとQRコードを読み込むことができない。
そのため、Pixel 5ではない別の端末の用意が推奨されている。ただ、実際にPixel 5で読もうとしてみると、QRコードの下に文字の羅列であるコードが表示され、コピーボタンも用意されていた。
これをコピーして、QRコード読み取り画面の下にある「自分で入力」を選択。テキストボックスにコピーした文字列をペーストすれば、問題なく進められた(が、オススメはしないので、別端末を用意したほうが良い)。
LINEMOが有効になったところ。
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eSIMの設定が終わると、自動的にAPN設定がダウンロードされる。本来、LINEMOのAPNが自動設定されて、即接続できるというのが理想なのだろうが、今回表示されたAPNはY!mobileの設定のようで、そのままではLINEMOに接続できなかった。
設定手順では、LINEMOのAPNが設定されている場合とされていない場合の2種類のやり方が記載されており、「想定済み」ということかもしれないが、この一手間は省いてほしかった。
LINEMOのAPN設定自体は公開されているので、今回は手動でAPNを追加した。APN設定自体は特別なことではないが、eSIMのスタートを優先したのかもしれない。
念のため、手動で追加したLINEMOのAPN設定を紹介。これで無事、データ通信も通話もできるようになった。
筆者キャプチャー
設定完了後、しばらく待つと電波を掴んだ。これでMNPは完了で、LINEMOを使い始めることができる。文章で説明すると長いし、時間もかかっているが、実際の手順はそれほど難しくはなく、今回は初日で混雑していると考えれば、普段ならもっと早く開通しそうだ。
スピードテストは「キャリア品質」
スピードテストを実施。特に上り速度が極端に遅い場合もあったが、下りはまずまず(千葉県習志野市)。時間帯を変えると、速度が変わったことがわかる。今後の5Gに期待したい。
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さて、LINEMOはどの程度の回線速度が出るのか? スピードテストを試したところ、下りは60Mbps、上りは10Mbps程度出た。ただし、時間帯によって数値が大きく異なり、上りが1Mbpsを切ることもあった。
ただし、同じ場所で通常のソフトバンク回線でも同様の傾向だったため、LINEMOだから何か制限をかけているわけではなさそうだ。
まとめ:メイン回線にeSIMを使うのは慎重に
eSIM契約に慣れていることもあり、筆者の場合は、MNPでeSIMをダウンロードして設定するのにそこまで手間はかからなかった。時間的にはeKYCの確認があるので「即座に」とまではいかないが、1~2時間もあれば完了する。
トラブルといえば、認証コードのSMSが届かなかったことと、APN設定が手動になったことだが、これまでMVNOや海外の現地SIMを使ってきたような、「よくわかってる人」ならそれほど問題にはならないだろう。
しかし、それはあくまで「上級者向け」の話だ。注目が集まるキャリア系の新料金となると、ごくごく一般的な人が使う可能性もある。「若者向け」といってもみんながスマートフォンを使いこなしているわけでもない。トラブル対応は少し心配なところだ。
撮影:小山安博
実際、身近な例では、同じように設定途中でトラブルに見舞われた(iPhone 12 miniで、3G回線にしかつながらず、データ通信もできなかった)ケースも見聞きしている。このケースでは、メイン回線のMNPだったにもかかわらず、当日中にトラブル解消ができなかった。
また、メイン回線の移行でトラブルが起こると、サポートの問い合わせ番号に「自宅番号を教える」ようなことが発生する(LINEMOのサポートへの問い合わせでは、メール対応やLINE上でのサポート返答をしていないとの回答)。
つまり、オンライン専用とはいえ、電話対応のアナログな部分は残っていて、サポート体勢にはちぐはぐな印象もある。準備期間が足りなかった、というのもあるのかもしれないが、「突貫工事のサービスイン」という印象は残る。
ただ、料金面で言えば、20GB、3000円を切る価格というのは、グローバル的に見ても十分安い。全国を網羅する4Gネットワークと今後の5Gを考えれば、やはり(LINEMOだけに限らないが)お得なプランと言っていい。
ぜひソフトバンクには、MNPやeSIM移行時のトラブルに対応できるオンラインサポート体勢とセットで用意してもらいたいところだ。
(文・小山安博)