フランクフルト空港で、チェコのプラハから来た飛行機の乗客の書類を確認する警官。
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- 欧州委員会は3月17日(現地時間)、"ワクチンパスポート"の仕組みを明らかにした。
- これが承認されれば、ワクチン接種を受けたEU市民は夏までにヨーロッパ域内を旅行することができるようになる。
- イスラエルと中国では"ワクチンパスポート"が導入されている。多くの国が導入を検討している。
欧州委員会が3月17日に明らかにした提案によると、"証明書"によってワクチン接種を受けたEU市民は夏までにヨーロッパ域内を旅行することができるようになる。
この「Digital Green Certificate(デジタルグリーン証明書)」は、本人のワクチン接種状況、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の検査結果、COVID-19から回復したかどうかを証明するものだ。
「この証明書を導入することで、わたしたちは加盟国が安全で責任ある、信用できる移動の自由を回復することを支援したい」と欧州委員会のウルズラ・フォンデアライエン委員長は17日の記者会見で語った。
これはEU版"ワクチンパスポート"だ。"ワクチンパスポート"は、新型コロナウイルスのパンデミックからの出口戦略として、多くの国が検討している。
前へ進むには、欧州委員会の提案は欧州議会と27の加盟国の承認を得る必要がある。
"証明書"は27のEU加盟国内で有効で、ノルウェー、アイスランド、スイスなどが含まれる可能性もあるとEU関係者は話している。
「わたしたちは皆、観光シーズンが始まって欲しいと思っています。もう1シーズン失うわけにはいきません」と欧州委員会のベラ・ヨウロバー(Vera Jourova)委員はThe Telegraphに語った。
この"証明書"が優先するのは、ヨーロッパ域内の旅行を可能にすることだと、関係者は話している。ワクチン接種を受けていない人たちも、不要不急の旅行を制限するといったより厳しい措置に従って、旅行することは可能だ。
また、"証明書"は加盟国が既存の公衆衛生措置を調整する機会にもなるだろうと、欧州委員会のウェブサイトには書かれている。
ただ、これがイスラエルで既に行われているように、"証明書"がジムや劇場、ホテルへのアクセスといった人々の国内での行動規制に使用される可能性があることを意味するかどうかは分からない。
17日の記者会見でこの点を問われた欧州委員会の法務担当ディディエ・レンデルス(Didier Reynders)委員は、これはケース・バイ・ケースで検討されるべきだと答えた。
その上で、"証明書"はCOVID-19の検査やマスクなどと同じような公衆衛生ツールとして見なされるべきだと語った。
イギリスへの旅行は、今回の提案では言及されていない。
イギリスも現在、"ワクチンパスポート"を海外旅行や国内でどう活用し得るか再検討していると、ロイターが17日に報じた。
"ワクチンパスポート"の導入をめぐる議論は世界各地で進んでいる。その動向を調査しているロンドンのNGO「Ada Lovelace Institute」によると、30カ国以上が"ワクチンパスポート"を導入または検討しているという。
例えば、中国は3月9日に"ワクチンパスポート"を発行を開始した。1月には、アラブ首長国連邦(UAE)が「COVID-19免疫パスポート」を発行し、フィリピンが全国民にワクチンパスポートを発行すると提案している。
企業が独自に対処しているケースもある。
航空会社のブリティッシュ・エアウェイズとライアンエアーは、乗客に通常の個人情報に加え、自身のワクチン接種状況やCOVID-19の検査結果を登録できるようにしている。
[原文:The EU proposed a vaccine passport for its 27 nations. The idea is gathering pace around the world.]
(翻訳、編集:山口佳美)