「女性による女性のための相談会」実行委員会Twitterアカウント( @sodanforher2021 )
3月18日、「女性による女性のための相談会」の報告会が開かれた。
同相談会は3月13日と14日、東京・新宿区の大久保公園で開催。2日間の相談件数は計122件にのぼる。実行委員会によると、虐待、DV、性暴力、セクハラ、パワハラ……女性たちはあらゆる暴力の被害にあっており、それが原因で安定した雇用に就くことできずにいる人も多いという。
仕事と心身の不調が悩み
「女性による女性のための相談会」会場前の様子。初日の天気は雷が鳴る荒れ模様だった。
提供:「女性による女性のための相談会」実行委員会
報告会では「女性による女性のための相談会」実行委員の松元千枝さん(ジャーナリスト)から、当日の様子が伝えられた。
相談会には弁護士など60人の相談員と、ボランティアを加えて200人を超えるスタッフが参加。会場の中心にカフェを設置し、その周りに「法律」「労働」「生活」「心と健康」の4つのブースを設け、相談者が周囲から見えないようテントを設営したという。
2日間で122件の相談があり、50代が最も多く19%、次いで40代(14%)、30代(13%)、20代(8%)だった(年齢不明または回答なしは38%)。
今どんなことに困っているかという質問で最も多かったのは「仕事」、次に「心と体」、そして「家庭・家族」「ハラスメント・いじめ」と続いた。
生活保護の申請を希望する人も複数いたそうだ。
該当する制度が利用できていない人も
出典:「女性による女性のための相談会」実行委員会
具体的には、以下のような相談が寄せられた。
「性被害にあうことが多く、男性が多いところには恐怖心がある。短期の仕事は男性が上司になることが多く、仕事しづらくて困っている。生活保護を受けられたら、行けなかった歯の治療や医療機関などを受けるつもり」
「夫から暴力を受けており、離婚したい。母親に相談したが『あなたが我慢したほうがいい』と言われて20年以上、我慢してきた」
「高校時代からバイトをして家にお金を入れていたが、母からの虐待があり家を飛び出した。細切れでイベント系の派遣労働をしてきたが、コロナで仕事がなくなり、収入が途絶えて家賃も払えない。所持金は1万数千円」
「70代。家族からの暴力で家を出て、友人宅にいる。保証人がいない、緊急連絡先が身内でないとダメという条件がネックとなり、住むところが見つからない」
該当する制度を使えていない人も多く、相談員は使える制度や窓口を案内するほか、離婚などは法的な手続きを説明するなどして対応したという。
暴力被害と労働問題はつながっている
全ての相談者に配布したキット。マスク、マスク用ケース、生理用品、除菌ティッシュ、ストッキング、絆創膏、基礎化粧品の7点。
提供:「女性による女性のための相談会」実行委員会
前出の松元さんによると、相談会では食品や衣類、生理用品、花、基礎化粧品などさまざまな物資の無料配布も行われたが、最も人気があったのは白いワイシャツ。「就職活動をしたいが、自分では買えない」という理由からだ。
「通勤時に使えるようなバッグがもらえて嬉しかった。マイバッグ(エコバッグ)では仕事に行きづらいので」という声もあったという。
松元さんは、女性の暴力被害と雇用の関係性について以下のように語った。
「特徴的だったのは、虐待、DV、性暴力、セクハラ、パワハラなど、女性たちはあらゆる暴力の被害にあっているということです。そうした被害を受けて精神的に不安定になっている方が多く、その結果、安定した雇用に就けない、単発でしか仕事ができないといった悩みを抱えている方がいらっしゃいました」(松元さん)
同様に、相談員の女性たちも労働問題を抱えていたり、シングルマザーで子育てに奮闘していたり、DV被害の経験があったりと、相談者と同じような体験を持つ人も多かったという。
「『女性だけの集まりでとても相談しやすかった』という声のほかにも、ピアサポート(同じような共通項と対等性をもつ人同士の支え合い)のように『共感してもらえたことがすごく嬉しかった』という声もありました」(松元さん)
こうした取り組みを継続していくことで、コロナの影響だけではない、いわゆる「女性不況」(女性の雇用悪化)の実態が明らかになっていくだろう。
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(文・竹下郁子)