男が名字を変えてみたら…選択的夫婦別姓に「4%の男性」が漏らすホンネ

結婚

日本では、男性側が姓を変えるケースは全体のわずか4%だという。

撮影:今村拓馬

選択的夫婦別氏(別姓)制度の議論が揺れている。

自民党内では、石原伸晃元幹事長を座長とするワーキングチームが新たに設けられたが、発表された主要メンバーは、石原氏を筆頭に全員が男性だった。自民党の下村博文政調会長は「ニュートラルな方に幹部になってもらった」と釈明したが、そのジェンダーバランスの悪さが批判を呼んだ。

厚生労働省の2015年の調査によると、妻の名字(姓)を選んだ夫婦は4%で、結婚による改姓は圧倒的に妻側に負担が強いられている。しかし数は少ないながら、妻の名字になることを選んだ男性もいる。彼らのホンネとは ——。

妻の姓を名乗ったら「婿養子?」

婚姻制度

婚姻届上は、妻の姓にしても夫の姓にしても良いはずだが……。

Shutterstock

「婚姻届を出す時って、何も『夫の姓』にデフォルトでチェックが入っているわけじゃないんですよ。それなのに、なんでこんなに比率がアンバランスなんですかね?」

結婚して姓を変えた御守一樹さん(33)は、不思議そうに語る。

そのきっかけは、妻の姓である「御守」が全国的に珍しかったことだった。「この姓なら、人生得しそうだな」。妻が公的機関、一樹さんはIT企業に勤めていることもあり、姓を変えるハードルが低いことも決め手となった。

そうして自身の名字を変えた経緯について、一樹さんは「『4%の男』 - 結婚して男性が名字を変えると人生がどう変わるか -」と題したnoteで公開した。

男性のあなたが名字を変えても、別に人生は大して変わりません。名札を下げて歩くわけでもないので誰もあなたが名字を変えたかどうかなんて知りません。(中略)選択肢はフラットに存在します」(noteより抜粋)

姓を変えることは一樹さんにとっては自然な決断だったものの、周囲はやや戸惑いがあったとも振り返る。報告すると、親からは「少し考える時間がほしい」と言われたほか、友人たちからは「婿養子に入るの?」と尋ねられたことも。

実際は、婚姻により新しく戸籍を作りその筆頭者を妻とするため、妻の両親と養子縁組をして妻を筆頭者とする戸籍に入る「婿養子」とは、戸籍上の定義は異なる。

偏見とまではいかないものの誤解はあったと思う、と一樹さんは振り返る。

事実婚だと共同親権取れない

赤ちゃん

日本では婚外子の割合は2%と、先進国の中でも突出して低い。

撮影:今村拓馬

もともと“婚姻制度”にメリットなんてないと考えていた。僕ら夫婦は事実婚で良かったんです

やはり結婚によって自身が妻の姓に変えたITベンチャーを経営するコウジさん(28、仮名)は、そう話す。

共働きでもあるコウジさん夫婦の間では、そもそも「結婚という“状態”と婚姻という“制度”は別」という共通認識があり、婚姻制度のメリットが生じるまでは、事実婚でも良いと考えていたという。

コウジさんが自身の姓を変えることになったきっかけは、外資系企業で働く妻の妊娠が分かったからだ。

事実婚で子どもができた場合、子どもは妻の戸籍にまず入ることになる。父親であるコウジさんは認知の手続きをして、子どもは「非嫡出子・婚外子」となる。

2013年の民法改正によって、認知されている非嫡出子と嫡出子に法律上の身分の違いはなくなり、相続も嫡出子と同じようにできるように定められた。

その一方で、一度非嫡出子として生まれた子どもを後から嫡出子に変更する場合には、 変更の履歴を「準正」というかたちで子どもの戸籍に残すことになる。

親の都合で戸籍にそうした履歴をつけて良いのか?という想いがコウジさん夫婦にはあったという。さらに非嫡出子の場合は共同親権が取れないこともあり、2人はその時点で法律婚を選んだ。

「女性が家庭に入る」が前提の仕組み

妊娠した妻の体調を気遣って、自ら名字を変えることを決めたコウジさん。 その背景には、コウジさん自身が両親の離婚やその後の再婚を経験していたため、自分の姓が変わることに抵抗が少なかったこともあるという。

だが、コウジさんは社長という立場だったことから、名前を変える手続きのコストは通常の場合より「割り増しで味わった」とも明かす。

「企業の代表である以上、金融機関はもちろん登記簿など公的な書類の名義も全て変更しなくてはなりません。女性の起業家も増えているとはいえ、男性は外で働き、女性は改姓して家庭に入る、という考え方が仕組み化されているように感じる経験でしたね

帝国データバンクの2020年の発表によると、企業における女性管理職の比率は7.8%となり、前年の7.7%から微増した。政府が目標としている女性管理職比率3割の達成のため、働く女性に大きなハードルが課されている改姓への対策は急がれている。

選択的夫婦別姓制度の反対派は旧姓の通称使用の拡大を進めるとしている。しかし現時点では法的な裏付けはなく、契約や手続きに旧姓を認めるかは企業や行政機関に委ねられている。

選択的夫婦別姓、検討チームに50代以下はゼロ

現在、結婚する時に名字を変えるのは圧倒的に妻側だ。その一方で、2017年の法務省の調査によると、不便を被っている・いないにかかわらず、選択的夫婦別姓に賛成する人の割合に男女間で大きな差は見られなかった。

選択的夫婦別姓

内閣府「家族の法制に関する世論調査」

出典:法務省ウェブサイト

自らも不便を経験したコウジさんは、こう語る。

「変える側の方が面倒くさいというのは、絶対にそうだと思います。結婚ってお互いが平等な状態でするもののはずなのに、片方の選択のコストがもう片方の選択よりも高いって、そんなコスト誰が払うんだ?とは思いますね」(コウジさん)

世論に性差がない一方で、大きな差が出ているのが年代だ。

同調査によると「夫婦は必ず同じ名字(姓)を名乗るべきであり法律を改める必要はない」と考える人の割合は、18歳から59歳までの年代では全て2割を切っているのに対して、60代で3割超、70歳以上では5割超と、全体の「選択的夫婦別姓へ法改正に反対」を大きく押し上げる結果が出ている。

内閣府「家族の法制に関する世論調査」

内閣府「家族の法制に関する世論調査」

出典:法務省ウェブサイト

奇しくも、批判を呼んでいるワーキングチームの主要メンバーは全員が男性であっただけでなく、全員が60代から70代で、50代以下が一人もいないという歪さも浮き上がっている。

今後、制度を主に使うことになるはずの若者世代なしで婚姻制度の議論が進められることの異常さから、まず問わねばならないのではないだろうか。

(文・西山里緒

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