多くの観光立国とは対照的… ニュージーランド、新型コロナが落ち着いてもかつての"観光"に戻ることは目指さない?

ニュージーランド

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  • ニュージーランドのスチュアート・ナッシュ(Stuart Nash)観光相は国の観光モデルの変化を呼びかけた。
  • 「わたしたちは新型コロナ前の観光モデルに戻ることはできない」とナッシュ観光相は語った。
  • この提案は、観光を新型コロナウイルスのパンデミック前のレベルに戻すことに重点を置く他の多くの国とは対照的だ。

ニュージーランドにまだ行ったことがないなら、あなたはこの国の観光のピークを目にする機会を失ったかもしれない。

3月19日にクイーンズタウンで開かれた業界会議で、ニュージーランドのスチュアート・ナッシュ観光相は国の観光モデルの変化を呼びかけた。

「わたしたちは新型コロナ前の観光モデルに戻ることはできない」とナッシュ観光相は語ったと、ブルームバーグが報じた。

2020年12月の時点で、ニュージーランドの人口は推定510万人だった。2019年には、390万人以上の観光客がこの国を訪れたという。

ニュージーランドは1999年以降、「100%ピュア・ニュージーランド」のキャンペーンの下、その自然と素晴らしい風景を愛で、見どころにしてきた。映画『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズのロケ地となった後の観光ブームを受け、「100%ピュア・ミドルアース」といったスピンオフのキャンペーンも実施した。中でも多くの観光客を引き付けたのが、北島の国立公園にあるトンガリロ・アルパイン・クロッシングで、年間13万人以上のハイカーが訪れていた。"世界の不思議"の1つとも言われる南島のミルフォード・サウンドも人気で、年間100万人ほどが訪れていた。

スピーチの中でナッシュ観光相は、こうした「持続不可能な観光レベルがコミュニティーにあまりにも不当なプレッシャーを与え、観光名所や多くのコミュニティーを苦しめている」と語った。

ニュージーランドで変化を呼びかけたのは、ナッシュ観光相が初めてではない。2019年には国会環境委員のサイモン・アプトン(Simon Upton)氏が、観光が環境に与える負の効果について語っている

「多くの海外観光客がニュージーランドを訪れた際に求める孤立感、平穏、自然へのアクセスを多くの人々が失っている」とアプトン氏は指摘した

観光客

南島では多くのキャンパーの姿が見られた(2019年2月、ニュージーランド)。

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パンデミックの前、観光業はニュージーランドのGDP2060億ドルのうち、約9.3%を占めていた。ニュージーランドの観光産業連盟(TIA)によると、国内の雇用の13%以上を観光業が占めていて、2018年4月~2019年3月には38万人以上が観光業に直接または非直接的に雇用されていたという。

新型コロナウイルスのパンデミックが落ち着いた後、ニュージーランドの観光業が縮小した場合の今後の雇用について、Insiderはナッシュ観光相にコメントを求めたが、回答は得られなかった。

パンデミックからの復活としては珍しいモデル

2020年の世界の観光客の数は、新型コロナウイルスの感染が拡大し、飛行機による移動がストップしたことで、大幅に減少した。ニュージーランドへの海外からの訪問者数も99万6000人と、2019年より289万人減った。

ニュージーランドは、早い段階でパンデミックの対応に成功した国として称賛されてきた。当時、感染例はまだ報告されていなかったにもかかわらず、2020年2月には旅行制限を課し始めた。あれから13カ月、その国境は今もウイルスの感染拡大をコントロールするため、ほぼ全ての旅行者に対して閉ざされたままだ

ニュージーランド政府は現在、オーストラリアと国境開放に向けて話し合いを進めているが、19日のスピーチの中でナッシュ観光相は、ニュージーランドが2022年より前に大量の観光客に国境を開く可能性は低いだろうと述べた

ロイターによると、アーダーン首相は22日、オーストラリアから隔離措置なしで渡航者を受け入れ始める日について、4月6日をめどに発表するとしている。

ニュージーランドの"パンデミック後は観光を減らす"という考えは異例だ。実際、多くの国のアフターコロナの計画とは、正反対を行く。

観光に依存している多くの国々は現在、自国の観光業をジャンプスタートさせ、必要な経済効果をもたらすための方法を検討している。タイでは、ヨットゴルフリゾートでの隔離を認めることで観光客を取り戻そうとしている。人気リゾート地のプーケットでは、多くの住民にワクチンを接種する計画を模索していて、そうすることで早ければ10月にも観光客の受け入れを再開したい考えだ。

セーシェルは、到着時にPCR検査で陰性証明を提示した観光客に対し、3月25日から隔離措置やワクチン接種を求めることなく国境を開くと発表している。同国は、2020年7月から全ての国からの旅行者に対して国境を開き、うまくいっているモルディブの例に倣おうとしている。アイスランドも3月18日からワクチン接種済みの全ての旅行者に対し、国境を開くと発表している。

[原文:Even after the pandemic, New Zealand might not be welcoming tourists back the way it used to

(翻訳、編集:山口佳美)

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