電力会社は脱炭素化出来るのか?沖縄電力が「屋根借り」戦略で再生可能エネルギーの導入拡充へ

加速する脱炭素化の動き。沖縄電力が地域の大手電力会社としてはユニークな取り組みを進めている。

沖縄電力は2021年1月に、住宅に無料で「太陽光パネル」と「蓄電池」を設置して、発電した電力を割安で購入できるサービス「かりーるーふ」(※)を発表した。設置を希望する住宅を募集したところ、50件の募集枠に応募が殺到。希望者は100名を軽く越え、すぐに募集を停止することとなった。

※「借りる(かりー)」と「屋根(roof:るーふ)」を組み合わせた造語。かりーは沖縄の方言で、「福を招く」言葉でもある。

電力会社に「屋根を貸す」住宅の太陽光需要

導入事例

かりーるーふの導入例。太陽光パネルや蓄電池など、整備が必要な機器はすべて住宅の外に設置されている。

提供:パナソニック

個人が太陽光パネルを住宅に設置しようとした場合、通常であれば太陽光パネルや電力系統へ接続するための工事などで初期費用がかかる。また、台風などで破損してしまったときの保守管理などの責任も負わなければならない。

かりーるーふでは、こういった費用はすべて沖縄電力が負担することになる。

沖縄電力としては、「住宅の屋根」というすでに確保されている「余白」に太陽光パネルを設置していくことで、再生可能エネルギーの導入を着実に進めていくことができるメリットがある。メガソーラーなどを新たに設置するために必要な敷地を確保したり、環境アセスメントを取得したりする難しさを考えると効率的だ。

「自宅に太陽光パネルを設置する」と聞くと、発電した分の電気代がタダになるイメージを持つ人が多いかもしれないが、かりーるーふはあくまでも住宅の屋根を沖縄電力に「貸している」だけ。

設置した太陽光パネルの所有者は沖縄電力のため、発電された電気を使うには電気代がかかる。ただし、太陽光パネルを設置する屋根の“賃料”として、電気代が安くなるという理屈だ。なお、太陽が陰って電力が不足した場合は、通常の価格で沖縄電力から電気を購入することになる。

沖縄電力、研究開発部の金城尚吾氏は、

「太陽光パネルを無償設置して電気を供給する事業は他社も行っています。私たちは、大きな目標として再エネの主力化を掲げていることから、地域の安定供給に寄与する形でやっていかなければならないと考えました。そこで、太陽パネルを設置していくだけではなく、(災害の備えとして)蓄電池をセットにしたものを提供していく必要がありました」

とサービスの開発背景を語った。

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沖縄電力の安部メガソーラー。発電出力1000kW、年間発電電力量約105万kWh。沖縄電力は2030年までに太陽光発電による発電出力を5万kW増やす方針。単純計算すると、安部メガソーラーの50倍の規模に相当する。

撮影:三ツ村崇志

太陽光パネルと蓄電池をセットにすることで、発電した電気が余った場合は蓄電池に溜めておき、災害発生時に非常用電源としても使える。夏から秋にかけて毎年のように台風の被害にあう沖縄にとって、蓄電池を無償で設置してくれるメリットは大きい。

かりーるーふで提供される蓄電池に蓄積された電気は、停電などの災害時には住宅内に設置された非常用コンセントから利用することができる。蓄電池の電気容量は4.5kWh。一般家庭で冷蔵庫などの生活家電を使う分には、2日程度は保つ容量だ。

災害発生時には2〜4日程度で電力を復旧できる体制を整えていることから、災害時の緊急電源としては十分使えるレベルだという。

かりーるーふで設置する蓄電池などの設備はパナソニックが提供している。パナソニックライフソリューションズの西川弘記氏は、今回のかりーるーふをはじめ、パナソニックの取り組みについて、

「パナソニックとしては再生可能エネルギーの主力化という意味で、インフラ会社様と一緒に暮らしをアップデートしていきたい。その一つが、今回の取り組みのような需給一帯型のシステムです」

と語る。

電力会社は脱炭素できるのか?

風力発電

沖縄電力の大宜味風力発電実証研究設備。発電出力は風車1機あたり2000kW。2機で年間発電電力量は約800万kWh(一般家庭約2200軒分)。

撮影:三ツ村崇志

2020年10月、菅義偉首相は所信表明演説で2050年までに二酸化炭素の排出を実質ゼロにするという方針を宣言した。12月には「グリーン成長戦略」が発表され、脱炭素社会に向けたスピード感は増している。

世界で最も二酸化炭素の排出量が多いのは「発電」を行うエネルギー産業。再生可能エネルギーをはじめとした二酸化炭素を排出しない発電の取り組みは、脱炭素社会に向けた政策の一丁目一番地ともいえる。

沖縄電力がかりーるーふのサービスを開始したのも、社会的に再生可能エネルギーの導入を要請されたことが背景だ。また、沖縄電力は2020年12月、独自に「2050年までに二酸化炭素の排出量を実質ゼロにする」という目標を掲げている。

金城氏は

「これまでも地球温暖化対策を積極的に取り組んできました。社会的な要請がこれまで以上に高まっていることもあり、社会的責任を果たす必要があるとして、水面下で(二酸化炭素排出実質ゼロの)検討を進めてきた」

と、未来に向けて意気込む。

ただし、沖縄電力が立たされている状況は、他の地域の電力会社とは大きく異なる。

沖縄電力が管轄する地域では、地理的な制約から原子力発電はもちろんのこと、水力発電の利用も難しい。結果的に現在は、電源の9割を火力発電(石炭、LNG、石油は発電)に頼っている状況(2019年度の沖縄電力の発電電力量は約73億kWh)。

今後、火力発電の中でも比較的クリーンな発電方式であるLNGの導入を進めていく方針や、2030年までに、太陽光発電と風力発電の発電量をそれぞれ5kW増設する見通しを示しているものの、二酸化炭素の排出量を「実質ゼロ」にするハードルは高い。

(文・三ツ村崇志

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