Business Insider
- NFTアートへの投資とは、デジタル作品の価値が上がることを期待して、その所有権を買うことだ。
- だが「これらの価値は、間違いなくゼロになる」とマイク・ウィンケルマンは、ニューヨーク・タイムズ紙のポッドキャスト「Sway」で語った。
- NFT市場はここ数カ月で規模が膨れ上がり、30日間で10億ドル以上を生み出している。
NFTアート作品を約7000万ドルで売却したデジタルアーティストで、ビープル(Beeple)としても知られるマイク・ウィンケルマン(Mike Winkelmann)は、NFTアート市場はバブルになっているようだと述べた。
「(NFTアートへの投資は)多少のリスクを負ってもいいという人向けだ」と彼はニューヨーク・タイムズのポッドキャスト「Sway」のインタビューで語った。
「これらの価値は、間違いなくゼロになる」
ウィンケルマンは、NFTアートの価格が不安定になると考え、「バブルになっている可能性が非常に高いと思う」と以前Insiderに語っていた。
また、NFT(Non-Fungible Token:代替不可能なトークン)の市場をインターネット・ブームに例え、インターネットの黎明期と同様に、買い手はNFTの価格が高騰し過ぎていることにいずれ気づくだろうと述べた。
「単にNFTアートを作っただけでは、何の価値も生まれない」とウィンケルマンはポッドキャストで語っている。
「我々が少し興奮しすぎて、とんでもない価格をガラクタにつけてしまったことに、いずれ気がつくだろう」
CryptoSlamによると、過去数カ月の間にNFT市場への関心が高まり、過去30日間だけで10億ドル(約1080億円)以上の取引があったという。
多くのNFTマーケットプレイスでは、NBAのハイライト映像からトレーディングカード、3Dアート、音楽まで、あらゆるものが購入できる。
NFTアートは、その希少性によって価値を維持している。NFTアートの購入者は、その作品の所有権を得て、作者と自分の名前を結びつけることができる。とはいえインターネット上で作品を配布したり利用したりする権利までは与えられていない。
ビープルは、NFTの世界でのシンボル的な存在となっており、数百万ドル規模の取引で市場をリードしている。ウィンケルマンは、NFTは複雑に見えるかもしれないが、実際はとてもシンプルだと言う。つまり所有権を証明できるということだ。
「何かが広く共有されるほど、そして人気が高まるほど、その価値も高まる。ルーブル美術館でモナリザの写真を撮ってインターネットで共有しても、誰も『モナリザの価値を下げてしまった』などとは思わない」とウィンケルマンは語った。
マイアミを拠点とし、ビープルの作品を収集しているパブロ・ロドリゲス=フレイル(Pablo Rodriguez-Fraile)は、NFTを金やビットコインに例えている。
「これまで長い間、富を蓄えるためにアートが利用されてきた」とロドリゲス=フレイルはInsiderに語っている。
「暗号通貨はデジタルアートに簡単に拡張できる。デジタルアートへの投資は金やビットコインへの投資と同じようなもので、よりモダンなアプローチだといえる」
NFTアートはバブルかもしれないが、これからも存在し続け、伝統的なアートの世界の未来になるだろうと、ウィンケルマンは考えている。
「(インターネットの)バブルが崩壊しても、インターネットはなくならなかった」と彼は言う。
「くだらないものが一掃されただけだ」
ウィンケルマンは10月にNFTアート市場に参入したばかりだが、わずか数カ月で最も高価な作品を制作するアーティストの1人となった。だが彼は、NFTアート市場は従来のアート界と同様に、競争が激しくなり、生計を立てるのが難しくなるだろうと述べた。自身のNFTアートが芸術界から非難を受けるほどの記録的な高値となったにもかかわらずだ。
「NFTアーティストにとって簡単なことではない」と彼は言う。
「何も変わってはいない。あるものが高い価値を持ち、他の多くのものには価値がない。NFTだからといって、魔法のように価値を与えてくれるわけではない」
結局のところ、ウィンケルマンはアートのNFT化は必然だったと考えている。アートが静的なものではなく、朽ち果てたり古くなったりすることもなく、さまざまなスクリーン上で更新されつつ鑑賞できる未来を彼は見据えている。
ウィンケルマンはすでに6930万ドル(約75億円)をアートに再投資している。エンジニアを雇用して、デジタルアートを現実の世界に再現し、より身近なものにするための技術開発に取り組んでいるのだ。
(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)