仕事と幸福は両立する。「天職」を選んだ人に共通する、3つのポイント…MIT教授とスコット・ギャロウェイ氏のアドバイス

こんにちは。パロアルトインサイトCEO・AIビジネスデザイナーの石角友愛です。春になり新学期、新職場の時期になりました。今回は、私が企業の人事部から相談をうける中で一番多い課題である「若者の離職率」と「どのようなキャリアデザインをすれば今いる場所でキャリアアップできるのか」について書きたいと思います。

厚生労働省が調査した「新規大卒就職者の離職状況(平成28年3月卒業者)」によると、大学新卒の約3割の人が入社3年以内に離職しています。また、新卒入社1年目でも、平均すると15%の人が離職しています。その一方で、30歳台から 50歳台半ばまでは、 約半数が初職から離職することなく就業を継続しているというデータもあります。

なぜ特に転職の傾向が高いのが20代前半の若者なのでしょうか。

仕事で幸福を感じる人に共通する3つのポイント

道行く働く人たち

人がモチベーションを維持するためには心理的条件3つを満たした環境に身を置く必要があるという(写真はイメージです)。

撮影:今村拓馬

米マサチューセッツ工科大学(MIT)の元コンピューターサイエンス教授であるカル・ニューポート氏は、著書『So Good They Can’t Ignore You』でSDT(Self-Determination Theory) が仕事で幸福を得られる人とそうでない人の違いを理解するのに役立つと言っています。

SDTでは、人がモチベーションを維持するためには以下の3つの心理的条件を満たした環境に身を置く必要があるといいます。

1. 自主性

自分のスケジュールや仕事において裁量があり、自分の仕事が大事な仕事だと実感できること

2. 能力

仕事内容が自分の得意なことであると実感できること

3. 関係性

他者との関係性を実感できること

SDTの観点から見ると、20代前半では自分の能力が顕在化されていない場合も多いため、会社で自主性を持って能力を発揮できるような仕事を任される機会になかなか恵まれず、結果的に、モチベーションが維持できず、転職につながるということが言えそうです。

つまり、組織では能力がある人ほど自主性を持たせる傾向が強いにもかかわらず、「能力の顕在化」や「組織における他者への能力の証明」には、ある程度の時間や、そのための機会を与えられる環境を要するので、SDTで言うところの「自主性」と「能力」の心理的条件が入社した当初は満たされづらい。それが、高い転職傾向に反映されていると考えられます。

また、SDTの興味深いところとして、モチベーションを維持するための心理的条件に「好きなことをやる」「情熱」などの条件が入っていないことが挙げられます。

それどころか、ニューポート教授は「情熱を感じること」を軸にキャリアを形成をするのは必ずしも得策ではないと言っています。

「情熱」を軸にキャリア形成するのは得策ではない?

働く人

キャリアデザインにおいては「好きなこと」よりも「キャリアキャピタル」が大事だとされる(写真はイメージです)。

撮影:今村拓馬

では、何を軸にキャリア形成をすればよいのでしょうか。ニューポート教授は「キャリアキャピタル」を構築せよと言っています。

キャリアデザインにおいて「好きなこと」よりも大事な「キャリアキャピタル」とは何でしょうか。これは、SDTで提示された3条件を満たすために、仕事の相手にこちらが見返りとして提供することができる「希少価値の高いスキル」と定義されています。

仕事というのは職種や形態、立場に関係なく必ず相手が存在します。上司や取引先、顧客、投資家などです。その相手に対して、あなたが提供できるスキルは何か、それが希少価値が高いほど、キャリアキャピタルは大きなものになります。

今回、私は『“経験ゼロ”から始める AI時代の新キャリアデザイン』(KADOKAWA)という新著を書きました。本を書くにあたって驚いたのは、IT業界の人ではない、理系の人でさえないにもかかわらず、AIプロジェクトに携わって自分の会社の中でどんどんキャリアップしていく人たちがいるということでした。

私はこのように、自分の職種とAIを掛け合わせて相乗効果を生みだしキャリアアップする人たちを「AIシナジスト」と呼んでいます。

キャリアキャピタルとしての「AIシナジスト」

通常、AI人材というとデータサイエンティスト、ソフトウェアエンジニアやAIビジネスデザイナー(またはそれに似た職種)のような「IT業界の人の話」に聞こえるかもしれません。しかし、実際にはそうではありません。

文系であっても、職場がIT業界でなくても、今いる場所でAIシナジストとしてAI人材になる道が実はたくさんあるのです。AIシナジストとして実際に活躍している方のケーススタディを紹介することで、「キャリアキャピタル」の重要性を理解していただけたらと思います。

大手製造会社に務めるAさん(32歳)の場合

ご紹介するのは、32歳のAさんという大手製造会社の人事部の方です。

彼は元々、若手社員間での勉強目的でAIの活用状況を調査しはじめたのですが、上司に経過を報告していく中で評価され、自分の主業務の一つに「人事領域におけるAI活用事例の調査」を入れてもらうようにしたそうです。

そのように自分のジョブディスクリプションを積極的に変えていき、AIシナジストとして自分の能力を証明する環境を能動的に作っていきました。結果的に、人事領域における本格的なAIプロジェクトを進めることになり、現在ではそのプロジェクトの担当者として大きな仕事を任されています。

このように、自分の能力を証明するには、必ずしも大きな賞を取る必要も、会社全体に自分の存在を知らしめる必要もありません。まずは自分の所属するチームで自分の能力を証明することが大切です。

Aさんの場合、人事の経験や知識が自分の強みになり、他者が持たない能力になっていました。そして自分の強みにAIプロジェクトの経験を掛け合わせることで、転職することなくキャリアデザインの可能性を広げることに成功した事例でもあります。

Aさんにとっては、自社で培った人事の経験や知識こそが「キャリアキャピタル」に当てはまります。

皆さんも、ご自分にとっての「キャリアキャピタル」は何か、どうやったら「キャリアキャピタル」が構築されるのか、考えてみてはいかがでしょうか。

スコット・ギャロウェイ氏からのキャリアアドバイス

ニューヨーク大学スターンビジネススクール教授のスコット・ギャロウェイ氏は、著書『The Algebra of Happiness』(邦題『ニューヨーク大学人気講義 HAPPINESS GAFA時代の人生戦略』)のなかで、キャリアアドバイスとして「好きなことを見つける」代わりに、以下を提案しています。

スイートスポット

「自分が得意かもしれないこと」で「それに対して報酬を払いたいと思う人が多くいる」かつ「嫌いな仕事ではない」。この3つが重なるスイートスポットを見つけること。

ギャロウェイ氏は、例えば、生まれた時から税理士になりたいと情熱を持つ人は多くはいないが、税理士として結果を出して周りから評価され、収入を得て自主性のある環境に身を置くことで、初めて税務に関して情熱を持つ税理士が生まれる、と言っています。

「仕事に対する情熱というものは後天的に生まれるものなのだ」ということです。

学生の頃「将来はどんな仕事をしたい?」と聞かれて答えに迷ってしまった方も多くいると思います。もしくは、現在進行形でその問いの答えを探すために試行錯誤しているような方もいるかもしれません。

その答えを探すためには、自分が得意な分野をある程度しぼり、「キャリアキャピタル」を構築するために時間と努力を惜しまないことが大事です。

そして、自分の能力が評価される環境で、自主性と人とのつながりが担保される働き方が実現できる場所に身を置くことで、またはそのような場所を自分で構築することで、「この仕事が好きだ」という情熱や、やりがいが後天的に生まれてくることが多いと言えます。

もちろん、幼い時からやりたいことが明確にわかっていて、それに向かって突き進むこと、モチベーションを維持することができればそれに越したことはないと思います。

しかし、もしそうではない場合、上記のようなアプローチでキャリアを見直してみると新しい道が開けるかもしれません。

(文・石角友愛

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