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中国外務省の副報道局長が日本に警告「アメリカの戦略的属国」「中日関係を破壊」対日批判本格化のおそれ

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中国の王毅外相(左)と日本の茂木敏充外相。2020年11月24日、日中外相会談後の記者会見。この時点で中国は日本との衝突回避の必要性を強調していたが……。

REUTERS/Issei Kato/Pool

日本は人の鼻息をうかがい、アメリカの戦略的属国となり、中日関係を破壊しようとしている

日本をこう罵ったのは、中国外務省の趙立堅・副報道局長。日米外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)が、中国を初めて全面的に名指し批判したことへの反論コメントだ。

よく整理されたこの発言は、中国外務省が周到に検討を重ねたことをうかがわせる。習近平国家主席の国賓訪問の可能性が遠のき、中国は対日政策の見直しを進め、強硬姿勢に出る可能性もある。

趙副報道局長の発言は全部で6項目からなり、冒頭で引用した部分は5番目に登場する。趙氏は「中日関係を破壊しようとしている」のあとに、「オオカミ(筆者注:アメリカを指す)を家に入れ、地域の全体的な利益を売り渡そうとしているが、人心を得ていない」と続けた。

趙氏はその居丈高なふるまいから、西側メディアで「戦狼外交官」と呼ばれている。

ブリンケン米国務長官がアラスカ州アンカレジで中国外交トップらとの初の外交協議に臨み、派手な非難合戦をしたニュースに隠れて、趙氏の発言はあまり注目されなかった。

しかし、筆者が取材した中国の外交関係者は、「国交正常化以来、最も激しい対日強硬発言」「中日関係に大変化が起きた」などとして、趙発言は中国の対日政策の変化を示すものとして注目している。

日米、初めて中国を名指しして全面批判

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3月18日、米アラスカ州アンカレジで初の外交協議に臨んだ中国とアメリカ。左から2番目が王毅外相、3番目が中国共産党中央政治局委員・中央外事工作委員会弁公室主任の楊潔篪氏。

Frederic J. Brown/Pool via REUTERS

米中間の戦略的対立があらゆる領域で本格的に激化し始めた2018年以来、中国は安倍政権に対する激しい批判を封印し、日本の過去の侵略行為に関する行事も外交問題に発展しないよう抑制してきた。

米中戦略対立を展開していく上で、日本、韓国、インドなど近隣国との関係を重視したからだ。日本などに米中対立の「仲介役」を求めるべきという報道すらあった。

そんな中国が、冒頭のようなこれまでにない厳しい対日批判に転じた理由は明らかだ。

「2プラス2」後の日米共同発表(3月16日)が、中国の行動を「既存の国際秩序と合致せず、日米同盟及び国際社会に対する挑戦」と批判するとともに、台湾問題をはじめ中国海警法の導入、尖閣・南シナ海などの海洋問題、香港、新疆ウイグルの人権問題など、米中間の対立テーマのほぼすべてを網羅し、中国を初めて名指しで全面批判する内容だったからである。

中国から見ると、バイデン政権への移行後も米中対立の長期化が避けられない情勢下で、日本政府はアメリカとともに中国を敵視する「当事者」としてのポジションを鮮明にしたと映ったに違いない。

東京での「2プラス2」に続いてソウルで開かれたアメリカと韓国の「2プラス2」(3月17日)で、文在寅政権が中国の名指し批判を封印したのとは対照的だ。

それらに先立つ3月12日にオンライン開催された日米豪印4カ国(QUAD)首脳会合が、中国包囲に慎重なインドに配慮して対中批判を避けたことも、日本の「反中ポジション」を際立たせる結果となった。

フランスの国際放送局RFIは、日米共同発表について「前代未聞とも言うべき(日本の)強い意思表示だった」と伝えている。

15年前は中国との協調路線を打ち出していた

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アンカレジでの外交協議(前出)にて、中央にアメリカのブリンケン国務長官。

Frederic J. Brown/Pool via REUTERS

ここで日米「2プラス2」の過去30年の経緯をふり返っておこう。

駐日米国大使と太平洋軍司令官が参加していたそれまでの「2プラス2」閣僚会合から顔ぶれが変わり、国務長官と国防長官をメンバーとする現在の形になったのが1990年のこと。

「2プラス2」が中国と台湾に初めて言及したのはそれから15年後、ブッシュ(子)政権時代の2005年2月だった。

そこで発表された「共通戦略目標」は、「中国が地域および世界において責任ある建設的な役割を果たすことを歓迎し、中国との協力関係を発展させる」と、中国との協調をうたった

米同時多発テロ事件(2001年9月11日)の発生以降、イスラム過激派によるテロの抑止が最重要課題となり、米中両国が足並みを揃えていた当時の情勢を反映したものといえる。

ただし、台湾問題については、「台湾海峡をめぐる問題の対話を通じた平和的解決を促す」という文言が入り、中国側は「日米軍事同盟は二国関係の枠を超えてはいけない。(台湾に言及することは)中国の主権に触れており、断固反対」と批判していた。

次に、オバマ政権時代はどうか。

2011年6月の「2プラス2」は、前節で触れた「共通戦略目標」を更新。台湾については、馬英九政権下での両岸(中台)関係改善を受け、「両岸関係の改善に関するこれまでの進捗を歓迎し、対話を通じた両岸問題の平和的な解決を促す」と、肯定的に触れた

一方、中国については「日本、アメリカおよび中国の信頼関係を構築しつつ、地域の安定および繁栄における中国の責任ある建設的な役割、グローバルな課題における中国の協力ならびに中国による国際的な行動規範の遵守を促す。中国の軍事上の近代化及び活動に関する開放性および透明性を高め、信頼醸成の措置を強化する」と、大国化に注文をつけた。

2011年はオバマ政権が「アジア回帰戦略」(11月)を打ち出した年。それだけに、中国に「国際的な行動規範の順守」を求め、軍事力強化に「透明性」を期待するなど、軍事大国化への懸念をにじませたものの、中国を名指し批判することはなく、対決姿勢を回避した

続くトランプ政権は「2プラス2」を重視しなかったが、会合自体は2017年8月と2019年4月の2度開かれている。

会合後の「共同発表」は、2017年が「(南シナ海の)航行の自由を支える各々の活動をはじめ、日米の継続的な関与が重要である旨で一致」とうたった。

2019年も「東シナ海および南シナ海における現状を変更しようとする威圧的な一方的試みに関し、深刻な懸念および強い反対の意を表明」と、中国を念頭に懸念表明。いずれもオバマ政権時代と同じく、名指し批判を回避している

こうしてふり返ると、今回の「2プラス2」の対中ポジションが、いかに突出しているかがわかる

日本は今回の共同発表により、米中の戦略的対立の「直接の当事者」になった事実を自覚する必要があるだろう。

日米共同発表は「北京の東京に対する信頼を弱めた」

同じ30年間をふり返れば、中国が尖閣問題など個別政策で対日批判をすることはあっても、日本の対米姿勢、とくに日米同盟関係をトータルに批判したことはほとんどない。

中国共産党機関紙・人民日報系の環球時報は社説(3月16日付)で、「2プラス2の中で、中国に対する最も強力な声明であり、日本はワシントンの対中姿勢に屈した」とし、「北京の東京に対する信頼を弱める」と批判した。

前出の中国外交関係者は、「日本は今回あらゆるカードを切り尽くした。米中対立の中で、日本が果たすべき(仲介者の)役割を自ら捨てたのだ」と述べる。さらに、日中間で懸案になっている習近平国家主席の国賓訪日は「日本側が障害を設け事実上中止された」とみる。

もしそうだとすれば、これまで習訪日にマイナスになるような対日批判を控えてきた中国側が、今後は遠慮なく対日批判を展開できることになる。

今後中国はどんな対日政策を打ち出すのだろうか。米中戦略対立を有利に進めるため、日米間の矛盾を利用する戦略外交は維持するとみられる。だが日本がアメリカとともに中国に強い姿勢で臨めば、経済報復など強硬姿勢で対抗されるおそれはある。

今後の日中関係を占う次の節目は、4月に予定される菅義偉首相のアメリカ訪問だ。

(文:岡田充


岡田充(おかだ・たかし):共同通信客員論説委員。共同通信時代、香港、モスクワ、台北各支局長などを歴任。「21世紀中国総研」で「海峡両岸論」を連載中。

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