2021年版(2020年までの調査分析が対象)の「世界幸福度レポート(World Happiness Report)」が公表された。
Screenshot of World Happiness Report website
世界各国の幸福度ランキングを示す「世界幸福度レポート(World Happiness Report)」の最新版が公表され、新型コロナウイルス感染症の幸福度への影響をテーマにしていることもあり、話題を呼んでいる。
ランキングは米調査会社ギャラップの世論調査データ(2018〜20年)を元に、国連の諮問機関「持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN)」が毎年作成しているもの。
幸福度は、各国年間1000人を対象に、考えうる最高の生活を「10」、最悪の生活を「0」とするハシゴを想定して、現在の生活がその10段階のハシゴの何段目に相当するのかを回答してもらい、国平均をスコアとする。
ただし、年間1000人という調査対象数は目安で、国によってデータを取得できない年(例えばシリアは2020年を含め直近5年間、世論調査が行われていない)もあれば、1000人以上のデータを取得している国もある(例えばインドは2020年に9453人から回答を得ている)。
幸福度ランキングそのものは上記の世論調査の国別平均スコアによって決められるが、そうしたスコアを形成する重要な要素として、「国民1人あたりGDP」「健康寿命」「寛大さ」「社会的支援」「人生選択の自由さ」「汚職の深刻度」も併せて示されている。
この6つの要素は、幸福度を示す10段階のハシゴのような世論調査スコアとは性質が異なる。厳密に言えば、各要素について世界で最も低い値を示す仮想国家「ディストピア」に暮らす場合と比べたとき、6つの要素が幸福度を引き上げるのにそれぞれどの程度貢献しているか、を示す数値だ。
説明が難しいが、少なくとも、各国の幸福度には6つの要素によって説明される(=明確な因果関係があるとまでは言えなくても、重要な相関関係を示す)面が多分にあるということは言えるだろう。
すでに海外メディアをはじめ幸福度ランキングを紹介した記事がいくつか出ているが、以下では、パンデミックの影響を強く受けた2020年単独のランキング、2018〜20年の平均値に基づく(公式)ランキングに加え、幸福度の向上に貢献する「6つの要素」の上位(汚職の深刻度については下位)10カ国のランキングを紹介しよう。
コロナ禍、2020年の幸福度ランキング
コロナ禍にも揺るぎなかった、幸福度ランキング世界1位のフィンランド・首都ヘルシンキの風景。
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ニュージーランドとオーストラリア以外は欧州諸国で占められた。日本は40位にランクイン。後述のように2018〜20年の平均値では56位で、新型コロナウイルスの感染拡大により多数の犠牲者を出した国に比べ、影響が軽微で済んだことが影響したとみられる。
近隣諸国も見ておくと、アメリカは14位、台湾が19位、韓国が50位、中国が52位となっている。
- フィンランド
- アイスランド
- デンマーク
- スイス
- オランダ
- スウェーデン
- ドイツ
- ノルウェー
- ニュージーランド
- オーストラリア
2018〜20年の平均値に基づく「公式」幸福度ランキング
顔ぶれは2020年度単体のランキングと大差なく、ニュージーランド以外は欧州諸国で占められた。日本は56位。近隣諸国は、アメリカが19位、台湾が24位、シンガポールが32位、タイが54位、韓国が62位、中国84位。
- フィンランド
- デンマーク
- スイス
- アイスランド
- オランダ
- ノルウェー
- スウェーデン
- ルクセンブルグ
- ニュージーランド
- オーストリア
「国民1人あたりGDP」ランキング(2018〜20年の平均値)
2018〜20年平均の国民1人あたりGDPで首位のルクセンブルグ。
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日本は29位。世界開発指標(WDI)の2020年10月14日更新版から。2017年基準の購買力平価による換算。
- ルクセンブルグ
- シンガポール
- アイルランド
- スイス
- アラブ首長国連邦(UAE)
- ノルウェー
- アメリカ
- 香港(中国特別行政区)
- デンマーク
- オランダ
「健康寿命」ランキング(2018〜20年の平均値)
2018〜20年平均の健康寿命で首位のシンガポール。
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日本は3位でランクイン。世界保健機関(WHO)が発表している健康関連データ( Global Health Observatory data repository)に基づく。2020年9月28日更新版から。
- シンガポール
- 香港(中国特別行政区)
- 日本
- スペイン
- スイス
- フランス
- オーストラリア
- 韓国
- キプロス
- 北キプロス(キプロスと同9位)
「寛大さ」ランキング(2018〜20年の平均値)
「先月、慈善団体等に寄付をしましたか」という質問への回答の国平均を、1人あたりGDPに回帰したときの残差に基づく。日本は148位。
- インドネシア
- ミャンマー
- ガンビア
- ハイチ
- ウズベキスタン
- タイ
- ケニア
- トルクメニスタン
- コソヴォ
- イギリス
「社会的支援」ランキング(2018〜20年の平均値)
2018〜20年平均の「社会的支援」が幸福度の向上に寄与したアイスランド。首都レイキャビクの風景。
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「困ったときにいつでも頼ることのできる親族や友人がいますか」という質問に対する回答の国平均に基づく。日本は51位。
- アイスランド
- トルクメニスタン
- ノルウェー
- デンマーク
- フィンランド
- カザフスタン
- ニュージーランド
- スロベニア
- アイルランド
- チェコ
「人生選択の自由さ」ランキング(2018〜20年の平均値)
2018〜20年平均の「人生選択の自由さ」が幸福度の向上に寄与したウズベキスタン。首都タシケントの風景。
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「人生における選択の自由度に満足していますか、それとも不満ですか」という質問に対する回答の国平均に基づく。日本は77位。
なお、トップはウズベキスタンとなっているが、カリモフ大統領時代に世界から疑惑の眼差しが向けられた人権侵害問題を克服した上での世論調査結果か、真相は不明だ。
- ウズベキスタン
- ノルウェー
- カンボジア
- アイスランド
- フィンランド
- スロベニア
- デンマーク
- スウェーデン
- ベトナム
- キルギスタン
「汚職の深刻度」ランキング(2018〜20年の平均値)
「政府に汚職がまん延していると感じますか」「企業に不正がまん延していると感じますか」という2つの質問に対する回答の国平均に基づく。日本は120位。
- クロアチア
- ルーマニア
- ブルガリア
- ボスニア・ヘルツェゴビナ
- アフガニスタン
- ウクライナ
- モルドバ
- コソボ
- レソト
- スロバキア
(訳責・編集:川村力)