- ティム・デイビッドソンは、広さ270平方フィート(約25平方メートル)の車輪つき小さな家で暮らしている。
- そのトレーラーハウスで移動しながら2年を過ごしたあと、フロリダのプライベートアイランドを購入した。
- そのあとに買い足した第2のタイニーハウスは、ハリケーンに耐えられるように八角形をしている。
2017年、ティム・デイビッドソン(Tim Davidson)は、フロリダにある家族の別荘を出るまでに60日の猶予を与えられた
フロリダにある家族の別荘でデイビッドソンが暮らし始めて1年が過ぎた頃、家族は彼がひとり立ちするべきだと判断した。
当初、デイビッドソンは普通の大きさの家を買おうと考えていた。しかし家探しをするうちに、広い家だと使わないスペースができ、不要な持ち物があふれ、税金が高くなり、さらにそのほかの費用もかさむことに気がついた。
デイビッドソンが求めていたのは必要最小限の家。ベッドルームひとつ、リビングエリア、小さなキッチン、そしてアウトドアへのアクセスだった。タイニーハウスこそが、その答えのような気がした。
デビッドソンの小さな家をめぐる旅が始まった。彼は退去期限までに約25平方メートルの小さな家「ティファニー」を購入した
デイビッドソンはおよそ7万ドル(約770万円)で小さな家を購入した。
2017年5月、彼は2箱の所持品を携えてマイホームに引っ越した。「ミニマリズムにまっすぐ飛び込んだんだ」とデイビッドソンは話す。所持品の80%は手放したという。
その名前は、この小さな家のいたるところに、ティファニーの照明器具があることに因んでいる
デイビッドソンは、ルイス・コンフォート・ティファニー(Louis Comfort Tiffany:ティファニー創業者の息子で、19世紀後半に活躍したデザイナー)が設計したカラフルなガラス製の装飾照明で埋め尽くされた1920年代のクラフツマンスタイルの家をすぐに気に入った。
「この家に導かれたような気がした」とデイビッドソンはこの家の照明について語る。
デイビッドソンと父親は、照明業界で働いている。子どものころは、父親がティファニーの照明器具を製作していた。父がティファニーの照明の試作品を持ち帰り、デイビッドソンと母がそれにうっとりと見とれる場面は、少年時代の思い出として心に残っている。同じような照明がタイニー・ハウスにあるのを見て、運命だと感じたという。
この家には、2つのロフト、フルバスルーム、リビングスペース、そしてキッチンがある
ロフトの1つはデイビッドソンのベッドルームで、もう1つは物置になっている。
階段を下りるとリビングルームがあり、小さなソファとテレビ、そして収納スペースがある。テーブルは折りたためるようになっていて、リビングには洗濯機と乾燥機を置くのに十分なスペースも。
バスルームには、バスタブ、シャワー、トイレ、洗面台が備わっている。
家を手に入れたデイビッドソンに足りなかったのは、住むための土地だった
小さな家に住み始めてから2年間、さまざまなキャンプ場やタイニー・ハウス・フェスティバルを訪ねては、あちこち移動して住む場所を探しまわっていた。
彼は、サラソータで心ひかれる場所を見つけた。そして、家を恒久的に置く場所として、1.5エーカー(約6070平方メートル)のプライベートアイランドを購入したのだ。
デイビッドソンは2年前、フロリダの小さな島を20万ドルで購入した。
デイビッドソンによると、シェルメイト島は何年も前から売りに出されていたが、売り手は 「天文学的な金額」を要求していたという。しかし、交渉を経て、約20万ドルで購入することができた。
買った当時のシェルメイト島は、彼が「ラスティ(錆びた)ゴールド(Rusty Gold)」というニックネームをつけたように、草が生い茂り、古いキャンピングカーの保管場所になっていた。デイビッドソンは、この島を住みやすい場所に変えていった。
現在、島にはマンゴー、アボカド、桑の実、ライチ、パイナップル、イチジクなどのトロピカルフルーツがたくさん植えられている。
「美しい島だよ」とデイビッドソンは言った。
ここでの生活はすばらしいものだったが、デイビッドソンは、ティファニーが強力なハリケーンには耐えられそうもないと悟った
2017年9月のハリケーン・イルマは、デビッドソンがフロリダに住むようになって最初に経験した大きなハリケーンだった。サラソータの被害はそれほどではなかったが、デイビッドソンはシェルターの必要性を痛感した。
オハイオ州育ちのデイビッドソンでも、ほかにも大勢の人が避難しようとしている中では、避難が容易ではないことにすぐに気付いたという。一方、車輪付きの小さな家は、大きなハリケーンに耐えられるほど頑丈ではない。
もしハリケーンが来てもここにいるのなら、強い風雨に耐える頑丈な家が必要だ。
デイビッドソンは、風雨に耐える八角形のタイニー・ハウスを購入した。広さ320平方フィート(約30平方メートル)で、価格は9万ドル(約985万円)だった
デイビッドソンは広さ320平方フィート(約30平方メートル)の家を、9万ドル(約985万円)で購入した。
デルテック・ホームズ(Deltec Homes)が設計したこの家は、いっぷう変わった八角形の形状のおかげで、ハリケーンや強風に耐えられるようにできている。
内部は半分ほどをベッドルームが占め、残りの半分はリビングダイニング、キッチン、バスルームになっている
ときどきエアビーアンドビー(Airbnb)で貸し出して家計の足しにしているこちらの家の内部には、無駄なスペースはない。スペースの半分ほどを寝室エリアが占め、残りの半分はリビングダイニング、キッチン、バスルームになっている。
デビッドソンは小さな家に住んでいることを、自分が下した最良の決断だと述べた
タイニー・ハウスで過ごした最初の晩は、人生で重大な事を体験しているような気がしたとデイビッドソンは話している。
「神経が高ぶっていたが、とてもワクワクしていた」とデイビッドソンは言う。
「人生には、『よし、これは大きな一歩だ。自分はいま、人生を劇的に変えることをしているんだ』と感じる瞬間がある」
[原文:What life is like for a man who has 2 tiny houses on his own private island in Florida]
(翻訳:梅田智世/ガリレオ、編集:Toshihiko Inoue)