- 天体写真家のJ-P・メッツァヴァイニオは、12年にわたって天の川銀河を撮影し、その写真をつなぎ合わせた。
- 銀河系内の2000万個の星が写っており、3つの超新星残骸も確認できる。
天の川銀河(銀河系)は、最新の研究によると直径約190万光年とされている。小惑星、恒星、惑星、塵、ガスなどが混在するこの銀河系を少しでも可視化しようとすると、望遠鏡で撮影した膨大な数の画像をつなぎ合わせなければならない。
天体写真家のJ-P・メッツァヴァイニオ(J-P Metsavainio)は、過去12年にわたって、それに取り組んできた。
彼がフィンランドのオウルにある自宅の天文台から天の川の撮影を始めたのは、2009年のことだった。そして2021年3月16日、おうし座からはくちょう座まで広がる銀河系の画像を公開した。この画像に写る星の数は約2000万個にのぼる(天の川全体では数千億個の星がある)。また、3つの超新星残骸など、撮影が困難な天体も捉えられている。
「12年近くも同じプロジェクトに携わっていると、サプライズはあまりないと思いがちだ」とメッツァヴェニオはInsiderに語っている。しかし、かすかに光る超新星残骸を撮影できたことは、このプロジェクトの中で最も予想外の出来事の1つだったという。
撮影には1250時間を要した
メッツァヴァイニオは北極圏から約145kmのところに住んでおり、自宅に天文台がある。そこは、1年のうち6カ月間は雲ひとつない空が広がる、星空の観察に最適な環境だ。彼はこの冬の時期を利用して、望遠鏡で天体を観測し、撮影を行った。
「晴れた夜には必ず仕事をしている」と彼は言う。夜遅くまで、静寂の中で撮影をすることが多く、空の状況によっては一晩で4時間から7時間、観測しているという。
彼は、大口径の望遠レンズを使用し、マニュアルでの撮影を好む。
「私は仕事に関しては完璧主義者だ。ソフトウェアのちょっとした不具合のために、空がクリアに見える貴重な瞬間を見逃してしまうということは絶対に避けたいんだ」
彼は、天の川のモザイク画像作成のために、トータルで1250時間を費やして撮影を行った。
撮影したそれぞれの画像を、星の位置を確認しながらフォトショップでつなぎ合わせ、銀河系内に存在するイオン化した元素を、硫黄は赤、水素は緑、酸素は青と、色分けして表現した。
完成した画像には、地球から約1000光年離れたペルセウス座にある「カリフォルニア星雲」や、約2400光年離れたケフェウス座にある「洞窟星雲」など、いくつかの星雲も写っている。星雲は塵やガスの集まりで、新たな星が形成される場所だ。
このモザイク画像には、世界で初めて発見されたブラックホール「はくちょう座X-1」も含まれている。だが、彼は超新星残骸が「一番のお気に入り」だと言い、これらを「三銃士」と呼んでいる。
ある超新星残骸は3年がかりで撮影
超新星爆発とは、星が一生を終えるときに起こる最後の大爆発のことだ。莫大なエネルギーを放出し、銀河内に塵をまき散らし、その後には時間の経過とともに膨張する星雲が残される。
通常、このような構造は塵に遮られて見えなくなる。
「これらの星雲は非常に暗い。そして密度の高い星域にある」とメッツァヴァイニオは言う。
「そのため、撮影はほぼ不可能に近い」
しかし、300時間の観測を経て、ようやく3つの超新星残骸を表現するのに十分な画像を撮影できた。
中でも、超新星残骸「W63」は、彼が長年追い求めていたものだった。「W63」は、5000光年以上離れたはくちょう座にあり、「シグナス・シェル(はくちょう座の殻)」と呼ばれている。
どのような星が爆発してW63の元となったのか、まだ分かっていないが、爆発時にはその光が1万5千年以上前の地球に届いていたと推定されている。
メッツァヴァイニオは、「W63」を表現するのに十分な画像を撮影するだけでも、2015年から2018年までの3年間を費やした。このような天体を撮影することが「こののんびりとした孤独な仕事を続ける理由だ」と彼は述べた。
[原文:A stunning image of the Milky Way took 12 years to photograph. It shows the ghost of a supernova.]
(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)