“脱・社食”で注目の福利厚生。自宅に「出張シェフ」、デリバリー用クーポン配布も

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出張シェフサービスも利用が伸びている。

撮影:横山耕太郎

コロナ禍で在宅勤務が増えるなか、企業の福利厚生が変わりつつある。

社員の出勤が減ったことで、社員食堂を設けていた会社が廃止や縮小を進める一方、食を通じた新たな福利厚生サービスを導入するところも出てきている。

社員の自宅に料理人を派遣するサービスや、自宅にチルドのお惣菜を宅配するサービス、フードデリバリーサービスで使えるクーポンの配布……コロナ時代の福利厚生として注目されているサービスとは?

出張シェフ「法人プラン」問い合わせ急増

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シェフのLeeさんはこの日、炊き込みご飯やハンバーグなど8品を作った。

撮影:横山耕太郎

2月中旬、茗荷谷にある雑居ビルの4階には、肉を焼く香ばしい匂いが漂っていた。廊下の突き当り、大人1人でも手狭なほどの給湯室で、プロ料理人の女性がハンバーグを焼いていた。

「限られたスペースでいかに効率よく料理を作れるかも、出張シェフの腕の見せどころ」と話すLeeさんは、都内のホテルで経験を積んだシェフで、給湯室の一口しかないコンロでも手際よく調理を進め、2時間で8品の料理を完成させた。

出張シェフサービス「SHARE DINE(シェアダイン)」は、コロナ禍でサービスを拡大している。

シェアダインは管理栄養士や調理師の資格を持つ料理人と、利用者をマッチングするプラットフォーム。1回3時間で12品を作るプランは、食材費は別途で7480円から利用できる。

サービスの利用件数は公開していないが、コロナ前の2019年12月と比べ、2021年3月のサービス利用数は3倍に増えた。

これまでは個人での利用が中心だったが、コロナ禍で法人向けプランの問い合わせも急増。法人プランでは、社員の家に出張シェフを呼び、料理の作り置きをしてもらったり、育児や介護中の社員をサポートするため、育児食や介護食を作ったりするプランもある。またオフィスに出張シェフを呼ぶこともできる。

2021年3月の法人プランの問い合わせ数は、2021年1月に比べ5倍に増加。またシェアダインは福利厚生サービスの「リロクラブ」や「ベネフィットステーション」に組み込まれるなど注目されており、利用者が増えているという。

仕事が減ったシェフら1100人が登録

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シャアダイン共同代表の井出氏。

撮影:横山耕太郎

2020年4月の緊急事態宣言後は、学校の休校や保育園の休園があり、食事の栄養バランスを見直したいという親の利用が増えた。その後も在宅勤務が拡大し、食事の作り置きをしてほしいという夫婦なども使ってくれるようになった」

シェアダインの共同代表・井出有希氏はそう話す。シェアダインは2017年5月に創業。当時子育て中だった井出氏が、子どもが食べる料理について悩んでいたことからサービスが生まれた。

「2歳の子どもが唐揚げしか食べてくれず、どうしたらいいのか分からなくなっていた。そのとき、保育に詳しい調理師の方から、家にある食材で作れる料理の仕方を教わり、救われた経験がある。

そこから料理の専門家と、家庭をマッチングするサービスを考えました」

コロナ禍では、小中学校が休校になったことから利用者が増加。一方で飲食店の休業も相次いだことでシェフの登録数が増え、3月には1100人を超えた。

「コロナ前は管理栄養士や病院に勤める調理師の方が多かったが、コロナ以降には、レストランなどで働く男性シェフが増えた。シェフにとっても、店舗だけに頼らない働き方として活動を始める人が増えている」

冒頭で紹介したLeeさんも、2020年4月の緊急事態宣言を受けて勤務していたホテルのレストランが休業。多い時期では週5回、シェアダインを使って一般家庭での料理を引き受けている。

「小さい子どものいる家庭で料理することもあれば、1人暮らしの方の自宅で作り置きを引き受けることもあります。出張シェフというと、パーティーのときなどぜいたくなサービスというイメージがありますが、最近は利用者の幅が広がっていると感じます

社員に出前館のクーポンを配布

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福利厚生クーポンは、「社員1人に対し月1回、1000円分のクーポンを2枚」など、企業ごとに内容を決めて契約する。

出前館HPより編集部キャプチャ

フードデリバリーサービス大手の「出前館」では、2020年9月から企業向けのサービス「福利厚生出前館クーポン」を始めた。

企業が社員に対し、出前館で使えるクーポンを発行するサービスで、クーポンの金額や枚数は企業ごとに設定できる。これまでに約70社がサービスを利用しているという。

「交流目的で社員の会食費補助をしていた企業や、社食の削減を検討する企業から問い合わせがあったことから始まったサービス。現在は大企業や、職種ではIT企業の利用が多い」(出前館広報担当・小宮栞穂里さん)

今後もリモートワークを続ける企業も多く、需要は伸びると見込む。

「福利厚生クーポンの売り上げは、数年で8倍程度に伸ばすことを目指している」(小宮さん)

「会社に配置型」から「自宅に配送」へ

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レンジで加熱用の総菜を、自宅に届けるサービスも利用を伸ばしている。

提供:OKAN

会社の冷蔵庫などにチルド料理をストックする法人向け社食サービス「オフィスおかん」は、コロナ禍でオフィスの利用が減ったことで、社員の自宅に料理を宅配するサービスを2020年9月に正式リリースした。

「オフィスおかん仕送り便」は、最も安いプランで社員1人あたり月2980円。1食分の食べきりサイズのお惣菜10品を月に1度まとめて配送する。惣菜はレンジで温めるだけで手軽に食べられるという。

「『出社の必要がなくなったので、料理を社員の家に送れないのか』という声がありサービス化した。もともと『オフィスおかん』は離職を防ぐための福利厚生として利用していた企業が多い。その延長上にある、在宅勤務中の福利厚生として、宅配には一定の需要がある」

サービスを運営するOKANの沢木恵太社長はそう話す。

会社の冷蔵庫に惣菜を配送する「オフィスおかん」のサービスは、コロナが本格化した2020年2月以降、企業側から利用一時休止の連絡が相次いだ。しかし、予想以上にオフィス出勤に回帰した企業も多かったという。

もともと医療・福祉関連など、現場を持つ企業が3分の1程度あったことに加えて、顧客の中心だったベンチャーなど中小企業では、雑談の場としてオフィス利用を続けていた。結果的に、2020年11月の通期決算では、2019年度に比べて売り上げが2倍に伸びた」(沢木氏)

コロナ後に、社食を廃止して「オフィスおかん」を導入した企業も数十件にのぼる。また今後は、在宅勤務と出勤のバランスが変わっていくことも見据えている。

「会社にストックするサービスと、自宅に届ける『仕送り便』を柔軟に切り替えられるハイブリッド型のサービスにしたい。今後も、コロナで社食の縮小を進める企業もあると見込んでおり、新しい社食のあり方を提案していきたい」

(文・横山耕太郎

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