コロナ禍により生活が一変してから1年が経ち、状況改善の新たな兆しが見え始めている。
パンデミックによりほとんどの業界が影響を受けたが、回復が続き、力強い成長が見込まれる分野もある。
アメリカ全体のビジネスにおいては、顧客へのサービス提供方法、社員の働き方や家賃の払い方に至るまで、画期的な方法が次々に生み出されてきた。
2020年5月に著名投資家のウォーレン・バフェットはこう話している。「過去にはもっと厳しい時代もありましたが、アメリカン・ミラクル、アメリカン・マジックで常に乗り越えてきました。今回もそうなるでしょう。アメリカに希望を託しましょう」
実際、Airbnb、Pinterest、WhatsApp、Venmoなど、不景気で社会が落ち込んでいるときに創業して現在大成功している企業もある。
またMITの研究によれば、コロナ禍においては、逆境に強い事業を行うチャンスがたくさんあるのだという。どんな事業を始めるにしても、適応能力とイノベーションは重要だ。
Insiderはこれまでも、コロナ禍を乗り越えてきた大小の企業を取り上げてきた。それらの記事や、さまざまな業界の専門家・リーダーからの情報、調査や分析結果などをもとに、あまり注目されないものの、アメリカ経済が回復する中で成長していくと思われる12の分野を独自にまとめた。
1. コンシェルジュ型サービス業
Alex Potemkin/Getty
営業再開の議論においてよく話題になったのが、ヘアサロンやネイルサロンだ。
美容関連サービスは今後、大きく形を変えることになるだろう、と起業家であり弁護士であるジョリーン・ヒューズ(Joleen Hughes)は言う。
ヒューズは自身のポッドキャストでさまざまな起業家と対話しているが、今後は訪問型サービスやコンシェルジュ型ビジネスが、手の届く値段で提供されるようになる可能性があるのではないか、と言う。
ネイリストや美容師による訪問型サービスにより「まったく異なる体験への扉が開くことになる」とヒューズは考えている。
2. オンライン小売業
Crystal Cox/Business Insider
コロナ禍により実店舗型の小売業はさらに窮地に追い込まれた。Eコマースは今後、過去のショッピングモールやアウトレットのような存在になるだろう。Zeno Groupの分析によれば、アメリカにおいて消費者の価値観がここまで大きく変化したのは大恐慌以来だという。
Shopifyの予測では、世界的なEコマースの売上は2023年までにほぼ倍増し、6兆5000億ドル(約650兆円)を超えるとしている。2020年のクリスマスシーズンには、コロナ禍での配送遅延を考慮して、多くの消費者がいつもより早めにオンラインショッピングをしていた。店舗受取サービスも増えてきており、今後は「ネットで買って店舗で受け取る」人がさらに増える可能性がある。
ネット販売のためのウェブサイトを作成したり、SNSでマーケティングをしたり、ライブ配信で顧客とつながったりするなど、さまざまな形で商品をオンライン販売するプラットフォームは今後確実に増えるだろう。
3. タッチレスのフード・オーダーと食料品宅配
FG Trade/Getty Images
経済データを見ると、ソーシャル・ディスタンスが幅広く求められるようになってから数カ月、「内食」にかけるお金は通常期と比べて高止まりしている。
Yelpによると、テイクアウトとデリバリーは店内飲食の予約と比較して350%増加し、いたるところでゴースト・キッチン(店内飲食スペースのないキッチン)がオープンしているという。
食料品宅配を行うスライブ・マーケット(Thrive Market)のCEO兼共同創業者であるニック・グリーン(Nick Green)によると、コロナ禍によりオンラインで買い物をする人は明らかに増えたという。
「アメリカで食料品をオンラインで買う人は2020年2月には5%でしたが、3月には35%になりました。その半分が店舗でのショッピングに戻ったとしても、いわゆるニューノーマルではオンラインでの買い物が以前の4倍に増えることになります」
4. フィットネス設備・サブスクリプション
Ergatta
定期的に運動をするのは簡単なことではない。ソーシャル・ディスタンスでさらに困難になった。
そんな状況ではあるが、ジムに行くよりも、家での運動の方が安く、安全で、時間効率もいいと多くの人が気づき始めた。
高級路線のエアロバイクとバーチャル・クラスのサブスクリプションを提供するペロトン(Peloton)は、この1年間絶好調だった。またフィットネス分野で人気のスタートアップであるCubiiは、ステイホームが始まってからステッパー商品(コンパクトなウォーキングマシン)が爆発的に売れていると話している。
家でのエクササイズに役立つ商品やサービスは売上増が見込まれ、またプレミアム感のあるバーチャル体験をさせてくれるブランドは他社から差別化できるだろう。
5. 遠隔健康サービス
通院のあり方もコロナで一変した。
John Moore/Getty Images
コロナ前も、遠隔健康サービスは増加傾向にあった。
しかし感染防止が必要になった今、医師、理学療法士、歯科医、カウンセラー、さらに薬剤師にも、遠隔医療の新たな可能性が開けてきた。
コロナ後には、今まで後回しにしていた医療ニーズが殺到するだろう、と医師たちは予想している。
一方で、もともと小売業を行っていたが閉店した店舗は、今後クリニックに形を変えるかもしれない。
マイクロバイオームの企業であるシード(Seed)の共同創業者兼共同CEOであるアラ・カッツ(Ara Katz)は、健康・サイエンス関連業界に投資するなら今だと言う。
「コロナ禍でサイエンスに対する投資不足や優先順位の低さ、また情報発信の重要性に多くの人が気づいたと思います」
6. ペットのトレーニング・ケア
ペットを飼う人が急増し、その新しい家族のしつけや世話をどうしたらいいか考えている飼い主は多い。
Reuters
2020年はペットを迎える人が急増した。
バンク・オブ・アメリカが2020年9月に調査したところ、3人に1人が過去半年間にペットを迎えたと回答しており、この傾向は今後も続くとしている。
新たな家族を迎えた多くの人たちが、しつけや世話をどうしたらいいのか模索している。
プロのトレーナーはオンラインでトイレトレーニングなどのアドバイスをするセッションを開いているが、実店舗型の事業は営業を再開してペットの日中預かりやペットホテル業を行っている。もちろん、おやつ、おもちゃ、その他ペット用品もある。
犬の散歩サービスもまた、オフィス勤務を再開する人にとっては欠かせないサービスだ。
7. 植物の手入れおよび花の宅配サービス
大切な人に会えなかった人は花を贈ることで、コロナ禍のソーシャル・ディスタンスを乗り越えた。
Insider
コロナ禍により外出がままならなくなり、多くの人たちが多肉植物やガーデニングに心の安らぎを求めた。
観葉植物のスタートアップであるザ・シル(the Sill)は2020年3月から4月の間に売上が50%伸びており、ガーデニング用品メーカーであるスコッツ・ミラクル・グロー(ScottsMiracle-Gro)は売上が四半期ベースで史上最高の7億4860万ドル(約748億円)になったと発表している。
また、花の宅配サービスも増えている。
大切な人に会えない人が代わりに花を贈り、コロナ禍のソーシャル・ディスタンスを乗り越えようとした。花の小売業者である1-800-Flowersは2020年最終四半期に売上・利益ともに史上最高となり、合計純収入は61.1%増の4億1800万ドル(約418億円)だった。
8. ウェディングおよびイベントのプランニング
Our Labor Of Love/Chancey Charm
結婚式やイベントのキャンセルが数カ月続いているが、また集まれるようになったとき、自分の誕生日、卒業、結婚などのイベントをどのように行うか、多くの人が新しい方法を模索するだろう。
全国的なウェディング・プランニングのブランドであるチャンシー・チャーム(Chancey Charm)の創業者、サラ・チャンシー(Sarah Chancey)は、これまで結婚式が延期になってきたことにより、この秋はかつてなく忙しくなるだろう、と話す。
チャンシーのプランナーたちは今もオンライン・ポータルやバーチャル・デザイン・スタジオを通して新婦とプランニングや相談を行っているが、これはコロナ前からすでに持っていた強みだった。
イベントは今後、大人数で一堂に会するよりも、少人数で場所を変えて複数回行うことが増えると予想するドイツの調査がある、と作家・講演者のジュリアス・ソラリス(Julius Solaris)は言う。
9. 教育テクノロジーおよびチューター・サービス
MoMo Productions/Getty
教育界は今、大きな課題に直面している。
新しい教育関連企業はオンラインでの研修や認定、ホームスクーリングのツールやバーチャル講師などへのアクセスを容易にすることで差別化していくだろう。
デロイトの調査では、教師の75%が2026年までにデジタル学習が印刷教科書に取って代わるだろうと考えており、NewSchools-Gallupが12年生(高校3年生)以下の公立学校を対象に行った調査によると、教師の65%が毎日、87%が少なくとも週に数日、デジタルの学習ツールを授業で使用していた。
10. 自転車
コロナ禍により自転車の売上と修理サービス依頼が急増した
(Photo by Stephan Schulz/picture alliance via Getty Images)
2020年には自転車の利用者が大幅に増えた。
エクササイズのために乗る人、移動に使う人と用途はまちまちだが、そのどちらも新品・中古自転車両方の売上を急増させた。
市場調査会社のNPDグループによれば、2020年4月の売上は10億ドル(約1000億円)と、通常のほぼ倍に急増した。
世界的な自転車メーカー、トレック(Trek)のブランドマーケティング・ディレクターであるエリック・ビヨーリング(Eric Bjorling)は「かつてないブームが自転車業界に来ている」と話している。
ニューヨークとニュージャージーの自転車販売店も、エッセンシャル(生活に欠かせない)ビジネスに分類された際に売上と修理のオーダーが急増した、と話す。
11. 自動車メカニック
Dominick Reuter/AFP/Getty Images
2020年の供給問題(多くの自動車メーカーが工場を停止、または閉鎖した)と2021年に入ってからの半導体チップ不足により、新車販売台数は大きく落ち込んでいる。
そのため、今持っている車に長く乗る必要が出てきている。故障しないためのサービスや、腕のいい修理工も必要だ。
自動車修理のビジネスはソーシャルディスタンスも保ちやすいため、従業員も顧客も感染から守ることができる。
12. カフェ
mavo/Shuttestock
アメリカ人の4人に1人が地元にもっとカフェができてほしいと思っているという調査結果があり、これはスペシャルティ・コーヒー協会(Specialty Coffee Association)のチーフ・リサーチ・オフィサーであるピーター・ジュリアーノ(Peter Giuliano)の経験とも重なっている。
地域に根差したカフェのオーナーと地元住民たちとの強いつながりは、事業をコロナ禍に適応させるのに役立ったとジュリアーノは言う。
「常連客のカフェに対する強いロイヤリティが発揮されました」
さらに、独立系カフェにおいては、2020年3月から4月の間に平均単価が25%増加した。これは日用品や家でコーヒーを淹れるための商品の販売を増やした影響もある。
(翻訳・田原真梨子、編集・野田翔)
[原文:POWER LIST: The 12 best industries for entrepreneurs to start profitable businesses right now]