あらゆる女性をプレッシャーから解放したい。SK-IIが池江璃花子選手の動画などで挑戦する女性を支援

是枝裕和監督が手がけた、「The Center Lane(センターレーン)」の予告編動画。

出典:SK-II Japan

化粧品ブランドのSK-IIが、ブランド独自のフィルムスタジオ「SK-II STUDIO」を設立し、3月29日に第1作目となる「The Center Lane(センターレーン)」を公開する。

競泳・池江璃花子選手が競技復帰を目指す軌跡を追った動画作品で、映画監督の是枝裕和氏が手がけた。今後、本作を含め8作品を2021年中に公開する予定だ。

SK-IIは併せて「#changedestiny資金」を設立。2021年は50万ドルを上限に、SK-II STUDIO の動画が1回再生されるごとに1ドルを拠出して、 “運命を変えようと挑戦する女性”を支援する。

なぜ今、スタジオおよび基金の設立に至ったのか。SK-IIのグローバルCEOのサンディープ・セス氏に聞いた。

ブランドに求められる精神的なサポート

サンディーブ・セスCEO

SK-IIのサンディープ・セス氏。「具体的な行動で女性を支援したい」という思いがスタジオや基金の設立背景に。

提供:SK-II

「昨今、人々のブランドに対する価値観が変わりつつあります。特に若い女性たちからブランドに期待するものとして、『商品が良いだけでなく、精神的なサポートの役割を果たしてくれること』という声を聞くようになり、私たちはこれまでにも女性に対する応援・支援活動を展開してきました。こうした変化はコロナ前からありましたが、コロナで一段と高いレベルでブランドの在り方を問われるようになったと感じています」

2017年には年齢をテーマにした「誰かに決められた期限なんてない(2017年)」といったキャンペーンを展開。「何歳までに結婚・出産すべき」など年齢というプレッシャーの中で葛藤する女性たちの動画は、幅広い共感を集めた。今回は年齢だけでなく、女性として期待される役割や、「美しくあるべき」「善き母であるべき」など多くの社会的プレッシャーから少しでも解放されることを訴えている。

運命を、変えよう。〜 #changedestiny〜」というスローガンには、運命は自らの選択で切り拓けるというメッセージを込めた。

「女性たちは自分の中に多くの『こうすべき』という“箱”を持っていて、その中に自分を押し込めようとしています。キャンペーンでは女性たち自身が抱えるプレッシャーに気づき、話し合うきっかけにしてもらえればと思っています。一方で、議論を促すだけでなく、もっと具体的な行動で女性を支援できないか、と考えたことが、今回のスタジオや#changedestiny資金の設立の背景にはあります」

SK-IIでは、これまでにも、国ごとに女性たちの聞き取り調査を行なってきた。

「特に日本の女性は働くことへの社会的プレッシャー、例えば結婚したら家庭に入るべき、子どもが生まれたら仕事を辞めるべきなどという無意識の制限が今でも強いように見受けます。他の国の女性と比べて、ジェンダーギャップの問題を話すこともあまりしない」

池江選手の葛藤は誰にもある

池江璃花子選手

セス氏は今回の作品を通じて、女性たちが少しでも声をあげられるようになって欲しいと話す。

Reuters/Issei Kato

今回、池江さんを主人公に選んだのは、彼女がアスリートとして周囲から期待されていることと自分の中の気持ちに葛藤を抱えているからだ。

大病を患い、そこから選手として復帰したものの、果たして自分は人々の期待に応えられるのだろうか、という気持ち。それは池江さんのようなアスリートだけでなく、どの女性も抱えているものだと、セス氏は訴える。

「女性たちは他人の期待というプレッシャーに対して、本当は自分の気持ちと違っても『これが私に期待されていること』と受け入れてしまいがちです。他人の期待という外からのプレッシャーと自分で自分にかけてしまう内からのプレッシャー、この2つのプレッシャーに葛藤しています。それを池江さんというアスリートを通して訴え、少しでも女性たちが声を上げられるようになればと思っています」

女性の支援というと、英語では女性をエンパワーメントする(empowerment)といった言葉が使われるが、SK-IIではあえてこの言葉を使わないという。それは「女性たちはすでに自分の中に力を持っていて、その力に気づいて欲しい」からだ。

具体的な基金の支援対象については、女性の起業家なども含めて考えている。詳細は、6月に改めて発表する予定だ。

(取材・浜田敬子、文・三木いずみ、浜田敬子)

編集部より:初出時、#changedestiny基金としていましたのは、正しくは#changedestiny資金です。2021年3月26日08:40

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