2020年4月に入社した新入社員の中には、テレワークで十分なサポートが受けられなかった社員もいると推定される(社員はイメージです)。
撮影:横山耕太郎
2020年に入社した新入社員のうち、テレワーク中に上司や同僚と相談や会話がなかった新入社員が3人に1人いることが分かった。
全国求人情報協会が2020年10月16日から11月13日、コロナ禍の20年4月に入社した新入社員671人を対象にインターネットを通じて行ったアンケート調査で明らかになった。
アンケートの結果、新入社員でテレワークを経験したのは58.4%。社会人経験の薄い新入社員も、コロナ禍で過半数がテレワークを強いられたことになる。
テレワークを経験していない新入社員41.6%にその理由を複数回答で聞くと、7割以上が「テレワークができる業務ではなかったため」で、最も多かった。また「特別休暇取得や待機を命じられ、業務自体がなかった」も14.2%いた。
テレワークの実施時期については、緊急事態宣言が出された2020年4~5月は、「ほぼテレワークだった」「週に3~4日がテレワークだった」と答えた新入社員が4割を超えた。しかし、6月以降は19.8%に激減。逆に「ほぼ出勤勤務をしていた」が6割を超え、6月以降は急速に通常出勤への回帰が進んでいた。
在宅「一人で研修課題をこなしていた」約4割
テレワークでの仕事の進め方を、複数回答で質問した。
出典:「2020年卒新卒者のテレワーク/在宅勤務実態」
テレワーク時、新入社員とコミュニケーションをとっていたかどうかは、企業によって対応に大きな差が出た。アンケートで「テレワークの進め方」について複数回答を求めたところ、上司や同僚と「会話がない」状況で働いていた新入社員も多かった。
・「研修課題が与えられ、一人でその課題を進めていた」は38.5%
・「社内の上司らに、必要に応じて業務報告していた」は31.3%
・「自分で作業できるものや上司・先輩から依頼された作業などをしていた」は28.7%
テレワーク中に業務報告以外の相談や会話がなかったとする新入社員は33.3%にのぼり、3人に1人の割合だった。
離職を防ぐコミュニケーション
濃い青が「十分に機会があった」、黄緑色が「不十分だった」。勤続意向がある社員の方が、上司への相談なの機会があったと感じている。
出典:「2020年卒新卒者のテレワーク/在宅勤務実態」
新入社員たちは、現在の会社でこれからも勤め続けたいと思っているのか、それとも転職・離職を考えているのか —— 。アンケートからは、新入社員の勤続意向について、コミュニケーションが影響していることも分かった。
「上司への報告・連絡・相談の機会」について、勤続意向のある新入社員は「相談などの機会が十分にあった」と46.6%が回答した。一方で、転職を考えている新入社員では、そうした機会が十分だったと感じているのは20.9%にとどまった。
アンケート結果について、全国求人情報協会の理事を務める中央大学大学院の佐藤博樹教授は、次のように分析する。
「これから4月に入社する新入社員も、早々にテレワークが続く可能性も想定される。会社として、テレワーク中も新入社員が孤立しないよう、上司や同僚に相談できるサポートの仕組みが求められる。
また、仕事を続けたいと思っている新入社員は、『この会社に向いている』という適職意識が高い傾向にある。適職意識が高い新入社員は『お互いに助け合う雰囲気がある』『将来の仕事について相談できる機会がある』と感じており、社内でコミュニケーションをしっかりとることは、離職を防ぐ意味でも重要といえる」
(文・横山耕太郎)