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石炭火力の削減量、日本は先進20カ国中12位。風力・太陽光発電の増加は9位。世界の電力レポート2021年版

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エンバー(Ember)は世界の電力需給に関する最新レポートを発表。画像は日本の2015〜20年における変化。気候変動対策について、日本は先進20カ国のリーダーとは言いがたい結果となった。

出所:Ember Global Electricity Review 2021

コロナ禍で風力・太陽光発電の活用が進み、「脱石炭」が歴史的な勢いで加速している。ただし、先進国のなかで日本の歩みは遅く、中国は世界の潮流に逆行している……という最新の調査結果が明らかになった。

気候変動とエネルギー問題専門の独立系シンクタンク・エンバー(Ember)は、電力の需要と供給状況に関する年次レポート「グローバル・エレクトリシティ・レビュー」(※)の2021年版を公開した。

※グローバル・エレクトリシティ・レビュー(Global Electricity Review)の調査対象は、先進20カ国(G20)を含む全世界の国々。うち68カ国については2020年まで、残りの国々については19年までのデータを取得している。なお、G20だけで世界の総発電量の84%を占める。

同レポートによれば、新型コロナウイルスの世界的流行による行動制限などの影響を受け、世界の電力需要はリーマンショック後の2009年以来、12年ぶりに減少を記録した。ただし下げ幅は前年比マイナス0.1%、微減にとどまった。

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エンバーが発表した「グローバル・エレクトリシティ・レビュー」2021年版の主要トピック。

出所:Ember Global Electricity Review 2021

電力供給側の内訳として、世界の風力・太陽光発電量は前年比プラス15%と伸び、総発電量の10分の1を占める結果となった。

一方、石炭火力による発電量は歴史的な減少を記録し、前年比マイナス4%。石炭による発電の減少(346テラワット時)の相当部分を、風力・太陽光発電の増加(314テラワット時)が穴埋めする形となった。

ただし、そのように世界で石炭依存度が減るなか、中国は先進20カ国で唯一、石炭火力の発電量を増やし、前年比プラス2%を記録した。

風力・太陽光発電も同程度増えたものの、世界最大の人口を抱える国内の巨大な電力需要(2020年の需要はコロナ禍でも前年比プラス4%)をまかなうため、石炭火力の活用が避けられない苦しい状況が続く。

パリ協定の努力目標達成には「焼け石に水」

上記のような2020年における変化の結果、2015年との比較では、世界の石炭火力発電の減少幅はわずかマイナス0.8%にとどまり、化石資源由来のガス燃料(天然ガスなど)発電は11%増えた。

レポートを作成したエンバーのグローバルプログラムリード、デイブ・ジョーンズ氏は、

「世界の取り組みはまったくスピード感が足りない。パンデミックを背景に石炭発電は確かに減ったが、必要な削減量には届いていない。(パリ協定の努力目標に掲げられた)産業革命時からの気温上昇を1.5度以下に抑えるには、2030年までに石炭火力発電を8割減らす必要がある」

とコメント。

目標達成のためには石炭火力による発電量を今後10年間にわたって、毎年14%ずつ減らす必要があるとの分析結果を示し【図表1】、今回レポートで明らかになった12年ぶりの電力需要減も「焼け石に水」であると苦言を呈している。

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【図表1】国・地域別にみた世界の石炭火力発電量の推移。「2050年までに温室効果ガス排出量実質ゼロ」を目指すとすれば、きわめて厳しい数字だ。

出所:Ember Global Electricity Review 2021

なお、同レポートによれば、2020年末時点で化石資源由来の発電燃料が世界の総発電量に占める割合は61%、原子力や再生可能エネルギーなどそれ以外の割合は39%だった。

「中国と韓国の電力需要増」に大きな懸念

「グローバル・エレクトリシティ・レビュー」2021年版に掲載されたいくつかの重要なグラフについて、以下に紹介しておこう。

石炭火力発電の減少と風力・太陽光発電の増加はすでに見たとおり。そのほかについては、原子力発電が前年比マイナス4%、水力発電が同プラス4%だった(中国、ユーロ圏、ロシアで降雨量が多かった影響)【図表2】。

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【図表2】前年(2019年)と比較した2020年のエネルギー別発電量の変化。左軸が発電量(テラワット時)、右軸が変化の割合(%)。

出所:Ember Global Electricity Review 2021

石炭火力発電と風力・太陽光発電の2019年比増減をみると、先進20カ国のうち、石炭火力発電を大幅に減らした「トップ5」は、アメリカ、ユーロ圏、インド、ドイツ、韓国。いずれもそれぞれの国内における電力需要の低下が影響した。なお、日本は12位だった【図表3】。

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【図表3】2019年から20年にかけての先進20カ国(G20)の発電量の変化を、石炭火力と風力・太陽光についてみたグラフ。中国だけ石炭火力発電が増加している(最下段)。

出所:Ember Global Electricity Review 2021

パリ協定の目標達成に向けた取り組みの状況をあらわす指標として、総発電量に占める風力・太陽光発電の割合をみると、先進20カ国の「トップ5」はドイツ(33%)、イギリス(28%)、ユーロ圏、オーストラリア、イタリア。日本は10.1%で9位だった【図表4】。

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【図表4】先進20カ国(G20)について、各国の総発電量に占める風力・太陽光発電の割合(%)の推移。各国の左端のポイントが2010年、右端が2020年の数字に相当する。

出所:Ember Global Electricity Review 2021

国ごとに取り組みの進捗度合いは異なるものの、世界全体としてはリーマンショック(2008年)前後から、徐々に石炭発電の割合が減り、風力・太陽光発電の割合が増え続けていることは間違いない【図表5】。

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【図表5】世界のエネルギーミックスの状況。2020年以降の推移。

出所:Ember Global Electricity Review 2021

先進20カ国のうち、2015年〜20年の間にとくに風力・太陽光発電の割合を増やした「トップ5」は、イギリス、ドイツ、オーストラリア、アルゼンチン、トルコだった。日本は9位だった【図表6】。ただし、トルコはガス火力発電を石炭火力発電に置き換えることで、再生可能エネルギーの増加分を帳消しにしている面もある。

なお、ロシアとインドネシアは2020年に風力・太陽光発電の増強をほとんど行っていない。

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【図表6】先進20カ国(G20)について、2015年と20年の電力市取引量をエネルギー別に比較したグラフ。石炭火力発電の割合が増えたのは、トルコ、ロシア、インドネシア。トルコは本文にあるように風力・太陽光発電も大幅に増やしている。

出所:Ember Global Electricity Review 2021

エンバーの結論は以下のとおり。

  1. クリーンなエネルギーの普及は間違いなく急ピッチで進んでいるが、電力需要の増加ペースに追いついていないのが現状
  2. 風力・太陽光発電は世界の発電量の10分の1を占めるに至っているが、近年その拡大は鈍化している
  3. 水力発電と原子力発電の占める割合はほぼ変化なく、上記のすべての結果として、化石燃料に安易に依存しがちな状況といえる
  4. (自動車など)電動化のトレンドが強まり、パンデミックで減少した電力需要も間もなく増加に向かうことは確実であり、このままだと化石燃料による発電が増えていく

エンバーは上記の結論で電力需要が今後増加していくとの見方を示しているが、各国の国民1人あたりの電力需要の変化(2010年との比較)は【図表7】のとおりで、韓国、サウジアラビア、中国、トルコの需要増が懸念される

とくに、10年で71%を超える高ペースで増加を続ける中国と、1人あたりの需要では中国の2倍・インドの10倍に達する韓国が、増加分を化石燃料でまかなうシナリオが警戒される。

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【図表7】先進20カ国(G20)の1人あたり電力需要(メガワット時)について、2010年〜20年の変化を示したグラフ。インド(最下段)とインドネシア(下から2段目)も増えているが、世界平均に比べたら大きな増加とは言えない。

出所:Ember Global Electricity Review 2021

(文・訳責:川村力)

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